DAOKO、ポップアイコンとしての魅力と武器 神山羊と共作「はじめましての気持ちを」から考察

DAOKOのポップアイコンとしての魅力と武器

 2018年12月に3rdアルバム『私的旅行』を発表。NHK紅白歌合戦に出演し、ヒット曲「打上花火」を披露するなど、一気にブレイクを果たしたDAOKO。今年に入ってからも、MIYAVIとのコラボレーション楽曲「千客万来」(蜷川実花監督による映画『Diner ダイナー』主題歌)、DAOKO×小林武史名義による「ドラマ」(東京メトロの企業広告『Find my Tokyo.』シリーズの「北千住_明日へのチャージ」篇CMソング)を発表し、約1年7カ月ぶりとなるワンマンライブツアー『enlightening trip 2019』を大阪・味園ユニバース(8月23日)、東京・ダンスホール新世紀(9月13日)にて開催するなど、充実した活動を続けている彼女から、デジタルシングル曲「はじめましての気持ちを」が届けられた。

 累計発行部数が800万部を超える大ヒットマンガの実写化で、週末観客動員ランキング初登場1位(2019年9月7~8日:興行通信社調べ)を記録し大ヒット公開中の映画『かぐや様は『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(出演:平野紫耀(King & Prince)、橋本環奈)の挿入歌として制作されたこの曲は、ネット発のカルチャーを代表するクリエイターである神山羊が作曲・編曲、DAOKOが作詞を担当。“映像メディアとの相性の良さ”そして“才能あるクリエイターとの共作から生まれる化学反応”という、DAOKOのクリエイティブの特性が如実に表れた楽曲となっている。

神山羊

 「はじめましての気持ちを」は、繊細で美しい電子音、そして、ピアノのコードと〈想い出になって弾ける泡になって 消えないように あなたの瞳を 覚えていたいから〉というフレーズから始まる。そこに重なるのは、壮大なスケールを備えたストリングスと、ドープなグルーヴをたっぷり含んだビート。重層的でしなやかなサブベースを中心にしたアレンジも秀逸だ。重低音をしっかりと強調したアレンジは、言うまでもなく、現在のグローバルポップの主流。有機酸名義でボカロPとして名を上げ、現在はシンガーソングライター/サウンドクリエイターとして注目を集めている神山羊のセンスが存分に発揮された、きわめて質の高いトラックだと思う。

 DAOKOが歌うメロディラインには、(あくまでもさりげなく)和の叙情性が反映され、いつかどこかで聴いたことがあるような懐かしさを演出。さらに曲の途中でノイジーなギターの音が一瞬だけ挿入され、圧倒的な解放感をたたえたサビへと進んでいく。現在進行形のヒップホップ、エレクトロのテイストを取り入れることでDAOKOの音楽性をアップデートさせた上で幅広い層のリスナーにリーチするJ-POPへと結実させたこの曲からは、DAOKOと神山の相性の良さが明確に伝わってくる。両者のコラボレーションは、「涙は雨粒」(作詞:DAOKO、作曲・編曲:神山羊)、神山がボーカリストとして参加した「24h (feat. 神山羊)」(作詞:DAOKO、作曲:神山羊/DAOKO、編曲:TAKU INOUE)(ともにアルバム『私的旅行』収録)に続く3曲目だが、そのケミストリーの精度は確実に上がっているようだ。

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