KinKi Kidsが歌うバラードの力ーー「光の気配」制作背景から伝わること

 KinKi Kidsが、12月4日に41stシングル『光の気配』をリリースした。2人が40歳を迎えた今、2人にとって偉大な恩師であるジャニー喜多川氏が旅立った今、そして誰もが1年を振り返り始める12月という今……そんな“今”が重なったタイミングだからこそ、この「光の気配」という歌が心にしみる。

 「光の気配」を作詞したのは、声優、歌手、ナレーターなどマルチな活躍を見せている坂本真綾。彼女とKinKi Kidsを繋いだのは、2000年から数々の作品を提供・プロデュースしている堂島孝平。同世代の4人に共通しているのは、幼いころから現在の活躍に繋がる才能を開花させてきたこと。そして、人生をかけて続けてきたことだ。

 雑誌『音楽と人』(2020年1月号)のインタビューでは、KinKi Kids、坂本、堂島それぞれの口から、「光の気配」が誕生した背景が語られた。「40歳って、ある意味で人生折返しの年齢じゃないですか? だからこの歌をきっかけに思い出すのも悪くないかな、って」と、堂本光一が感じたように、「光の気配」を聴きながら自分自身の今までを思い返してしまう。

 「長くひとつのことを続けてるって、想像以上に大変なんですよ」とは坂本。それは、“歌う“、”演じる“、”作る“という作業だけではなく、“生きる“ことにかけてもそうだ。〈今日まで僕が手に入れたものを数える 犠牲にしたもの 奪ったものはいくつ〉という歌詞を聴いた瞬間、まるで紙で指を切ったときのような痛みが走った。致命傷ではないけれど、気づけばジンジンと広がっていくような痛みだ。

 生きていれば、手に入れたものと引き換えに、こぼれ落ちたものがあることを、私たちは知っている。あることを選択したということは、そのほかを選ばなかったということ。そして、多くを手に入れているように見えているアーティストたちは、視点を変えれば他の人が手に入れているものを手放してきたとも……。

 そんなふうにわかっているのに、見なかったようにしていたことが、新しい年齢になる節目や、新しい歳を迎えるタイミングで、突きつけられる。だから、誕生日の前や、この時期はなんだか焦燥感に駆られるのかもしれない。

 この曲は、その痛みにもまっすぐに向き合い〈選ばなかった道はもう振り返らない この先どこかで繋がるはずさ〉と言ってくれる。堂本光一も「この曲の根本にあるテーマは前向きだなと思った」と話すように、迷ったり焦ったりしても、行き着くところはきっと同じで、その光を求めて彷徨っているのは、自分だけじゃないと言ってくれているような気がする。

 わかりやすい応援ソングではない。売れ線のジャパニーズポップスでもない。キラキラのアイドルソングでもない。でも、小さな痛みを受け止め、一つずつできることを丁寧にやっていこうと、落ち着かせてくれる。それがKinKi Kidsの歌うバラードの力。

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