香取慎吾、表現者としてのスケールの大きさ 「キツかった頃を求めてる」――“初”を積み上げた単独ツアー
香取慎吾が7月22日、自身のX(旧Twitter)に「おわてしまた」とひとこと投稿した(※1)。それは、5月31日から7月20日まで東京、福岡、兵庫、北海道、愛知を巡ったライブツアー『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』を完走した率直な思いだった。
おわてしまた#CircusFunk2025
— 香取 慎吾 (@ktrsngofficial) July 22, 2025
思い返せば、昨年末から“初”が続く怒涛の展開だった。11月27日にリリースしたアルバム『Circus Funk』は、12月4日発表の「オリコン週間デジタルランキング」(※2)で、自身初となる1位を獲得。そして12月3日、4日には、アルバムでコラボしたアーティストたちを迎え、東京・国立代々木競技場 第一体育館にて初のフェス『“Circus Funk” Festival』を開催した。
また、年が明けた1月9日から放送された主演ドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)では、「Circus Funk(feat. Chevon)」が主題歌に。主演ドラマの主題歌を自ら歌ったのだ。
7月2日放送の『2025 FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ系)では、尊敬する郷ひろみとの初共演も実現。さらに、親友・草彅剛がギターの弾き語りで自作曲をテレビ初披露する場面では、香取は「自分の歌より緊張した」と語り、手に汗握る思いで見守ったという。
そんな“初めて”づくしの活動のなかで並行して行われてきたのが、初のソロツアーだった。しかも香取の場合、楽曲制作からライブ演出に至るまで、すべてをセルフプロデュースで手がけている点もほかに類を見ない動きだ。アルバムの曲順は、すでに頭のなかでライブのセットリストを意識して構成され、コラボアーティストへの声がけや進行管理までも自ら行なう。
同時に、「SNGダンサーズ」や「SNGバンドメンバー」と呼ばれるカンパニーを率いて、“どう魅せるか”を突き詰めていく。さらには、市場調査をしながら、ファンのニーズに合ったグッズの考案まで行うのだから、まさに脱帽である。
稲垣吾郎、草彅剛とともに全国を巡っているファンミーティング『NAKAMA to MEETING』のお見送りの際、ファン(=NAKAMA)が“くろうさぎ”のぬいぐるみをそれぞれケースに入れて持参しているのを何人も見かけたという香取。「これは、グッズがあったら喜んでくれるかな」と感じ、アクリルスタンドとぬいぐるみがぴったり収まるクリアビニールポーチを自ら何度もサイズを測って制作。「自信作です!」と、乃紫とともに配信したYouTubeライブで語っていたのを思い出す。
SMAPとしてCDデビューを果たしたのが1991年。実に34年以上のキャリアを重ねながら、今もなお“初めて”を更新し続けていることに、ただただ驚かされる。その“初”の数だけ、香取慎吾は“挑戦”を続けているということだ。Xに投稿された「おわてしまた」のひとことには、そんな挑戦の連続だった半年間が、ひとまずの区切りを迎えたという思いが込められていたのかもしれない。
シェボンからの差し入れ特大カニ本番中ステージで食べたさ美味デカ🦀🤣 pic.twitter.com/pwxAHCxK65
— 香取 慎吾 (@ktrsngofficial) July 15, 2025
裏方としても、表現者としても全力疾走していた日々。草彅剛とのラジオ番組『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm/7月20日放送回)では、「あっという間に終わっちゃった感じで、寂しいです」と振り返った。とはいえ、その言葉の端々からは、どこか「まだまだやれたのに」というような余力と熱意が感じられた。
「いっしょにやってきたつよぽんだからこそ、何か意見をくれるんじゃないかと。聞いてみていいですか?」と前置きをしつつ、「今回のツアーさ、なーんかサクサク終わっちゃうの」とこぼしたのだ。今回のツアーは5カ所10公演。1カ所につき2公演で、土曜日の15時、日曜日の13時と開演時間も早い。今の季節だとライブ終了後もまだ明るいこともあり、地方に滞在しても1泊で帰ってくる感じが、まるで“日帰り感覚”だったという。
「前って、地方に行ったら何日も帰れない、みたいな。単純に(公演数が)多かったんですかね?」と思い返していると、草彅も「多かったし、始まりも遅かったんじゃない?」と回顧。「その日に帰れないとかもあった? いや、でも『即出だ』とか言って、終わって急いでシャワー浴びて飛行機に乗るとかもあったよね? そしたら、もう1日くらいやってたってことかな?」と、ハードスケジュールをこなしていた日々を振り返る。
ちなみに、2014年9月4日から翌年1月12日にかけて行われたSMAPのツアー『Mr.S -SAIKOU DE SAIKOU NO CONCERT TOUR-』は、5カ所22公演。東京ドームで5公演、京セラドーム大阪で6公演、札幌ドーム(現・大和ハウス プレミストドーム)で2公演、ナゴヤドーム(現・バンテリンドーム ナゴヤ)で5公演、福岡 ヤフオク!ドーム(現・みずほPayPayドーム福岡)で4公演という、大規模なものだった。開演時間も早くて16時、遅い時は18時30分という設定で、草彅が「だいぶ感覚違ってくるよね。さらっと過ぎちゃう感じがするんだね」と語ったのも納得だ。
「やっぱ、そっか単純に少ないのか」と違和感の正体を知った香取は、「不思議なもんだよね。(公演数が)多くて大変で、キツかった頃を求めてるみたいな」と笑う。今回のツアーも、1公演2時間半と決して短くはない。しかも、グループ公演と違い、ソロライブではステージに出ずっぱり。体力的な負担も決して軽くはないはずだ。それでも「サクサク終わっちゃった」と言えてしまうところに、あらためて香取慎吾という表現者のスケールの大きさを感じさせられる。
草彅から「じゃあ、もう1日増やしたほうがいいんじゃないですか」とツッコまれ、「もっとやりたいってことか!」と笑い合うふたり。さらに香取は、「これで終わりじゃないからね。もう毎日が始まりですよ」と、実に頼もしいひと言を残した。
コロナ禍という制約の時代から始まった、香取慎吾のソロアーティストとしての歩み。声を出して笑うことも、同じ空間をともにすることさえ難しかった日々を経て、「遊ぶように、はじけるように」挑んだ今回の1stツアー。その“終わり”は、次なる“始まり”へと続いていく。そう信じられるのは、香取がこれまでエンターテインメントを通して見せてきてくれた景色があるからだ。次に彼が更新する“初”は、どんな挑戦になるのか。きっと今も次の新しい何かに向かって動いているに違いない。ソロアーティスト・香取慎吾への期待は、ますます高まるばかりだ。
※1:https://x.com/ktrsngofficial/status/1947528740659204605
※2:https://www.oricon.co.jp/rank/dia/w/2024-12-09/


























