flumpoolのライブから感じた、山村隆太の変化とその影響 全国ホールツアー追加公演を見て
活動休止前最後のライブでは、終盤で不調を告白するまでの間、観客にそれを感じさせまいとしていた山村。おそらく、自分の弱さを見せないことがステージに立つ者の務めだと考えていたのだろう。そういう彼の戦い方が変わりつつあることは、歌詞からも読み取ることができる。例えば(この日は演奏していないが)休止前のツアーで新曲として披露された「WINNER」には〈僕は僕の背中を/何度でも押し続けるよ 強く〉というフレーズがある。一方、今年5月にリリースされたシングルの表題曲で、この日のクライマックスに演奏された「HELP」では〈一人が勇気を奮って 助けてと叫びをあげた〉と歌われているのだ。
フロントマンのライブへの臨み方、オーディエンスへの心の開き方の変化がバンドにも影響を与えたのだろう。この日は全体として、阪井、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)、サポートメンバーの磯貝サイモン(Key/Gt/Cho)、吉田翔平(Vn)がアイコンタクトを取る頻度が高く、“誰かがファインプレーをする→それに反応して他のメンバーも勢いづく”という場面も多数見受けられた。このライブの2日前、10月1日にデビュー11周年を迎えたflumpool。「いろいろあったけど11年間を誇りに思っています」「というのも、今のflumpoolが一番楽しいです!」と山村が笑う。
そうなると、そんな彼らの“今”を投影した最新曲が何よりも強く輝くようになるし、既存曲の聴こえ方もこれまでと違ってくる。
MCで語られたように、PCのショートカットキーになぞらえたツアータイトルには「立ち止まったり何かを諦めたりした時に一度戻ってでも人は前に進める。そのエネルギーを表現したい」という意味が込められているという。それを最もダイレクトに反映していたのがシングル『HELP』収録曲群で、 ①赤裸々な言葉を飾らずに伝える、②サウンド面における新しさを提示するという2つの方向性で以ってバンドの意志が体現されていた。アコギの弾き語りで始まる「MW 〜Dear Mr. & Ms. ピカレスク〜」はその前に演奏された「HOPE」との相互作用により重厚さを増していたし、「HELP」と「reboot 〜あきらめない詩〜」が連続で演奏されていた点にも意義を感じる。「reboot 〜あきらめない詩〜」は2010年、ポリープ摘出手術をする前の山村が当時の心境を綴った曲である。
さらに、これまで何度もライブで演奏されてきた「星に願いを」の最後のサビ、〈逢いたくて〉という言葉が3回続けて歌われる箇所はいつになく気持ちが入っている感じがあったし、本編ラストの「どんな未来にも愛はある」に至っては、今年出来た新曲だと紹介されても違和感がないほど、今のflumpoolを言い当てているように思えた。終盤のMCにおける「11年間前向きな言葉を歌ってきましたけど――」という言い方には“あの頃はちょっと強がっていた”的なニュアンスを感じたし、当時の彼らを思い出す限り、実際そういう節もあったのだろう。しかし過去をきちんと認めたうえで、今、新たな希望をもう一度歌うことができているのならば、それは何より美しいことだ。
「みんなに本当に出会えてよかったし、みんなのことが大好きです」(山村)というかなりストレートな言い回しには正直驚いたが、それも心から出た言葉だったのだろう。良いライブだった。
(取材・文=蜂須賀ちなみ/ライブ写真=ヤオタケシ)