KinKi KidsからDOMOTOへ託された「硝子の少年」のバトン 言葉を尽くし丁寧に思いを伝え続ける二人の姿

 「あいつら改名して浮かれてる(笑)」――そう思われていそうで恥ずかしい、と笑う堂本光一に「いいですね、“改名して浮かれてるあいつら“」と笑い返す堂本剛。思っていたよりも元気いっぱいに録音されてしまった自分たちの声に、2人とも照れくささを隠しきれない。その和やかな空気感に、聞いているこちらまで思わず頬が緩んだ。

 長年親しまれてきた「KinKi Kids」から「DOMOTO」へと名前が変わることに、寂しさを感じた人も少なくなかっただろう。けれど、2人がこんなにも初々しく、新しい名前と向き合っている姿を見ていると、いつのまにかその寂しさよりも「これからが楽しみだ」という気持ちのほうが大きくなっていることに気づく。改名があったからこそ見える、こんな微笑ましい景色をこれからも見続けられるのではないか。そんな期待すら湧いてくる。

 7月22日放送のラジオ番組『DOMOTOのどんなもんヤ!』(文化放送)では、「KinKi Kids」から「DOMOTO」へ、いわば「これまで」から「これから」へと、バトンが受け渡されるような時間が届けられた。前回の放送で、2人は新たなタイトルコール「DOMOTOの」を現在の声で録り直し、10代のころから使われてきた「どんなもんヤ!」の音源と繋ぎ合わせることを決めた。あえて「どんなもんヤ!」の過去音源を聞き返さず、一発勝負で挑むという潔さを見せる。その姿勢がまたなんとも彼ららしい。

 また、テンションやピッチについて「こんな感じ」とすんなりイメージが一致していく様子には、さすがのコンビネーションが光る。「よし、じゃあ見事にバトンを渡しましょう、こうなったら」と剛が声を上げると、光一も「OK! 綺麗に、何事もなかったぐらいに」と気合いを込める。

 ところが、いざ声を録ろうというタイミングで、光一が思わず「せーの」と言ってしまい、剛から「ちょっと待ってよ!」と戸惑い混じりの笑いが起こる。「ちょっと違うやん。いつも、あの息吸って……」と、剛は首をかしげる。普段は、言葉を交わさずとも呼吸の音だけでタイミングを合わせてきた2人。そんな“無言の呼吸“のズレすら微笑ましく映るやりとりだった。

 すると光一は、「わかってる、わかってんねん。30年以上ずっと一緒にやってきて、何か言葉を一緒に発しなきゃいけないときなんて、『せーの』とかやらなくても、全然合うやん」と言い訳めいた口調で語り始める。そして続けざまに、「これがDOMOTOになったから急に合わなくなったとか、そんなん思われたらクソくらえですよ」と、半ば開き直りのように笑いながら言い放ったのだった。

 「何を言うてんの、さっきから」と吹き出す剛に、ようやく光一の口から「違う、いろいろ考えちゃったの!」と本音が飛び出した。突然「DOMOTOの」とタイトルコールのトーンで叫んだら、聞いている人が「わ〜」っとなりそうで、あえて「せーの」と合図を出すことで周囲も「くる!」と構えられるのかなと思ったのだそう。

 そんな光一の配慮からは、この改名に向けて彼がどれほどファンや関係者への気遣いを忘れずにいたかが垣間見えたように思えた。「一応考えてるのよ」という光一の言葉に、「あー、なるほどね。OK、OK」とすぐに理解を示した剛の姿にも、2人が同じ方向を見据えて歩んできたことがはっきりと伝わってくる。

 2人の間だけなら阿吽の呼吸で通じることも、多くの人たちに向けてとなると、そう簡単にはいかない。だからこそ2人は、時間をかけて、言葉を尽くしながら、自分たちがやりたいこと、そして大切にしている思いを丁寧に伝えてきた。その最たる例が、曲紹介にまつわるやりとりだった。

 KinKi Kidsとして歌ってきた楽曲を、「DOMOTOの」と紹介していいのか。それとも「KinKi Kidsの」と言うべきなのか。光一はその“曲振り“に頭を悩ませていた。

 「あの、ちょっと前に言った、その曲……」と慎重に言葉を選ぶ光一に、剛が「曲振り問題ね」とタイミングよく合いの手を入れる。そして「サラッと普通に(紹介したらいいのでは?)」と促す剛の言葉に、「サラッと普通にいきましょうか」と、光一もようやく意を決した様子だった。「じゃあ、DOMOTOの2人がKinKi Kidsの時代に歌っている……」と、どうにもサラッといかない光一に、剛が思わず「歌っている(笑)」とツッコまずにはいられなかった。「ふふふ、正しくはね」と言う光一に、剛も「正しくはね」と笑顔で同意する。

 そして最後は 「まあ、まあ、でも、DOMOTOの「硝子の少年」聞いていただきたいと思います」(光一)、 「聴いてください」(剛)と、2人で曲紹介をする様子が、彼らの歩みを象徴しているように感じられた。

KinKi Kids「硝子の少年」Music Video

 デビュー曲「硝子の少年」は、KinKi Kidsの“はじまり”の曲だ。その思い出の楽曲を「DOMOTOの『硝子の少年』」として2人でかけると、あらためてKinKi KidsからDOMOTOへとバトンが渡されたことを強く感じさせられた。どれほど言葉で説明を重ねるよりも、彼らが醸し出す空気感こそが、2人の思いを物語っているようにも思えた。

 「『この子たちはガラスだな』と思って」(※1)とは「硝子の少年」を作詞した松本隆が、2022年7月2日に放送された『NHK MUSIC SPECIAL』(NHK総合)で当時を振り返り語った言葉だ。ガラスと喩えたのは2人が「キラキラしてて壊れやすいもの」を持っている一方で、「この2人は簡単には割れそうにないな」と思わせたところからだそう。また松本は「〈“ひび割れたビー玉”というのはとってもきれいな感じがして。新しいものばかりじゃなくて、古いものもいいものも、きれいなものがたくさんある」とも話していた。

 “硝子”を思わせる純粋さと繊細さを持ちながら、世代を超えて人々の心を掴み離さないビー玉のような存在感を放ち続ける――。そんな永遠の“硝子の少年“である2人が、DOMOTOとして「硝子の少年」を歌う姿をあらためて見届けたくなった。

※1:https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/07/07/kiji/20220707s00041000675000c.html?page=1

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