DAOKO、ポップアイコンとしての魅力と武器 神山羊と共作「はじめましての気持ちを」から考察

DAOKOのポップアイコンとしての魅力と武器

 DAOKOのペンによる歌詞の軸にあるのは、恋愛にとらわれた女性が抱く、儚くもかけがえのない感情だ。映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』のヒロイン(橋本環奈演じる四宮かぐや)の繊細な恋心とも重なる、あなたに対する“はじめましての気持ち”に気づいてしまったとまどいや、こみ上げてくる寂しさ。ともすれば情念が溢れ出てしまいそうなテーマだが、DAOKOはこの題材を抑制の効いた筆致で描き出し、洗練されたポップソングに昇華させている。そして、この楽曲の中心を担っているのはもちろん、DAOKO自身のボーカルとラップ。歌の内容には切なさ、儚さが込められているが、彼女の歌声はあくまでも明るく、どこか軽やかに響く。感情剥き出しではなく、トラックや雰囲気を自然に反映させ、幅広い層のリスナーに訴求できるポップスとして表現しているのだ。このバランス感覚の良さもまた、彼女の特性だろう。

 tofubeats、小島英也(ORESAMA)、TeddyLoid、米津玄師、岡村靖幸、小林武史、中田ヤスタカ、水野良樹(いきものがかり)、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)、MIYAVI、そして「Up All Night×DAOKO」で共演したBeckなど、数多くの才能溢れるアーティストとのコラボレーションを重ねてきたDAOKO。神山羊との共作による「はじめましての気持ちを」もまた、気鋭のクリエイターとのケミストリーから生まれた楽曲であり、彼女の最新モードを端的に示す作品と言えるだろう。シンガー、パフォーマーとして“表現する者”に徹する姿勢(クリエイターに身を委ねる覚悟と言ってもいいだろう)、そして、“アーティスト・DAOKO”のビジョンを明確に提示し、ユーザーに訴求するセルフプロデュース能力。この二つの視点を持ち続けていることが、ポップアイコンとしての彼女の魅力であり、武器なのだと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■配信情報
「はじめましての気持ちを」
作詞: DAOKO
作曲・編曲: 神山羊
映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』挿入歌
配信はこちら

■CD情報
『DAOKO × ドラガリアロスト』
10月9日(水)発売

初回限定盤(2CD+豪華三方背スリーブケース+デジパック+6 0Pブックレット)
TFCC-86694 ¥4,000(税抜)

通常盤(CD Only)
TFCC-86695 ¥2,800(税抜)

■関連リンク
DAOKO公式HP

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