魔法少女になり隊、誰しもをバンドの世界へ引き込む求心力 最新ツアー初日公演を見た
前回、筆者がましょ隊(魔法少女になり隊)のライブを見たのが、ちょうど1年前のハロウィン企画(『"魔法少女になり隊 presents ハロウィンに乗っかりな祭 ~ころもくんの逆襲~"』)。今回はニューミニアルバム『POPCONE』のリリースツアーだが、世間の空気は去年と似た感じだ。しかも10月最終週の渋谷でもあり、ハロウィン・コスで盛り上がる人々の存在にちょっとおののきながら、“ましょ隊のまほうランド”にたどり着いたファンは安堵しているように見えた。
この1年の間に音楽的にもメッセージ的にもシリアスな『∀』と、対照的かつ初期の彼らを想起させる『POPCONE』という2つのミニアルバムをリリースした彼ら。そして『POPCONE』は5曲入りということもあり、セットリストが気になるファンも多いと思うが、今回は東京がツアー初日ということもあり、セットリストや曲順の詳述は避け、現在のましょ隊のモードと、新曲群がライブ全体に及ぼしている効果を主にレポートしてみよう。
遊園地がテーマの新作に沿って、カーニバルフラッグが飾られ、世界のフォークロアーーブラジリアンからロマ音楽、スカなどをBGMにするという徹底ぶりに思わずニヤついてしまったが、今回のライブはまほうランドをバンドとファンで作ること。いつも通り、RPG風の画面が登場したり、ライブ中にハプニングが起きたり、ましょ隊のエンターテインメントは随所に盛り込まれているのだが、細かい筋書きはこれからのライブに参加してのお楽しみにとっておいてほしい。
さて、結論から言うと『POPCONE』収録の新曲は既発曲と非常にしっくりくるバランスで、全曲披露された。中でも新鮮なノリを生み出していたのが、バンド初の3拍子ナンバー「メリーゴー エンドオブザワールド」。オルゴールのシークエンスにフロアが色めき立ち、ワルツといえど、タイトなビートに音圧を感じ、サビ終わりのウイ・ビトン(Gt)の仰々しいまでのプログレチックなギターソロに、今までにないカタルシスがある。ウイがチャイコフスキーの「花のワルツ」をモチーフに組み立てたとインタビューで語っていたが、そんなワルツの流麗さと儚さに、明治(Gt)による〈終わらぬ夢さえ、乗せていこう〉という歌詞が乗る。ましょ隊ならではの“ここではないどこかへ”の誘いには、バンドの新しい武器――というと戦闘的だが、“新規のコマンド”という一言では割り切れない美しさがあった。ただ、そんなロマンチックな曲もクランチの効いたギターサウンドであっさり終わるのが彼ららしい。
儚い可愛さでいうと火寺バジル(Vo)作詞の「シャボン」の素直で甘酸っぱいギターロックも新鮮だった。お立ち台で歌い、煽り、パラパラ風の楽曲ではgari(VJ/Vo)とお揃いの振り付けで踊り、ラウドなパートではヘッドバンギングする彼女。どれも等身大といえば等身大だが、「シャボン」での〈お姫様にはなれない〉不器用な女の子の心情は曲調と相まってすごくリアルだ。他の曲ではリフトアップからクラウドサーフィングしたり、サークルモッシュを起こしたりしているフロアも、この曲では今回のグッズである光る星のリングをつけた手をバジルに向けて伸ばしている。