ザ・プロディジー マキシムが語る、ソロ新作に込めたポジティブなエネルギー「キースの死があったからこそアルバムが仕上がった」

ザ・プロディジー マキシムを直撃

レゲエとトラップは水と油のようなもの

Maxim - Feel Good

ーーなるほどね。The Prodigyに入ってから、2000年に初ソロを出して、今回が3枚目ですが、これまではあまりあなたのレゲエルーツみたいなものは出してないですよね。今回そういうものに改めて取り組もうと思ったんは、さきほど話に出た<トロージャン・レコード>がきっかけですか。

マキシム:インスピレーションを受けたというよりも、それがきっかけで自分のルーツを前面に出さなきゃって思うようになったのかもしれない。The Prodigyのマキシムを知ってる人は多いかもしれないけど、俺のルーツがレゲエにあるってことを知ってる人はそんなにいないだろう。だからレゲエから影響を受けている曲を発表することで、コイツ何やってるんだって思われるかもしれないけどね。今までのソロは、その時点での自分の音楽的な興味を表してると思う。でも今回は原点回帰というか、地元に帰ってきた感じはあるね。なので今回のアルバムはThe Prodigyのファンには理解しがたいものかもしれない。もっとThe Prodigy的なマキシムを聴きたいと思われるかもしれないけど、この作品は自分にとってとても大事なものなんだ。

ーーあなたのルーツを表してると同時に、トラップやジュークやダブステップなど今の音楽の要素もたっぷり詰まっている。そういう音楽もふだんから接しているわけですね

マキシム:そうだね。3年ぐらい前はよくDJをやっていたんだけど、その頃からトラップをかけていた。でも周りはダブステップのDJばかりだったね。だから俺がトラップをかけてもみんな戸惑っていたよ。先を行きすぎたというかさ。でも今なら理解されると思うし、今の音楽と自分のルーツであるレゲエを融合させたいという気持ちがあった。ブレンドの具合もうまく行ってるんじゃないかと思うよ。一緒に曲を書いているブレイズ・ビリオンズという友達がいるんだけど、レゲエとトラップスタイルのハードエッジなビートをどれぐらいの配合で融合するか、彼と共に試行錯誤しながらやってきたんだ。結果うまく行ったんじゃないかと思う。

ーーレゲエとトラップの共通点って何かあるんですか。

マキシム:ないと思う(笑)。水と油のようなもんだからミックスはできない。でも配合はうまくいったと思うよ。アメリカ人にとってはトラップミュージックって独自の定義があるけど、俺はアメリカ人じゃないから、そこには入り込めないんだけど、でも音楽のスタイルとしてすごく好きなんだ。アトランタ出身というわけでもないし、命をかけてやっている人に対して失礼になるから、トラップの本質がなんだとは言えないけど、自分はトラップのビートとスタイルが好きだから、レゲエのスタイルと組み合わせたいと思った。この世の中にはまだ存在しないケーキを新たに生み出そうとしているというか。存在しないんだけど、でも味は最高みたいな、そんなケーキを焼こうとしている。

ーー今回のあなたの作品を聴いて、レゲエというのはいろんな音楽と相性がいいんだと思いました。パンクともラップともダブステップともトラップとも融合できる。すごくフレキシブルな音楽スタイルだなと。

マキシム:そうなんだよ。The Clashもそうだしね。レゲエはいろんな音楽の基盤になってるんじゃないかな。特にイギリスではそうだよね。それを認識している人がどれだけいるかわからないけど。ダブステップもそうだしドラムンベースもそう。というのも、イギリスは小さな国だから、西インド諸島からの移民が多く流入することで、文化の融合が進んだんじゃないかな。でもアメリカは大きすぎて、文化が断絶している。イギリスはヨーロッパ、アフリカ、アジア……みんな一緒くたになってアイデアを分かち合って新たなものを生み出すんだと思う。

つらい時期だからこそポジティブなものをシェアしたい

ーーところでこのアルバムを作ってる最中にキースが亡くなったと思うんですが、それはアルバムにどういう影響を及ぼしましたか。

マキシム:彼の死があったからこそ、アルバムが仕上がったというのがあるんだ。集中力を与えてくれたというか。ほかのことを考えないようにして、このアルバムに専念できた。だからこのアルバムはキースに捧げてる。大変なときこそポジティブに考えなきゃと思うし、だからこそすごく前向きなエネルギーのある作品になったと思うよ。せめて良いものをそこから生み出さなきゃという気持ちになったし、多くの人にとってつらい時期だったというのがあるから、せめてポジティブなものを人々とシェアしたいと思ったんだ。

ーー音楽は人々に勇気と希望と力を与えることができる。そういうものが今作からは伝わってきました。

マキシム:うん。アルバムの制作自体が自分にとって治癒のプロセスになっていたと思う。アルバム・タイトルの「LOVE MORE」というのがまさにそれで、作品を作っている時はハードでデンジャラスな、エッジが効いているような要素を求めるところがあるんだけど、その時に俺が感じていたのが「LOVE MORE」という気持ちだったんだ。

ーーThe Prodigyについてもお聞きします。最近の報道では、The Prodigyとしての曲作りが始まったということですが、本当ですか。

マキシム:イエス。

ーーバンドは今どういう状況なんでしょうか。

マキシム:それ以上は言えないんだよ(笑)。

ーーリアムとはどういう話をしてるんですか。

マキシム:それも言えない(笑)。言えることは、リアムがスタジオに入って曲作りをしている。それだけだ。

ーーリリースは来年ぐらいですか?

マキシム:言えない(笑)。正直、何を聞かれても言えない。それ以上のことは俺も知らないんだよ(笑)。

(取材・文=小野島大/写真=池村隆司)

Maxim『LOVE MORE』(ラヴ・モア)

■リリース情報
『LOVE MORE』(ラヴ・モア)
2019年12月4日(水) 日本先行
形態:CD、配信(サブスク、ハイレゾ)

<CD形態&配信>(※CDは日本限定)
・CD通常盤:¥2,300(+税)
・初回生産限定BOX(CD+Tシャツ):¥5,500(+税)
※BOXはTOWER RECORDS限定

<収録曲>
1. FEEL GOOD
2. CAN’T HOLD WE
3. RUDEBOY
4. MANTRA
5. ON AND ON
6. LIKE WE
7. PUSH THE CULTURE
8. PUT IT PAN WE
9. VIRUS
10. BATTLE HORNS
※日本ボーナス・トラック
11. RISE
12. OUTLAW

<CD通常盤>
マキシムからキースへのメッセージ記載
マキシムによる曲目解説(翻訳)入り
日本限定CD化
日本盤のみボーナス・トラック2曲収録
初回ジャケットデザインステッカー封入
歌詞・対訳付き

<TOWER RECORDS限定 初回生産限定BOX(Tシャツ)>
マキシムのアーティストロゴデザインが入った非売品プレミアムTシャツ
詳細はTOWER RECORDSより

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