Leinaが作り出すクリエイティブの核 初アルバムや韓国ワンマン、楽曲提供を経験した20歳のシンガーソングライターの今

Leinaが作り出すクリエイティブの核

 昨年の初インタビューから一年強、その間、シンガーソングライター・Leinaは1stアルバム『愛の産声 哀の鳴き声』のリリースと全国9都市を巡ったツアー、韓国でのフェス出演やワンマンライブを経験。また、SNSに投稿して反応が良かった楽曲をアコースティックギター一発録りで収録してデジタルリリースする「Mixtape」企画、増田貴久(NEWS)の1stアルバム『喜怒哀楽』収録の「キャンディ」では初の楽曲提供も行い、活動のレイヤーを着実に広げてきた。自身のクリエイティブでは楽曲のアートワークや映像など全てにおいてセルフプロデュースも行なっている。

 4月30日にリリースした最新作「medicine」が好調な中、カロリーメイトのWEB CMに「Moment」が起用されるなど、次々と刺激的な音楽を作り出すLeina。今回のインタビューではそれらの制作エピソードやその時Leinaが考えていたことなどを丁寧に取材し、クリエイティブの核を探っていった。(編集部)

「Leina」というブランドのために

――Real Soundでのインタビューは1年以上ぶりになります。この1年のあいだに、音楽に対する考え方もメンタル面も、いろんな変化があっただろうなと思って。

Leina:たしかに! 矢島さんってまじで深掘ってくるから(笑)。

――(笑)。この1年といえば、まずは1stアルバム『愛の産声 哀の鳴き声』のリリースがありました。アルバム制作期間中はどういうことを考えてましたか?

Leina:怒涛の制作期でしたね。1日に2曲、1週間で7曲とかレコーディングしてました。0歳から20歳までの人生を第一章として、20年生きてきた中で感じているものや見てきたもの、自分の色を表現したいなと思って、それを語るために新曲をたくさん入れました。『愛の産声 哀の鳴き声』というタイトルとテーマを決めたときに、「愛」と「哀」を半々くらいに入れたいなとも思って、そしたら「全部で15曲必要だ!」ってなって。自分の色を大切にしたいし、聴いている人も自分自身の色を大切にしてもらえるようにという想いと、個を尊重される世の中になってほしいという願いを込めたアルバムですね。

――最近の1stアルバムは既発曲で構成されることも多いけど、新曲多めでコンセプチュアルに作り上げたことに、Leinaさんらしいクリエイティブへの妥協なき姿勢が表れている気がしました。

Leina:人生で初めてのアルバムですし、10代最後のアルバムになったので、未熟さや初々しさも含めて今の自分にしか書けないものを書こうとは思っていました。これから何年音楽を続けられるかわからないし、何年生きられるかもわからないけど、5年、10年、20年経ったときに初心を思い出させてくれるようなアルバムにしたかったんですよ。今の自分ができるすべてを素直に吐き出した、純粋でまっすぐなアルバムになりました。

――アルバムのあとは「Mixtape」企画と題して、「恋に落ちるのは簡単で – demo」「猫みたいな彼女 -demo」をリリースしています。ギター1本の弾き語りで楽曲をリリースしたのは、どういう考えからでした?

Leina:最初に出した「恋に落ちるのは簡単で」は、家で20分とかでサビを作ったんですよ。掃除しているときに、アカペラで〈恋に落ちるのは簡単で/無邪気な笑顔にやられて〉って出てきて、すぐにギターを持ってコードをつけて、スッピンのまま動画を撮って、編集して、Instagramに載せたらたまたまバズって。そのあとスタッフが「やばい曲書いたね」「Mixtapeという企画どう?」みたいに言ってくれて、「最高じゃん!」って。自分でも「ギター1本と声」という面の魅力もあるとは思っているし、これは作ってすぐにSNSに出したのと同じ感覚で、このラフさのままサブスクにすぐ出したほうがいいなと思ったのでこの形でリリースしました。デモからシェアできるのは楽しいし、新鮮さを保ったままみんなに届けることができているので、大好きな企画ですね。

恋に落ちるのは簡単で - demo | Mixtape 01
猫みたいな彼女 - demo | Mixtape 02

――いい曲って、ギター1本で聴いてもよかったりするじゃないですか。Leinaさんはそういう曲を書けるシンガーソングライターだということを証明している企画だなと思いました。

Leina:わあ、嬉しいです。狙うとかなしに自然にパッとできた曲だったので、ここまで回ったことに自分でもびっくりしましたね。

――時間をかけて一生懸命練り上げたものより、20分で作ったものが世の中に広がっていく現象を経験して、どんなことを考えました? これは音楽の難しさであり面白さですけど、音楽に振り回されていますね(笑)。

Leina:振り回されるの、めっちゃ好きなので(笑)。……たしかに、音楽に振り回されてるな!(笑) だから音楽をやれているのかも。どんどん惹かれていますね。でも素の自分の気持ちを出して、それでいいグルーヴが作れて、しかもそれがちゃんと届いたというのは嬉しいです。聴いてくれた人は部屋で隣で歌っているような感覚で受け取ってくれたのかなって思います。最近「もっと好きにやればいいのに」って言われて、たしかにと思って。もっと自由でいるべきだなあって。自分で言うのもあれですけど、真面目というか、頭が固くなるんですよ。逆に制作に対する傲慢さが足りてないなと思って。考えすぎてるなあって。

――どういうことを考えすぎているなあって自分で思うんですか?

