ペンギンラッシュが語る、ジャンルに捉われない音楽性 「やり過ぎないというより“寄り過ぎない”」

ペンギンラッシュ、ジャンルに捉われない音楽性

自分たちがやりたいことを表現したい(真結) 

ーー「能動的ニヒリズム」は歌、楽器を含めて、メンバーのプレイが生々しくぶつかり合っていて。かなり攻めている曲だなと。

真結:そうかも。この曲は私が“もと”を作ったんです。好きなコードを弾くことから始めることが多いんですけど、この曲もまさにそうで。好きなコード、好きなリズムで作っていった結果、セクションごとにかなり雰囲気が違う曲になって。

ーーいわゆる“Aメロ、Bメロ、サビ”というフォームからも逸脱してますね。

真結:そうやって(Aメロ、Bメロ、サビを意識して)作ることはほとんどないですね。バーッと好きなように作って、あとから「ここにAメロが入りそう」みたいな感じで決めるので。「このパートが間奏になるのか歌が入るのか、最後まで決まってない」ということもありますね。5曲目の「モノリス」もそういう感じだったかな。

望世:「モノリス」は途中までしかなかったからね、最初。

真結:そうか(笑)。「能動的ニヒリズム」はじつは『No size』の頃からあったんですけど、そのときは形にならなかったんです。スタジオで何度か演奏してるうちに、アレンジやテンポが変わっていって。

望世:バンドの練習曲みたいになってたんですよ。「どこまで速くできるかやってみよう」とか。

真結:最初のデモよりBPMが30くらい上がってますからね。

ーーいろいろなトライ&エラーを経て完成したんですね。曲を構築するスキルも上がってるのでは?

望世:そうかもしれないですね。去年よりは曲を形作る力が付いていると信じたいです(笑)。

ーー歌詞のテーマは“SNS”ですね。

望世:私たちはSNSのネイティブ世代というか、中学生の頃から使っていて。でも、本当はいらないと思ってるんです。

真結:うん。SNSは私も苦手で、やらなくていいんだったら、やってないと思います。ツールとしてはすごく便利なんだけど、個人的にはほとんどやってないですね。

望世:そういうことを考えている人はあまりいないと思いますけどね。周りの人たちを見ていても、依存していることに気づいてないような気がして。歌詞の解釈はそれぞれでいいと思うんですけど、何かを考えるきっかけになったらいいなというのはありますね。

ーーアルバムの最後の「青い鳥」は、ゆったりとしたグルーヴが印象的な楽曲ですね。

真結:それこそ“夜”をテーマした曲ですね。前作の「RET」もそうなんですけど、風景を思い浮かべながら作ることはけっこうあるんですよ。この曲は月をイメージしていて、仮タイトルも“MOON”だったんです。それを望世に渡して、歌詞をつけてもらって。それを見て、鍵盤ハーモニカの音を加えたんです。歌詞を見てから音を変えることもけっこうありますね。

ーー「青い鳥」という題名通り、幸せの在り処がテーマになっていて。

望世:私なりの応援歌ですね。デモの音源がすごくやさしい印象だったから、他の曲みたいに強さとか皮肉ったりするのではなくて、「応援したいな」という気持ちになったんですよね、珍しく。

ーー“幸せは身近にある”という普遍的なメッセージも込められていますが、お二人にとって幸せな状態とはどんなものですか?

望世:そうですね……。音楽に関わっているのが好きだから、こうやって取材してもらってアルバムの話したり、いろんな人に自分たちの曲を届けられるのはすごく幸せですね。

真結:うん。「こういうことを思いながら作りました」みたいなことって、普段はリスナーの方に伝えられないじゃないですか。こういう機会があるのはすごく嬉しいです。「こうやって作ったんです」と話したいというのもあるし(笑)、アーティストのインタビューを読むものも好きなんです。

ーーどの曲にも独創的なアイデアが施されているし、ジャンルレスですが、全体を通して“ペンギンラッシュらしさ”はしっかり存在していて。お二人は“ペンギンラッシュらしさ”をどんなところに感じていますか?

望世:さっき「能動的ニヒリズム」は前作のときからあったって話しましたけど、(『No size』に)収録しなかったのは、4人とも「“っぽく”ないかもね」と思ったからなんです。それが何なのか? って言われると、明確に答えられないんですけど。

真結:それは共通感覚としてありますね、メンバーのなかで。

ーーそれがズレることはないんですか? つまり誰かが「っぽいね」と思って、誰かが「っぽくない」っていう……。

真結:それはないかな。大体一致するような気がする。

望世:そうだね。どこで「っぽい」と思ってるんだろう?

