眉村ちあき、リリスク、アンジュルム……TIFは“音楽”と“美しい存在”に出会える場所に
2.TIFに現れたダンスフロア
みんなと同じ動きをしなくてもいい、ただこの音をずっと聞いて踊っていたい。聴覚と視覚両方が満たされる瞬間、脳内が幸福感でいっぱいに占められて、野外にいても脳内でミラーボールが回り出し暑さを感じなくなる(危険)。
MELLOW MELLOW(SENAさん)
踊れる挑発的ダンストラックから、クラシックなディスコナンバー「WANING MOON」で夕暮れ時のFESTIVAL STAGEに涼やかなチルアウトタイムが訪れる。その歌唱力でTVでも活躍されているSENAさんは、妖精のように小さな身体で、他の誰にも似ていないグルーヴ感を表現し堂々としたパフォーマンスを見せる。それは「見て、この私が最高でしょ!」と、全身で叫んでいるようだ。謙遜ばかりを美徳とする時代を終わらせ、日本女子の魅力を更新する存在だろう。
桜エビ~ず(水春さん)
全曲が恐ろしいほどのキラーチューンを聴かせる桜エビ~ず。リアルな灼熱の下で聴く「灼熱とアイスクリーム」で脳が溶けた。見ているだけで浄化される清々しいダンス。フィッシュテールシルエットの水色ワンピースの裾がターンの度に広がり、遠くから見ると朝顔が揺れているかのよう。水春さんの、振付通りの動きだけでなく独自のグルーヴが感じられるダンスに心惹かれた。
フィロソフィーのダンス(日向ハルさん)
ディズニーシーのショー『ビッグバンドビート』のごとくコミカルに弾ける新曲「ダンス・オア・ダンス」。まるで人間ミラーボールのような煌びやかなゴールドラメ衣装が映えて、真夏の野外で世界一健康的なキャバレーショータイムとなった。彼女たちのライブは一際自分好みでハート射抜かれ、暑さも忘れて踊り狂う。どんなに踊っても全くブレることない、日向ハルさんの歌唱力に改めて圧倒された。
lyrical school(minan/hime/yuu/hinako/risano)
HOT STAGEで初披露された新曲「LOVE TOGETHER RAP」。NONA REEVESが大好きな自分にとってNONA REEVES「LOVE TOGETHER」をラップカバーしたこの曲は、大好きな可愛い女の子たちからのプレゼントのようだった。SMILE GARDENでは初回TIFのレジェンド・Tomato n'Pine「ワナダンス」をビートジャック。「今までこのステージに立った全てのアイドル/居たからこそあるこのステージ」、himeちゃんのバースに泣きながら踊った。その「全てのアイドル」には、きっと彼女自身も含まれている。もう、いつもすぐに頬っぺたが紅潮していたちっちゃな子供みたいなhimeちゃんではなかった。
〈いつか終わる時のなかで/少しだけ君と出会ったこと/いつか止まるビートの上/ふぞろいなステップのままでラストダンス〉と歌う「LAST DANCE」。古今東西の映画オマージュ溢れるMVが大好きなこの曲もメンバーの生きた輝きだし、risanoのムーンウォークをこの眼で見てさらに好きになった。決まった振付がなく、メンバーはステージをウロウロする。個性がバラバラだけれどなぜか気の合う友達同士が好き勝手に遊んでいるような自由さが、こちらの心も自由にしてくれる。hinakoちゃんが、ステージ端っこにちょこんと腰かけ足をプラプラさせていた様子が可愛らしかった。
3.眉村ちあきの衝撃
TVでの存在が面白すぎて「ヘンテコなことをやっている人」という印象が強かったけれど、ただシンプルにライブが凄かった。昨年TIF公開オーディションに出場するも落選。今年はオファーを受けメインステージに出演というドラマチックな背景を知らなかったとしても、命がけの気迫と全身で今この場所を楽しもうとするピュアさは、ライブを一度見たら誰もが分かる。「キャハッ!」というハイトーンの笑い声と全身の様子に、亜土ちゃんこと水森亜土さんの絵の世界そのままにしたかのようなキュートさが重なる。
観客の上をサーフする定番曲「奇跡・神の子・天才犬!」では「サーフは禁止だから、騎馬戦やろうっと!」と言い出し、彼女をずっと見守ってきたお父さん的存在のプロインタビュアー吉田豪さんとスタッフの騎馬に乗り、ステージを練り歩く。さっきまで歌に胸打たれて泣いていたのにまさかの豪さん登場の衝撃で、笑い涙と感動の涙の区別がつかなくなる感情のカオス。
「私は今日が一番最高のライブをしに来てる、いつも一番最高のライブをしたい」と真っ直ぐな気持ちを語って始まった「大丈夫」は、眉村さんが自分自身にも向けて歌っているんだと伝わって、気がつくとボロボロ泣いていた。眉村さんはいつでも今この瞬間が最高のライブだから、「あの時から知ってる」というマウンティング合戦は無意味。私は堂々と「TIF新規です!」と言いたい。