PAELLAS『sequential souls』インタビュー 自由度が増すことで洗練されていく音作り

PAELLASの“音作り”に迫る

音像から生まれる歌詞ーー特定の時代感を出したくない(MATTON) 

ーーMATTONさんは賑やかな場所より自分一人の時に染み込んでくるような音楽が好きだと以前おっしゃっていて。歌詞の内容もそのニュアンスを保ちつつ、変化してきていると思います。

MATTON:より口語的な、会話的な言葉の使い方、全部ひらがなでもいいんじゃない? っていう感じは意識してますね。『D.R.E.A.M.』の頃は英語もまだあったし、『Yours』の頃とか、その当時も東京って都市に住んでますけど、もともと大阪の地方都市とすら言えないぐらいの田舎に暮らしてたんで、完全にお上りさんなんで。そういうお上りさんとして東京に暮らすーー別に悪い意味ではないですけど、疎外感とか。東京ってそういう人たちが集まってる場所だと思うのでっていうのがイメージにあったんです。だけど今回は音の質感からイメージが湧いて、影響を受けてっていうのもあるんですけど、もっと山小屋の中で暖炉の火がパチパチいってる中で会話してる、みたいな感じです。

ーー曲の音像がそういう歌詞を生んだと?

MATTON:そうですね。よりいい意味で、1対1なのか一人なのか、閉鎖的な親密さのある空間での話、言葉、みたいなイメージですね。だから「スマホ」とか絶対使わないですね、言葉としては。あんまり特定の時代感を出したくない。衣食住とあとは普通に生きることに関しては30年、40年前の親の世代から今の世代の人まで変わっていないことだと思うので、なるべくその範囲の中でーーまぁ若い人たちの言葉はどんどん変わっていくと思いますけど、そういう範囲に入らないような、すごくオーセンティックな言葉、口語で書きたいなとは思ってますね。

ーーそれはなぜなんでしょう?

MATTON:PAELLASの音楽って現行の世界の音楽の流れとのリンクで語られがちなんです。日本の中だとシティポップだとか。実際シティポップってくくりに入れられる人たちは基本的には誰もシティポップだと思ってないんですけどね。そういうくくりがある中で、自分たち的にはオーセンティックなものというか。もちろん、今生きてるので今なんですけど、一番ナチュラルな言葉の選び方をしてるつもりというか。

ーーなるほど。

MATTON:PAELLASは極端なコンセプトを掲げてやってないバンドだと思うので。別にビジュアルの見え方だったり、ライブのやり方だったり、こう、特定の思想だったりとかコンセプトを設けないんで。なるべく普段着のままというか、あんまりそこをフォーカスしてもらえなくて、なんかオシャレぶってやってるみたいに言われちゃうのも仕方ないかなと思いつつ、「違うんだよ」って思いながらやってますけどね。

ーー「Orange」の歌詞の〈君の指に宿る無垢が 貝殻を集める仕草〉という部分がすごく新鮮に感じたのですが、ここで使われている言葉にもオーセンティックな印象があります。

MATTON:「Orange」の歌詞が今までで一番書き進められなくて。松本隆さんの小説を読んで、かっこよくいうとインスピレーションですけど、それで書けた歌詞ですね。季節が特定されちゃうので季語も入れないようにしてたんですけど、「Orange」から季語も入れるようになった。ま、日本だからっていうのもあるかもしれませんね。季節がある国なので、そこは別にどんどん触れていってもいいかと。

 出尽くしてるからこそできる“ストリーミング時代の新しい音楽”

ーー現行の海外の音楽とリンクしてるのは当たり前だということではあるんですが、最近逆に世界で明確なトレンドがなくなってる感じもするので、その辺をどういう風に感じていますか?

Ryosuke:でもいまだにフランク・オーシャンは土台にはある。

「Thinkin Bout You」

Anan:うん。そこはもちろんあるけど、もっといろんな要素を入れたい、雑多に入れたいと思ってるかもしれない。

bisshi:具体的にいうと自分たちの音楽性を共有するっていうことでも、Spotifyを使っているんですけど、今、好きな曲が多すぎて全くプレイリストを管理できなくなってきて(笑)。流れてくる音自体に自分で文脈を感じて自分の曲を作るっていう風になったのかなって感じはしますけどね。

ーー面白い現象ですね。

bisshi:うん。ストリーミングが完全に普及して、自分の中でカオスになった感じ。

MATTON:その中でちゃんと自分たちの色、自分たちの素材の色がわかってる人たちだけが残るんじゃないですかね。PAELLASの話でいうと、昔を辿ると「こういうのがやりたい」という思いが先行していた時期も多分あると思うんですけど、今はPAELLASのムードやカラー、バランス、テンションがわかった上で曲作りも始まってるので。

bisshi:だからこそ出てくるものしか出てこなくなったんだね(笑)。

ーー追いかけたり並走していたものの中に入ってるということなんでしょうね。世界中の音楽を作ってる人が。

Anan:なんでも聴けることによって出尽くしてるっていうのが体感的にありつつ、出尽くしたから絶望、ではなくて、出尽くしてるからなんでもできる。

MATTON:ゼロからのスタート?

Anan:そう。出尽くしてるからこそなんでもできるし、どこからアーカイブをとっても、それは新しいものの感覚なので、それはストリーミング時代の新しい音楽なんだと思いますね。

Ryosuke:そうなるとより一層それぞれのプレイヤビリティが大事になってくる。僕らはプレイヤーとしての気持ちもめちゃめちゃ強いんで。そういうのが一つ一つのフレーズに変わっていくんじゃないかと思いますね。

(取材・文=石角友香/写真=林直幸)

PAELLAS『sequential souls』

■リリース情報
『sequential souls』
発売:6月5日(水)
価格:¥2,800(税別)
<収録曲>
01.in your eyes
02.Horizon
03.Ride
04.mellow yellow
05.searchlight
06.[wayhome]
07.just like
08.Crystal
09.airplane
10.Weight
11.Orange (new mix)

PAELLAS – sequential souls Teaser

■ツアー情報
『PAELLAS “sequential souls RELEASE TOUR”』
6月15日(土)札幌SPiCE
6月16日(日)仙台MACANA
6月28日(金)金沢AZ
6月29日(土)名古屋JAMMIN’
6月30日(日)大阪Music Club JANUS
7月6日(土)東京LIQUIDROOM 
7月12日(金)福岡INSA

■関連リンク
PAELLAS Official Web Site
PAELLAS Official Instagram
PAELLAS Official Twitter
PAELLAS YouTube Official Channel

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