カーリー・レイ・ジェプセン、圧倒的な“爽快感”が残った3年半ぶりの来日公演を見て
中盤で演奏された「Fever」「First Time」「Store」の3曲は、2017年の日本編集盤『カット・トゥ・ザ・フィーリング~エモーション・サイドB+』などに収録された曲で、明るくノスタルジックな80’sポップ感をたたえた「First Time」や、ちょっぴりセンチメンタルなグッドメロディを持つ「Store」など、カーリーにはオリジナルアルバム以外にもいい曲がたくさんある。「Store」のサビでは〈goin’ to the store〉の歌詞に合わせてメンバー揃って足踏み行進を、さらに悪乗りしてニューアルバムからの「Too Much」では、メンバー全員ブロンドのウィッグを頭に乗せて演奏するファニーなパフォーマンス。なぜ全員ブロンドなのか? は、「Too Much」のミュージックビデオを見れば謎が解けるはず。やることなすこと、いちいちチャーミングだ。
2015年度最大の洋楽ヒット「I Really Like You」のサビは、もちろんNHKホールいっぱいの大合唱だ。カーリーも目いっぱいの熱いパフォーマンスでそれに応える。『Dedicated』に収録された、ソウルにレゲエを加えた風味のメロウチューン「Everything He Needs」は、アップテンポのダンスチューン中心のセットリストの中での一幅の清涼剤。一転して「Boy Problems」はお立ち台のディスコクイーンのごとく腰や手を振りながらで会場を盛り上げ、2018年のヒットチューン「Party For One」へなだれ込む。クラップ、ジャンプ、掛け声、笑顔でオーディエンスを煽るその姿は、神々しいディーバよりもアメフトのチアリーダーみたいな親しみやすさに溢れてる。それこそがデビューの頃から変わらないカーリーの魅力だ。
アンコールはニューアルバムからの「Real Love」で、カーリーの楽曲の中ではメロウなタイプに入るだろう。力強いビートに寄り添う切ないファルセットがいい感じ。「Let’s Get Lost」は思い切りハジけたロックチューンで、サックスプレイヤーが最前線に飛び出してカーリーと絡み、サックスを持ったまま寝転がってブレイクダンス! 巧いのはもちろん、マニアックな80’sっぽいシンセや電子ドラムの音、センスのいいカッティングやスラップ奏法、そして楽しいパフォーマンスも一緒にこなすこのバンド、只者じゃない。そしていよいよラストチューン、明るくハッピーな「Cut To The Feeling」ではまたしても会場いっぱいの大合唱の中、盛大に銀テープを発射するグランドフィナーレ。「Thank You,Good Night!」と投げキッスをばらまきながらステージを降りるカーリーに向けて贈られる、愛に溢れた声援と拍手。灯りのともった場内のざわめきが静まらない。楽しい夢を見ていたような気分だ。
時計を見れば8時18分。80分弱のステージに21曲を詰め込み、全力疾走で駆け抜けたパフォーマンスには痛快という言葉がよく似合う。実はカーリーの楽曲には切ないリリックも少なくないが、最後に残るのは圧倒的な爽快感。<ユニバーサル ミュージック>のオフィシャルサイトによると、この日カーリーは「日本は私の第二の故郷、大好きな場所」とMCで言ってくれたそうだ。Thank You,Carly。See You Soon! 次は3年半も待たせないでおくれ。
(取材・文=宮本英夫/ライブ写真=Alex Perkins)
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