ーーポイントはあるんですよね、どこかに。

望世:うーん、一つあるのは“溢れない”ということかも。

真結:わかる。「ここを超えたら、“っぽくない”」っていう。

ーー“溢れない”というのは“やり過ぎない”ということ?

望世:やり過ぎないというより、“寄り過ぎない”かな。

真結:そうだね。演奏的にやり過ぎちゃうことはけっこうあるんだけど(笑)、何かに“寄り過ぎ”はちょっと違うなって。

ーーなるほど、たとえばファンクに寄りすぎると、「ちょっと違う」ということになるのかも。

望世:そういうのはありますね。

ーーでは、ライブを意識することは? 「盛り上げる曲がほしい」とか。

望世:それはないです(笑)。

真結:考えたことない(笑)。

望世:体が揺れるような曲とか、盛り上がる曲とか、考えたほうがいいのかな(笑)。むしろ削ってますからね、私たちは。キラーチューンというか、ライブでいちばんウケがいい曲があったんだけど、やらなくなっちゃったんです。

真結:それも「っぽくない」というところで意見が一致したんですよね。「あの曲やらないんですか?」って言われるし、今回のアルバムにも「ついに収録されるかも」って思われてたみたいですけど……。

望世:入れなかったです(笑)。

ーーミュージシャンとしてやりたいことを優先している?

望世:そうなのかな? いいのか悪いのか(笑)。

真結:でも、自分たちがやりたいことを表現したいというのはありますね。リスナーのみなさんには好きなように楽しんでもらえれば。

望世:変拍子でもぜんぜん踊れますからね。

ーーペンギンラッシュの音楽はJ−POPシーンにもジャズシーンにも浸透できると思いますが、「こういう方向性で活動していきたい」というビジョンはあるんですか?

望世:いま言ってもらったように、いろんなところで活動できるのが理想ですね。ジャズのフェスにも出たいし、ロックバンド系のフェスにも出たいし。ずっとそうしてきたんですよ、私たちは。名古屋には私たちと似たような音楽性のバンドがいなかったから、ギターロックとか、歌モノのアーティストとかメロコアのバンドとも対バンして。

真結:名古屋はメロコアが強いですからね。

望世:それを続けていきたいんですよね。最近は東京でライブをやることが増えて、似た傾向のバンドと一緒になることも多いんです。それはそれで楽しいんだけど、まったく違うタイプのバンドとバチバチやるのも好きなので。

ーーすごい。ガッツのあるコメントですね。

望世:そうですか?(笑) 

真結:いろんなジャンルの人とやるのは単純に楽しいんですよね。聴いたことがない音楽も聴けるし。

望世:私たちが聴いたことのないジャンルのバンドと一緒にやって、すごく楽しい日を作れたことも何度もあって。そういう楽しさを知ってるんですよね。

(取材=森朋之/写真=伊藤 惇)

■リリース情報
2ndアルバム 『七情舞』
発売:6月5日(水)
価格:¥1,800(税抜)
配信はこちら

<収録曲>
1. 悪の花
2. アンリベール
3. 契約
4. 能動的ニヒリズム
5. モノリス
6. 晴れ間
7. 青い鳥

■インストアライブ情報
6月9日(日) 愛知 名古屋パルコ西館1FイベントスペースST 12:00
内容:ミニライブ+サイン会(来場者全員ライブ観覧可能)
詳細

■ライブ情報
ワンマンライブ『Rush out night 2019』
8月18日(日)名古屋 新栄APPLO BASE
OPEN 17:30/START 18:00
チケット発売中(イープラス)

『七情舞』東名阪レコ発ツアー “七情に舞う”
6月27日(木)名古屋 新栄APOLLO BASE
OPEN 18:30/START 19:00
w/けもの
チケット発売中(イープラス)

7月5日(金)東京 代官山SPACE ODD
OPEN 19:00/START 19:30 
w/集団行動、showmore
チケット発売中(イープラス)

7月12日(金)大阪 心斎橋CONPASS
OPEN 19:00/START 19:30 w/Lucky Kilimanjaro、RAMMELLS
チケット発売中(イープラス)

オフィシャルサイト

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