ポスト・マローン「Wow.」で踊る“お坊さん”に直撃 僧侶とヒップホップダンスの共通点とは?
この動画を見て“踊るお坊さん”に興味を持った当サイト編集部スタッフは、今回滝山隆心氏に電話取材を敢行。密教、と聞くと当初は近寄りがたいイメージもあったのだが、「仏教とダンスには“自分自身の輝きを感じる”という共通点があるんです」、「密教はみなさんが思っているよりもずっとエネルギッシュで明るいものですよ」と、滝山氏は仏教の世界とダンスについて終始優しい口調で語ってくれた。
ーー宗教舞踊とコンテンポラリーを融合された独創的なダンスは、見た人にとってとても印象的ですが、滝山さんのダンスではどんなことが表現されているんでしょうか。
滝山隆心(以下:滝山):ダンスはどのジャンルでもそうですが、やっぱりいろんな経験をして生きてきた人とその方を取り巻くもの、いわゆる人生まるごとが、音楽と響き合って生まれる“エネルギー”をダイレクトに感じられるのが面白いです。私はダンスを踊る時にその瞬間の「自分自身」を純粋に全力で表現します。その瞬間に全力を込めるので、私のダンスはいつも完璧です。伝えたいことと言えば、ダンスは「楽しい」ということです。
ーー仏教の世界観をダンスで伝えようと思った経緯は?
滝山:仏教もダンスも一緒で、「今、生きていて、ここにいる」という自分自身の輝きを感じることができます。特にダンスは生きることの「嬉しさ」や「楽しさ」に特化しているので、そのことを感じてもらうのにとても有効な手段です。
ーーインターネットでポスト・マローン「Wow.」の“白髭ダンスおじさん”のニュースを知ったということですが、ご覧になった時はどう思われましたか?
滝山:まず、「白髭ダンスおじさん」が全力でダンスを楽しんでいるのを見て、羨ましくなりました。そして、誰でも本気で何かを楽しめば、それはやっぱり皆に大きく響き渡るんだな、と感じさせられました。
ーーこの曲で自分も踊ってみようと思った理由は?
滝山:おじさんが本気で踊っていたのがとても楽しそうで、羨ましくなったからです。あと、仏教(特に密教、高野山)は「今、ここで生きている人を輝かせる」ものであって、日本のお葬式のイメージだけではないし、海外の人が想像する「無」や静かで暗いものではない、ということを発信したいと思ったからです。密教は皆さんが思っているよりずっとエネルギッシュで明るいですよ。
ーー滝山さんのダンスと「Wow.」の相性はいかがでしたか。
滝山:最近使ってない筋肉で「Wow.」に全力で入っていったので体が痛くなりました。それがまた新鮮で面白かったです。「Wow.」の言葉もグルーブも何というか真っすぐで、それがダイレクトに体に響いてくるので、がっつり引っ張られ、体が悲鳴を上げながらも、妙に心地よく踊れました。ダンススクールに通いたくもなりましたね(笑)。
ーーこの動画を見た方からの反響はいかがでしたか。
滝山:高野山はそんなに広くはないので、周りの方々はある程度理解してくださっていて、「そんなこともしているんだな」という風に見てくださっていますね。また、僧侶とダンスの意外性をよく言われることがあります。でも、(ダンスを)趣味や道楽だけでやっているわけではないんです。仏教の教えを表現するための手段として、表現には言葉や音楽、アートなど様々な伝え方がありますが、私はたまたまダンスをしていたからそれを表現に使っています。仏教で最もメジャーなダンスは「禅」や「瞑想」ですけどね(笑)。
ーーダンスから滝山さんが受けた影響はありますか?
滝山:自分の体を知れる、感じることができるのはダンスを通して誰でもできることだと思います。ダンスをする瞬間は音を聴いて音だけに集中すると思うのですが、その感性をどんどん研ぎ澄ましていくというのは大切なことだと思いますね。
ーーダンスと僧侶の世界に共通点はありますか?
滝山:大いにあります。ダンスがこの体をぜんぶ使って音楽やその瞬間を心ゆくまで楽しむのと、仏教の修行で体や心ぜんぶを使って人生をフルに楽しむというところが似ています。僧侶っぽい話になってしまって申し訳ないですが、迷いや煩悩、善悪からいったんは離れて、純粋な喜びを感じられるところはまったく同じです。悲しいこととか苦しいことから心が癒され、また、喜びや力を与えてくれるところは、音楽やダンスも一緒ですよね。
(取材・文=神人未稀)
■リリース情報
ポスト・マローン最新シングル
「Goodbyes(feat. Young Thug)」
配信はこちらから
※7月5日(金)13:00スタート