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チャンス、リル・ナズ・X、リル・テッカ…ネット戦略で成功した若手ヒップホップアーティスト5選

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・Chance The Rapper 『The Big Day』(アルバム)
・Lil Naz X 『7』 (EP)
・Lil Teecca 『Ransom』 (シングル) 、『We Love You Tecca』(アルバム)
・Lizzo『Truth Hurts』(シングル)
・Stunna Girl 『Runway』(シングル)

 ジャンル問わず、そしてインディペンデント/メジャーでの活動を問わずSNSや各種サブスクリプションサービスを主戦場としたネット上の現場とそこで戦い抜くスキルは、もはや次世代アーティストにとって欠かせないもの。今回は、主にネット上での戦略やバズをうまく起こして成功した若手ヒップホップアーティストたちの新譜を紹介します。

チャンス・ザ・ラッパー『The Big Day』

 まず、オンライン戦略の神童の1人といえばチャンス・ザ・ラッパーでしょう。リリース作品は、オンライン上にアップされたフリーのミックステープのみというキャリアにも関わらず、グラミー賞にて最優秀新人賞を獲得したチャンスのサクセスストーリーは世界中に衝撃を与えただけではなく、若いアーティストに対して新たなスタンダードや可能性を提示しました。すでに『10 Day』、『Acid Rap』、そして『Coloring Book』と名作ミックステープを発表してきたチャンスですが、今年の7月26日に正式なデビューアルバム『The Big Day』をリリースしました。ミックステープ時代、常にイラストで描かれた自身の姿をアートワークに用いてきたチャンス。『The Big Day』ではキラキラと輝くダイヤモンドの粒をあしらった透明なCDディスク(!)を手にした写真をカバーに配置し、インターネット世代ならではの発想の転換なのか、それとも過去のプロダクトへの賛美なのか、皮肉なのか、とにかく意表を突くようなアートワークも特徴的です。アルバムタイトルはそのまま直訳すると「デカい日」ということになりますが、何を隠そう、自身が結婚式を挙げた日が大きなインスピレーションになっているとのことで、アルバム全体を覆うのはハッピー&ポジティブなバイブスです。ティーンに支持されている若いラッパーたちの中には、陰鬱と自殺願望をラップするラッパーも少なくないですが、まるでそういった状況を覆すかのごとく、同郷の先輩であるジョン・レジェンドを招いた冒頭の「All Day Long」から人生の素晴らしさを謳歌する楽曲が続きます。

 ゲスト陣もなんとも豪華で、ダベイビーやメーガン・ジー・スタリオンといった旬なラッパーたちから、グッチ・メインやニッキー・ミナージュといったAリスト級のラッパー、さらにはショーン・メンデスやランディ・ニューマン、そしてDeath Cab for Cutieといった人気バンドまでが参加。中でも私が個人的に仰天したのは90年代を代表するR&BグループであるEn VogueとSWVがそれぞれ参加していたこと! 特にEn Vogueとアリ・レノックス、そしてゴスペル系シンガーのキエラ・キキ・シアードが参加した「I Got You (Always and Forever)」は、モーケンステフが1995年に放った「I Got Him All The Time(He’s Mine Remix Grand Puba Version)」あたりを彷彿とさせる仕上がりで非常に胸キュンでした(例えが古くてすみません!)。他にもエッジの効いたヒップホップサウンドからシカゴジュークのフレイバーまでを、まるでジャケットに散りばめられたダイヤモンドの如く、きらめくように落とし込んでいます。レーベルや大きな事務所には属さぬまま、インターネット上のあらゆるプラットフォームを味方につけ、ツアーやマーチャンダイズで稼ぐという新たな手法を世界に提示したチャンスのデビューアルバムとしては申し分のない仕上がりと言えるでしょう。

Chance the Rapper – Ballin Flossin (feat. Shawn Mendes) [Lyric Video]

 専門家筋からはポジティブな意見が多く聞かれる一方で、これまでの路線とは少し外れた内容からはやや散漫な印象も拭えず、また、結婚という若い世代にはややピンと来ぬ人生イベントを主題に持ってきたためか、一部のファンからは批判的な意見も多く寄せられてしまったようで、チャンス自身もアルバム発売から間もなく「おかしくなりそう。俺に自殺してほしいって思っている人がいるんだな」と涙を流す絵文字付きで連続ツイート。自身が築いてきたオンライン上のファンベース(の一部)から傷つけられる結果となってしまいました。ただ、こうした経験を経たチャンスが、今後、音楽的にどう成長していくのかは興味深いところでもあります。一朝一夕で築いたキャリアでないことは確かですので、早くも彼のネクストムーブが楽しみです。

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