ぞんび、甘い暴力、MAMIRETA……独自の世界観を持つ刺激的なV系バンド
剥き出しの人間性に触れられる、過激なMAMIRETA
TikTokでバズったV系の曲と言えば、MAMIRETAの「お邪魔します」にも触れておきたい。2017年に始動したMAMIRETAは、一度聴いたらクセになる楽曲と過激なライブパフォーマンスが特徴。代表曲でありライブの定番曲でもある「お邪魔します」は、耳に残るノックの音とそれに続く重低音のリズムが小気味よく、中毒性の高い一曲。TikTokでは、そのノック音に合わせてドアを叩くマネをする動画が12,000件以上も投稿された。ライブでは毎回、伐(Vo)の何をしでかすかわからない危なっかしさにハラハラさせられる。フロアに乗り込むのは当たり前。客席をかき分けてつくったスペースでブレイクダンスをかましたり、興味なさそうにスマホをいじる観客の靴を脱がせてみたり、お立ち台にのぼり頭からドラムセットに突っ込んでみたり。「死因:暮らし」では〈ロープを巻いて首吊り自殺 薬を飲んで薬物自殺〉とさまざまな自殺方法を淡々と歌う伐と、それに合わせて首を吊る仕草に似た振付をするフロアの、ある意味恐ろしいほどの一体感が見られる。はたから見れば異様な光景に見えるかもしれないが、実際に足を踏み入れた者だけがわかる奇妙な高揚感がMAMIRETAのライブでは感じられる。
楽曲は人間の根底にある欲望をテーマにしたものが多く、タイトルも公の場に書くのが憚れる過激なものが多い。しかし、昨年12月にリリースした「俺を必要とする人はこの世の中に居ないよ」では、MAMIRETAの新しい一面が見えた。これまでにない開けたシンプルで疾走感のあるメロディと、〈迎えに来た母の泣く顔を見た〉〈アルバイト続かずに 殴り合いの日々〉と10代のリアルな反抗期を自伝的に歌った歌詞。この曲で初めてメンバーの等身大の感情に触れられた気がした。そんなMAMIRETAは、2年目で赤坂BLITZでのワンマンを終え、来年2020年1月には『無冠の帝王』と題しZepp DiverCityで自身最大キャパシティのワンマンに挑む。メンバーチェンジなどを乗り越え、一回り大きくなったMAMIRETA。これからも目が離せない。
自由度が高いからこそ、さまざまな世界観のバンドが生まれるヴィジュアル系。日常へのスパイスとして、時にはバンドの世界観にどっぷりと浸かってみるのも良いかもしれない。
■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。