「CUT IT UP feat. CL & AFROJACK」インタビュー
LDH楽曲がアジア諸国で異例のヒット記録! PKCZ®︎が語る、国境を超えたコラボへの挑戦
VERBAL「音楽にちなんだものが全てシナジーを起こす時代」
ーーすごくm-floらしいエピソードですね。遠隔で仕事を進めていくのも、今っぽいやり方だと思います。SpotifyやApple Musicなどの浸透によって、音楽シーンは世界的にどんどん変わってきていると思いますが、みなさんは現在の状況をどのように捉えていますか?
DARUMA:Myspaceが登場したくらいから、シーンはどんどん変わっていますよね。国境も年代も性別も人種も超えて、世界中の物好き同士が簡単に繋がれるようになって、その人たちで音楽を制作する流れがここ10年でかなり一般的になりました。特に今のヒップホップをやっている若いミュージシャンは、Instagramで繋がってDMのやり取りをして、曲のデータを送りあったり、スキルトレードをしたりして、どんどん新しいものを生み出している。僕らが90年代に一緒にスタジオに入って音楽を作るのとは、全く違うことが行われているという印象です。スピード感も早くなって、YouTubeやサブスクリプションサービスから、一夜にしてスーパースターが生まれることも多くなりました。最近だとビリー・アイリッシュとか、すごく若いのに全世界、全世代の音楽ファンを夢中にさせるようなスターも現れている。消費のスピードは早くなって、一曲の重みは昔よりなくなってきているかもしれませんが、同時に夢のある時代でもあると思います。
MAKIDAI:音楽の聴き方も多様化していますし、いろんなジャンルが混ざり合うことでどんどん新しいものが生まれている印象です。サブスクリプションで昔の楽曲もどんどんアーカイブされて、10~20年くらい前の楽曲が今のアーティストによってサンプリングされたり、単純に新曲だけが聴かれる状況ではなくなっているのも面白いと思います。音楽フェスも多くなって、そこでアーティスト同士が交流する機会も増えたと感じています。でも、だからこそ自分たちの芯となる音楽性が見出しにくい時代でもあって、アーティスト自身の審美眼だったり、人との信頼関係がより重要になっていくのかなと、個人的には考えています。
VERBAL:リスナーは好きなアーティストを好きなタイミングで楽しめるし、アーティストもファンがいるところが可視化されやすくなったから、そこに行きやすくなったと思います。昔だったらいろんな理由で繋がりにくかったところが、本人同士のコミュニケーションでコラボレーションに繋がったりもするので、僕は本当に良い時代になったと感じています。音楽だけではなく、音楽にちなんだものが全てシナジーを起こす時代で、例えば僕は先日、m-floとして「森、道、市場 2019」というフェスに出演したんですけれど、そのフェスにはコアな音楽ファンが集まっていて、サウナに入りながら演奏を聴いたりできたり、「エジプトたこ焼き」みたいな見たことのないような屋台がたくさんあったりするんですよ。それで、「エジプトたこ焼き」のお店の方に、普段はどこで営業しているんですかと聞いたら、店舗はなくて出店だけで成り立っているというんです。ネットによって色んなものが繋がって、ニッチなものが商売として成立しやすくなったという意味でも、すごく良いですよね。
ーーPKCZ®︎は、そうした時代においてどんな役割を担うユニットを目指していますか?
MAKIDAI:日本国内だけじゃない、新しい音楽マーケットを開拓していくのが、LDHにおいての僕らの役割だと考えています。その意味で、今回の「CUT IT UP」がアジア諸国でバズったのは、一つの成果だと思います。VERBALくんは、アンダーワールドが所属するクリエイティブ集団のTOMATOみたいなグループを目指したいと言っていて、その指針を継続していくのが大切かなと。LDHでは今、Jr.EXILE世代と呼ばれる若いアーティストがどんどん出て来ているので、彼らが世界で活躍できるように、僕らがその道を切り拓いていけたらと思います。
VERBAL:僕らは特攻隊みたいな感じで、LDHではまだ誰もやったことがないことにチャレンジしているユニットなんです。海外のフェスに出演するにはどうすれば良いのかとか、交渉しながら試行錯誤してここまでやってきました。僕らがやろうと考えることには難関が多く、まだルートが確立できたわけではないですが、難関というだけで不可能ではないんですよね。日本から世界に発信できるエンタテインメントはまだまだあると思うので、僕らはその足がかりをなんとか築いていきたい。LDHには優れたチームがいるし、リソースもあるのだから、あとは我々が我々らしい成功例を作れば、後進にとってのヒントにはなるはずです。
DARUMA:個人的には僕らがPKCZ®︎としてリリースする作品には、どこかしらに必ずポップな側面は持っていたいと思っていて。クラブのフロアーでも機能しつつ、歌もののポップスとしても聴かれるようなものを生み出していきたいなと。EDMやトラップミュージックは今、かなり飽和状態に思えるかもしれないですが、一過性のものではなく、むしろポップスとして今後も残っていくものだと思うんですね。だからこそ、そこにJ-POPと融合させられる可能性があるのではないかと。そして、すべてのバランスがうまく整えば、今回の「CUT IT UP feat.CL & AFROJACK」のように、海外でも聴かれるポップスになるのではないかと考えています。僕らが見てきたものと、LDHが持っている音楽ビジネスのノウハウを合わせて、世界の音楽シーンと接続できるような作品を作っていきたいですね。そのためにも今はまだ、恐れずにトライ&エラーを繰り返していこうと思います。
(取材・文=松田広宣)
■配信情報
「CUT IT UP feat. CL & AFROJACK」
6月4日(火)配信リリース
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