Leina:「キャッチーとは」「ポップスとは」「最近こういうのが流行っている中で、自分はどういうアプローチができるかな」とかをすごく考えちゃうんですね。聴き手のことをめちゃくちゃ考えるタイプなので、「みんなはどういう曲を聴きたいかなあ」とか。「自分のやりたい音楽とは」「自分のスタイルって何だっけな?」ということを最近めっちゃ考えていますね。でも「medicine」は自分のルーツを踏みながら、いわゆるバズも狙った作品だったので、SNSを通してたくさんの人に聴いてもらえてめっちゃ嬉しかったです。

――最新曲「medicine」は、MVの振付も手がけたゆーひさんが5月18日に投稿した2番Aメロの振付がバズっていて、UGCの本数は2万超え、現在TikTok音楽チャート11位まで上昇しています。素晴らしい結果がついてきていますね。

Leina:MVとSNSをダンスでうまく連動させることができました。最初は一旦サビでやってみようかなと思って、そのあとに2Aも投稿してもらって。ここまでダンスでちゃんとバズったことはなかったので嬉しかったですね。「ダンスでバズる」ということにトライできてすごくよかったなと思います。この楽曲でUGCを起こすために、スタッフともすごくたくさんコミュニケーションを取ったんですね。「このままだとバズは起こせないから、まずSNSのプロモーションスケジュールを出してくれ」って言って、打ち合わせで提案されたものに「いやそれじゃダメです」って伝えたり、「Leinaが振付をゆーひさんに頼みたいと言ってるのは、こういう理由や意図があって」という説明をしたり。そしたら完璧なスケジュールを作ってくれて、そのおかげでたくさん投稿もできたし、めちゃくちゃいい感じで動けました。チーム全体がパワーアップしたタイミングでしたね。きっと次のフェーズでは違う壁が出てくると思うから、SNSの壁はチームみんなで「余裕っす」くらいの気持ちでいたいというか。今チーム作りがすごく整ってきました。

――Leinaさんが目指しているようなドーム規模のアーティストになるためには、もちろんいい曲を作ることが一番大事だけど、チーム作りもすごく大事で。それを今の時点からわかっていて、チームリーダーをスタッフに委ねるのではなく自ら動いているのは素晴らしいですね。

Leina:いやあ、ありがとうございます(笑)。

――しかもそのコミュニケーションをするのって、だいぶ体力もいると思うんです。周りにいるスタッフもプロフェッショナルで、きっといい意見も言ってくれている中で、それに対して「でもそうじゃないんです」って言うのは楽じゃないし、孤独を感じることもあるだろうし。それをサボらずにやろうと思える気力やモチベーションはどこから湧いてくるものなんですか。

Leina:アーティストは一人でやってますけど、「Leina」というブランドであって。なぜなら、一人で立てるわけじゃないから。ゼロイチを生み出しているのは自分だけど、いろんな人がそれぞれの役割を担って、一人ひとりが一生懸命動いて、ようやく完成している。だから自分がチームを俯瞰して見て、たとえば「武道館」「アリーナ」「ドーム」という大きな夢とか、直近でいえば「『medicine』をバズらせたい」という目標から逆算して、「Leinaたちは今ここに立っていて、これを叶えるためには今これが足りない」とかを常に考えて、それをシェアしたり、できていたら褒め合ったり。一応、勝手ながら全体の舵を切っているつもりではありますね。それをやらなきゃダメだなと思っていますね。結局、自分の顔と名前で動いているわけだから、チームを動かすことも全部、自分の役割だと思っています。

――Leinaさんと同世代のアーティストとよくお仕事させてもらっていますけど、そこまで気づいて行動できる人はいないですよ。社長や経営者のようなマインドも持ち合わせていますよね。

Leina:それよく言われます(笑)。こだわりは強いし、できてなかったら「やってくれ」って言うときは言うけど、みんなで目標まで行きたいと思ってるから、「Leinaがこれを言うのはわがままじゃなくて、むしろみんなのためになる。このこだわりもブランドのためだから」というのがみんなの共通認識としてあるし、信頼関係を築くために日頃のコミュニケーションをめちゃくちゃ重ねているつもりです。日々ソングライティング面でも技術面でも成長しつつ、チームも一緒に成長しつつ、っていう感じですね。

