TWICE、BLACKPINK、BTS……K-POPブーム再燃に至った理由 日本における歴史を振り返る

K-POPブーム再燃に至った理由

 ではサウンド的にはどうだろうか。日本人好みにしたから成功したのだろうか。確かに日本進出後にJ-POP風のシングルをリリースするK-POPアーティストは多くいた。だがほとんどの場合、本国での活動以上に成功してはいない。日本のリスナーを魅了し続けたのは、やはり韓国でリリースしたオリジナル曲だったのだ。

 実はK-POPというジャンルは昔から常に洋楽、特にアメリカのポップスのエッセンスを意識的に取り入れてきた。前述のS.E.S.やSHINHWAといったK-POP黎明期のアーティストたちもサウンドメイクやイメージ作りでお手本にしたのは、ボビー・ブラウンやTLC、ジャスティン・ティンバーレイクなど、主にアメリカのアーティストだったのである。以降も(一部例外はあるものの)その流れは基本的に変わってはいない。

 K-POPは日本人のようなビジュアルからくる親しみやすさに加え、洋楽的なサウンド&パフォーマンスのカッコ良さがある。自分たちと似ているようで異なる魅力。この“違い”を楽しめる層が、2010年を境に日本で増えはじめたことが大きな変化だったと思う。

 しかし、こうした人気ぶりも2012年夏に韓国の李明博大統領(当時)が竹島に上陸したあたりから落ち着きを見せはじめる。K-POP勢のメディア露出は減り、連日にぎわっていた日本各地のコリアンタウンも徐々にさびれていく。K-POPブームは終わった――。音楽関係者の誰もがそう感じた年であった。

 ところが、である。2017年に再びK-POPブームが巻き起こったのだ。火付け役はTWICE、BLACKPINK、BTSの3組。同ブームを支えるファンの大半は10代の男女である。この世代は物心ついたときからK-POPが身近にあり、そのきらびやかなパフォーマンスを見ながら育ってきた。キュートで健康的なイメージのTWICE、ガールクラッシュ(女性が憧れる女性)の代表格であるBLACKPINK、そしてK-POPの素晴らしさを世界中に広めたBTS。いずれも“親近感がわく海外のグループ”として日本で圧倒的な人気を獲得したのだ。

 また、2012年度から中学校でダンスが必修になったことも現在のK-POPブームが起きるきっかけになったと思われる。ダンスを習おうとしたとき、日本の音楽と似たテイストがあるK-POPは入りやすく、しかも体格的にお手本にしやすかったのは想像するに難くない。

 このように昨今のK-POPブームを支えているメインの世代は、自分たちとの“共通点”と“違い”をはっきりと理解して、そこに面白さを感じているようだ。政治・経済とエンターテインメントは切り離して考えるべきだ、ということも自然と身についているのかもしれない。韓流ドラマにはまった世代から、その娘、息子、孫たちへ。時代に左右されながらも生き残ったK-POPは、やはり他の音楽ジャンルにはない魅力があった。そのことを今の若者はストレートに認めて評価している。彼ら・彼女らを見ていると、日韓の関係が改善する日もそう遠くないような気がするのだ。

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。

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