椎名林檎の楽曲が引き出すバンド表現の新たな魅力 ブルエン、UNCHAINのカバーから考える

 カバーをしてみての感想として、ブルエンもUNCHAINも「曲の構造・コード・歌詞などが勉強になった」という趣旨の発言をインタビューやラジオ番組などでしている。椎名林檎はギターだけでなくピアノも弾ける人物であり、実際、「ギブス」や「丸の内サディスティック」にはそんな彼女だからこその曲の運び方も垣間見える。それを(ピアニストのメンバーがいないバンドである)2組が斬新と捉えたというのは確かに合点がいくし、だからこそ2組ともバンド色の濃い、言い換えると“この曲をバンドでやるとしたら”という自身の考えを強く打ち出すようなアレンジに仕上げている。

 ちなみにブルエンの今回のシングルは表題曲「バッドパラドックス」も興味深い。サビのボーカルが全編ファルセットという彼らには珍しいアプローチで、それに伴い、バンドの音の詰め方も変化。これまでのシングル表題曲はバンドの熱量を一直線で伝えるものが多かっただけに、それとは異なるクールな雰囲気が新鮮に感じられる。「ギブス」含め、総じてバンドの新たなモードを感じさせるシングルとなっているため、今後の展開が気になるところだ。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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