――なぜLeinaさんはそこまでのことを意識して行動できているんですか。

Leina:貪欲なんですよね。「絶対にやる!」みたいな(笑)。そのために何が必要かっていう、逆算の思考回路から出た公式図が頭にびっしり入っているから、常にそれと向き合って戦っていますね。ライブ後とか、毎回ほぼ反省して落ち込んでますよ。みんなが「全然大丈夫だったよ」「Leinaは自分のハードルが高すぎる」みたいに言ってくれるんですけど、自分の中では「ああダメだったな」みたいな感じですね。

――その精神性はもちろん制作面にも通ずるものだと思うんですけど、「medicine」は自分のルーツを大事にした曲を作ろう、というところから書き始めた曲ですか?

Leina:そのときもまたちょっと落ち込んでいて。忙しくていっぱいいっぱいになっていたときに、マネージャーから「握手は手当てだよ」って言ってもらって、実際に握手されたんです。それで本当に心が軽くなったし、その優しさにすごく安堵したというか。彼女はその言葉を言ってもらったことがあって、ずっと大事にしていたらしくて。大切な言葉とか好きな人って「薬」だなと思って、「愛は薬」というテーマから書いた楽曲ですね。サビも洋楽っぽいものができたなと思って、自分のルーツにある2000、2010年代のビルボードに並んでいたようなジャスティン・ビーバー、カーリー・レイ・ジェプセン、マルーン5とかのUSポップスの音を持ってきたアレンジにしたいなと思ってましたね。自分が小中学生のときに聴いていたルーツを辿って、そこをJ-POPに昇華したらどうなるかなっていう、自分なりの化学反応を考えて作りました。

――今一番SNSでバズっている2番のAメロは、どういう意識で書いたものだったんですか?

Leina:全体的にキュートで、ハッピーなポップスを書きたいなと思ってました。それもきっとTikTokと相性がいいだろうし。2AはTikTok向けに、女の子が可愛い問いかけをしているのも合うなと思いつつ、振付も付けられるなと思いながら作ってましたね。1番の頭(〈「愛は薬」君の口癖に/つられちゃっては服用してる〉)はもともと違って〈いとも簡単に 僕を救う/そんな君に 何がしてあげられる〉というリリックで、それも好きだったんですけど、ギリギリまで悩んでこっちのほうがわかりやすいし可愛いし今っぽいかなと思ってこれにしました。

――1番のAメロは、メロディの跳ね具合と語尾のニュアンスがめちゃくちゃいいですよね。

Leina:嬉しい! 面白い歌い方でキャッチーさを作ることが好きで。マイケル・ジャクソンもこういう歌い方をやるじゃないですか。「食わず嫌い」のときもやったんですけど、今回またそれをやりましたね。SNSだけじゃなくてサブスクもちゃんと回って数字が出ているのが、めっちゃ嬉しかったです。

――SNSでバズってもサブスクの再生数が上がらないケースもあるけど、そういう結果が出ているのは、フル尺で何回も聴きたいと思えるいい曲であるし、Leinaさんという存在にファンがいる証拠ですよね。

Leina:ありがとうございます。いやあ、嬉しいです。

――ラスサビのコーラスの重ね具合もよくて、そこもカタルシスを感じさせてくれるし。

Leina:いいですよね! その部分については、一回レコーディングを終えたあとに、スタッフの1人が「ちょっといいですか」みたいな感じで言ってくれて、そこからまた1、2時間くらいレコーディングしました。歌のみのレコーディングだけで8時間くらいやってましたね。

――そうやって妥協のないクリエイティブがあってこそ、思うような結果がついてきたんですね。

Leina:リズム周りもこだわりましたね。最初はもっと打ち込み系の音で、それもめっちゃかっこよかったんですけど、それだとおしゃれ、クールになるんですよね。ソウルフルにはならないというか。2010年代のあのバンドサウンドのほうが自分の中ではキャッチーで、「もっとこう行きたいんだよね」っていう色々な話をして、音色を変えました。スネアの余韻のハイの倍音とかまでこだわって作りましたね。

――それひとつでグルーヴが変わりますもんね。歌詞に関してもうひとつつっこむと、〈I got you, you want me?/いつか家や車だって!〉が、相手に深い愛を捧げるLeinaさんらしい言い回しだなと思いました。この曲に限らず、Leinaさんのそういう人間性が滲み出ちゃうのが、Leinaさんの愛を歌う曲の特徴だなと思って。

Leina:献身的ですよね(笑)。そうなんですよ、愛情深い人間なんですよ(笑)。でも愛をもらっているから、愛を表現できると思うんです。人からもらったことがあるから、人にできるのだと思う。そうやって言ってもらえるのは、愛されてきたという意味でもあるから、すごく嬉しいです。

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