山崎まさよし、映画主演&主題歌で浮き彫りになる魅力 『月とキャベツ』『8月のクリスマス』から考察

 山崎まさよしの約14年ぶりとなる長編映画主演作『影踏み』が、11月15日より全国公開されている。原作は『64(ロクヨン)』『クライマーズ・ハイ』などで知られるミステリー界の巨匠、横山秀夫の同名人気小説で、監督の篠原哲雄とは『月とキャベツ』以来の長編でのタッグ。主題歌と劇伴も山崎が担当した。

映画『影踏み』 予告編

 映画『影踏み』では新境地である泥棒役に挑戦するなど、2020年に迎えるメジャーデビュー25周年へ向けて精力的な活動を見せている山崎まさよし。そんな彼が手がけた映画主題歌をいくつか振り返ってみよう。

山崎まさよし『One more time, One more chance』

 まずは言わずと知れた名曲で、代表曲でもある「One more time, One more chance」。山崎まさよしの映画俳優デビュー作となった1996年公開の『月とキャベツ』の主題歌に起用されたこの曲は、上京したのになかなかデビューが決まらず悶々としていた、在りし日の山崎自身のパーソナルな気持ちを歌ったもので、実のところ書き下ろし曲ではない(劇伴は映画に合わせて制作)。にも関わらず、一途なラブソングとも取れるような懐の深いソングライティングによって、ひと夏限りの永遠を描いた不思議でピュアなラブストーリーと見事にマッチした。たとえば、〈ふざけあった 時間よ〉の歌詞からは劇中の少女・ヒバナ(真田麻垂美)との交流が思い返され、キャベツをおいしそうに食べる場面や美しいダンスシーンも楽曲全体を通して鮮やかに浮かび上がってくる。

月とキャベツ

 男のダメな部分や人間の弱さを悪びれることなく自然体で演じられるのが役者・山崎まさよしの魅力だけれど、演技同様にそのやわらかで温かくも哀感漂うメロディはとてもナチュラル。ブルースなどのルーツミュージックが下地にあるからか、アレンジも装飾しすぎず、彼の気取らない性格が伝わってくる。また、聴き手にとっては鼻歌みたいに口ずさみやすく、何かに包まれているような安心感があったりして、「One more time, One more chance」が徐々にチャートを上昇するロングヒットとなったのも納得がいく。

山崎まさよし / One more time,One more chance

 もっとも、『月とキャベツ』は山崎がくすぶったミュージシャン役で主演を務めていたり、劇中の重要なシーンで「One more time, One more chance」をがっつり(ピアノで)弾き語っていたりと、言うなれば「One more time, One more chance」のための物語となっていて、むしろ映画の脚本のほうが楽曲からヒントを得た部分もあるのかもしれない。だとすれば、そうさせるほどに優れた自伝的ブルースだったということ。いずれにせよ、時を経て2007年、新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』の主題歌にも同曲が使用された事実が、いみじくもソングライティングの懐の深さを証明している。

「秒速5センチメートル」予告編 HD版 (5 Centimeters per Second)

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