amiinA、リリスク、おどるオサカナ、Negicco…TIFを特別な場所にする“天上と地上”のステージ

TIF2017、イラストとともに振り返る

 正直言って今やアイドルフェスは沢山あり、決して珍しいものではなくなりました。大規模な会場で、見たことのないコラボレーションや伝説のグループの再結成ステージも観られます。

 それでも、TOKYO IDOL FESTIVAL(以下、TIF)が特別なのは何故なのでしょうか。老舗だから? 世界最大の出演者数だから?

 どれも当てはまるようで、一番の理由ではありません。

 他のフェスとの最大の違いは、あの真夏のお台場でしか体感できないシチュエーション。

 SKY STAGEとSMILE GARDEN、あの景色はあそこにしかないということは、体験したすべての人が知っています。

 SKY STAGEは、焼き付ける陽射しの下でフジテレビ湾岸スタジオのエレベーター待ちの列に並び、最上階に到着した後も更に階段を何段も上がってやっと辿り着くことのできるステージ。高い所というだけで生まれる恐怖と緊張が、そのまま高揚感に変わります。視線の届くところ全てにお台場の景色が広がっているけれど、空以外の見える全てが人工のもの。

 屋上の床は真っ白、ステージも真っ白、真夏の光線を跳ね返すレフ板が昼間のアイドルを輝かせ、日が落ちると都会の灯りが星屑のように広がって、最高の舞台装置になります。

 SMILE GARDENは、草の生えた地面から蒸し返す湿気に満ち、土埃が舞い、トンボが飛び交い蝉の声が響く場所。長い時間そんな場所で過ごすことは都会に暮らしていると稀なことです。人間が作った「自然」ではあるけれど、土と植物があるだけで本能的に「自然」を感じられ、ギラギラした灼熱の日差しの中にある都会のオアシスはそのまま、つまらない現実世界の中で輝く夢のステージを作り出すアイドルの存在のようでもあります。

 二つのステージ、天国に一番近い天上界と、泥臭い地上。

 それらが同時に存在することが、TIFがステータスであり続ける理由ではないでしょうか。

 そしてもう一つ、「お台場みんなの夢大陸」と共用のHOT STAGEやダイバーシティのガンダム像前FESTIVAL STAGEで発生する、お台場に遊びに来た一般観光客と夢見るアイドルオタクのニアミスの異次元感。

 フードコートで同じカレーを食べながら、普通の家族連れ、カップル、海外からの観光客と、汗とホコリまみれのオタク達は互いが存在しないかのように振る舞います。

 巨大な会場を貸し切って行なうフェスでも、 街中を占拠するサーキットフェスでも体験できない、イオンモールなどのインストアイベントで休日を楽しむ買い物客と 、 アイドルとオタク達の密なる空間が事故的に交錯してしまう居心地 の悪さと刺激に似ています。そこで偶然アイドルイベントに遭遇した幼い女の子が、 アイドルを目指すようになる物語を密かに想像したりしました。

amiinA

SKY STAGE 

 夜のSKY STAGEで、身軽な二人はそのままふわりと飛んでいきそうで、足元が見えないのでもともと飛んでいるように見え、寧ろ飛んでいかないのが不思議なくらいでした。

SMILE GARDEN

 酷暑、蒸し風呂のような湿度、時おり通る自然の風。蝉の声、草と木の匂い、飛び交う沢山のトンボたち。

 たったあれだけの緑でも、海沿いの埋め立て地と運河に囲まれて育った私にとって、SMILE GARDENは「森」です。

 いつもライブハウスで見ている「Canvas」でも、風、草の匂い、地面に立つ足、五感で感じる自然、その中で全く違って映える景色。観客が声を合わせてみんなで一緒に歌う時は、遮るものもなく広がって行き、全身が「地球の上で歌っている」感覚で満たされ、都会で生きる人間が普段は忘れている、「人間も自然の一部である」ということを思い出させてくれました。

DREAM STAGE

 スピーカー・音源の不調などトラブルがあり、歌いづらそうに見えました。amiちゃんが後からブログで「悔しかった」と書いていたけれど、猛烈に暑いビルの谷間で聞く「cosmos」が、灼熱の中で冷たい水を飲むような気持ち良さで、空の青さに音楽が溶けていく場面はここでしか体験できないものでした。

DOLL FACTORY

 3日間で唯一の屋内ステージで、チェック柄衣装で登場。おそらく厚手の素材と長めのスカートが秋冬っぽい印象なのと、野外向きではないからかと想像できます。DREAM STAGEでの悔しさを挽回するような、3日感を締めくくる熱いパフォーマンスでした。

aminA「Canvas」

lyrical school

hime&Rikako

SKY STAGE

 リュックを背負ったままキャップ・Tシャツにタグをぶら下げたlyrical school(以下、リリスク)が登場した瞬間の視覚的インパクトは、この日一番のものでした。リリスクの衣装はシンプルなものが多いけれど、フリルやリボンで飾るのではなく、ダンスの動きとともに揺れる値札で装飾するスタイルが斬新でした。

 「Tシャツ屋さん」という定評をあえて皮肉ったような、ヒップホップスタイルをアピールしつつ、しかもグッズの宣伝にもなるという一石二鳥感!

 「サマーファンデーション」を聴くと花火が浮かびます。今年一回も花火大会に行けなかった私ですが、この日リリスクが夏の夜空に花火を見せてくれました。

 そしてもう一つ、himeちゃんと、リリスクの前に出演したDEAR KISS 齋藤里佳子ちゃんの再会。

 ステージ上で並んだ姿は見られなかったけれど、DEAR KISSの直後にリリスクが同じステージに立ったことで、二人が所属していたユニットのことを思い出し、別々のグループで違う道を歩んでいても、アイドルを続けてきた二人のそれぞれの道が一瞬交錯した場面を見たような気がしました。

lyrical school「夏休みのBABY」

おどるオサカナ(フィロソフィーのダンス×sora tob sakana)

マリリ&玲

SMILE GARDEN

 幸せなコラボレーション! メンバー同士の仲が良さそうなところが一番の萌えポイントです。奥津マリリちゃん(フィロソフィーのダンス)と風間玲マライカちゃん(sora tob sakana)二人が、ステージ上でニコッと笑い合うところなんて最高でした。

 生演奏の「クラウチングスタート」(sora tob sakana)では、楽曲の美しさが純化されたステージに涙しました。大人っぽい「アイム・アフター・タイム」(フィロソフィーのダンス)で玲ちゃん(sora tob sakana)の歌い出しの抑制されたセクシーさが絶妙にハマっていて、観客が「おお~!」と声を上げていたのも印象的です。そして十束おとはちゃん(フィロソフィーのダンス)の幼い声は、ローティーンの女の子たちの声の印象が強いオサカナ楽曲でも全く違和感なく聴こえました。

 企画先行ではなく、彼女たちの性質や楽曲との相性が考え抜かれ研ぎ澄まされたコラボでした。

フィロソフィーのダンス「アイム・アフター・タイム」
sora tob sakana「夜空を全部」

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