畠山美由紀、冨田恵一プロデュース作に見る音楽的充実 『Wayfarer』リリース公演を振り返る

畠山美由紀、冨田恵一プロデュース作に見る音楽的充実 『Wayfarer』リリース公演を振り返る

 畠山美由紀のおよそ5年半ぶりのオリジナルアルバム『Wayfarer』(ウェイファーラー)は、すべての演奏とプロデュース、10曲中5曲の作曲を以前から交流のあった冨田恵一が手掛けている。そして、3月16日に、そのアルバムの発売記念ライブがめぐろパーシモンホールの大ホールで行われた。バンドマスターはもちろん冨田恵一(Key)。他、真城めぐみ(Cho)、鈴木正人(Ba)、小池龍平(Gt)、平 陸(Dr)という布陣で臨んだこの日のステージは、『Wayfarer』に収録された楽曲をすべて演奏し、同アルバムの魅力を余すところなく伝えるものだった。筆者はアルバム発売時に畠山にインタビューする機会があったので、その時の発言をもとにこの日のステージを紐解いていこうと思う。

 1曲目、ライブという旅の始まりを告げるような「サウンド・セイリング」の希望に溢れたサウンドが響き渡ると、一気に期待が高まり、会場の雰囲気も高揚してゆく。最初のMCでは畠山が冨田にプロデュースを依頼したいきさつを説明。bird『Lush』という冨田が全曲のプロデュースを担当したアルバムを聴いて、自分も冨田さんと1枚作りたいと思ったという。

 畠山によれば、『Wayfarer』は、ブラックミュージックやソウル、R&Bの要素を入れ込むことを意識したという。具体的には、冨田に参考音源としてエイミー・ワインハウスやカニエ・ウェストが参加したマドンナの楽曲を聴いてもらったり、マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイが好きなことをアピールしたそうだ。結果、「会いに行く」「フルデプス」「口唇には歌を」といった曲ではブラックフィーリング濃厚な、横に揺れる心地よいグルーヴに結実しており、そのグルーヴ感はライブでももちろん健在だった。全席指定席で着座でのライブだったが、肉感的なビートには思わず身体を揺らしたくなるような力があったのだ。 

 なお、冨田というとキリンジなどの曲でゴージャスなストリングスを施すイメージがあったが、本作ではそういったアレンジは2曲程度。その代わりコーラスを多層的に重ねたり、様々な実験が見られるのも特徴的。ceroの高城晶平が作詞を手掛けた「BLINK」などは、冨田が畠山に「こんな感じどう?」と聴かせたというHiatus Kaiyoteにも通じるビートが印象的だ。冨田はMCで、畠山について“シックでオーガニックなイメージ”という印象を持っていたそうだが、それが、実際に会ってみたら意外とソワソワしていて、くだけたキャラクターだったという話をしていた。この日のMCでもその話は披露され、観客の笑いを誘っていた。

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