チャンス、リル・ナズ・X、リル・テッカ…ネット戦略で成功した若手ヒップホップアーティスト5選
また、サブスクリプションサービスやミームを上手く活用して本格ブレイクを果たしたアーティストといえば、リゾの存在も忘れてはなりません。彼女の楽曲「Truth Hurts」は元々2017年9月にリリースされた楽曲でした。今年に入って彼女のシングル曲「Juice」がヒット、そしてアルバム『Cuz I Love You』がリリースされるなど、徐々にリゾに注目が集まる中、この「Truth Hurts」が大きくフィーチャーされる出来事がありました。Netflixのオリジナルムービーである『サムワン・グレート ~輝く人に~(Someone Great)』の本編にこの楽曲が印象的に使われ、一気にガールズアンセムとして知れ渡ることになったのです。〈DNAテストを受けたら、私こそがあのビッチだって100%証明されたわ!〉という迫力あるリリックでスタートするこの曲はSNS上でミームとして拡散され、色んなネタ画像が作られたのです。
また、リゾはその歌唱力やパワフルな歌詞だけではなくフルート奏者としても知られる存在です。ふくよかな彼女がパフォーマンス中にいきなりフルートを取り出して華麗に演奏する様もまた、ミーム化するにはぴったりで、彼女がテレビ番組やアワードに出演するたび、SNS上にはリゾのパフォーマンス中の一部を切り取ったミームやGIFなどが溢れました。結果「Truth Hurts」は発売後約2年を経てビルボードの総合シングルチャート3位まで上昇し、日本時間の9月4日に発表された同チャートでは、ビリー・アイリッシュやショーン・メンデス&カミラ・カベロを抑えて堂々の首位に輝きました! 楽曲のリリースから実に714日後の快挙だそうです。
WE’RE NUMBER 1. THIS IS A W FOR ALL OF US. ANYBODY WHO EVER FELT LIKE THEY VOICE WASN’T HEARD. ANYBODY WHO FELT LIKE THEY WEREN’T GOOD ENOUGH. YOU ARE. WE ARE. CHAMPIONS. I LOVE YALL 3 MUCH. LIZZBIANS UNITE 🌈☔️ pic.twitter.com/Ur4hrtwCnt
— |L I Z Z O| (@lizzo) September 3, 2019
リゾは今後もグイグイ人気を伸ばしていきそうですが、今や彼女の常套句にもなった「DNAテスト」を受けることができるオリジナルサイトも完成したようなので、おヒマな方はぜひチェックしてみてください(※Spotifyアカウントでのログインが必要です)。
最後に紹介するのは、こちらもTikTok発の新星、スタンナ・ガールです。彼女が今年の2月に発表したアルバム『YKWTFGO』に収録されている「Runway」という楽曲、今年の7月下旬になっていきなりブレイクしたのです。
きっかけは、人気TikTokユーザーたちがこぞって彼女の楽曲を使って動画の投稿を始めたこと。スタンナ・ガールの甲高い声とキャッチーなリリックがTikTokユーザーたちの関心を引き、今やTikTok上には300万本以上の「Runway」動画が投稿されているとのことです。私が「Runway」を始めて知ったのはSpotifyのバイラル(口コミ)チャート。突如、上位にランクインしたのがこの「Runway」でした。
最近はこうしたことが非常に多く、全く聞き覚えのないアーティストの楽曲がバイラルチャートの上位にランクインしていると、大抵がTikTok発のヒットであるケースが多々あります。そしてこのスタンナ・ガール、「Runway」1曲のヒットですでにユニバーサル ミュージック傘下の大手レーベル、<Capitol Records>から100万ドル以上のオファーを受けたと自身のInstagram上で発表していました。7月末のブレイクからまだ1カ月と少し。驚くべきことに、この「Runway」はまだオフィシャルのMVすらありません。アーティストのデビューからメジャーディールの獲得まで、どんどんスパンが短くなっていることは周知の通りですが、この業界ターム、今後どうなっていくのでしょうか。いずれにせよ、スタンナ・ガールには一度掴んだビッグドリームの手綱をしっかり掴んでいてほしいなと思うところです。(参照:GENIUS)
■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
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