ペンギンラッシュが体現する新たなポップミュージック “多様性”と“結合”によるJ-POPの可能性

ペンギンラッシュが体現する新たなポップミュージック

 2曲目の「アンリベール」は、フュージョンのテイストを前面に押し出した楽曲。繰り返される転調、緻密に構築されたアンサンブルなど相当にテクニカルなナンバーなのだが、耳障りはとてもシンプルで、やはり誰もが楽しめるポップナンバーとして成立している。The Internetやサンダーキャットあたりの先鋭的なアーティストの雰囲気も感じられるが、主体はあくまでもJ-POP。このスタンスもまた、ペンギンラッシュの大きな魅力だ。

ペンギンラッシュ - アンリベール (Official Muisic Video)

 さらに特筆すべきは、七つの情をテーマにした歌詞。余計な感情を抜きした(肉体的な)慰め合いを描いた「契約」、SNSの発達により、何が真実かまったくわからない世界を生きざるを得ない我々の姿を投影した「能動的ニヒリズム」、“幸せはすぐそばにあった”という普遍的なメッセージをストレートに表出した「青い鳥」。喜び、怒り、哀しみ、楽しさ、欲望、妬み、そして希望。あらゆる感情を否定することなく、詩的でシンプルな言葉で描き出すペンギンラッシュの歌の世界には、聴き手の心を揺さぶり、解放する効果が宿っていると思う。

 ジャンルと感情の壁を超えながら、新たなポップスの形を提示し続けるペンギンラッシュ。圧倒的な独創性と“聴けばすぐにわかる”シンプルな手触りを両立させた4人の音楽は、(ともすれば内向きになりがちな)J-POPシーンに新鮮な刺激を与えることになるはずだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
2ndアルバム 『七情舞』
発売:6月5日(水)
価格:¥1,800(税抜)
配信はこちら

<収録曲>
1. 悪の花
2. アンリベール
3. 契約
4. 能動的ニヒリズム
5. モノリス
6. 晴れ間
7. 青い鳥

■インストアライブ情報
6月9日(日) 愛知 名古屋パルコ西館1FイベントスペースST 12:00
内容:ミニライブ+サイン会(来場者全員ライブ観覧可能)
詳細

■ライブ情報
ワンマンライブ『Rush out night 2019』
8月18日(日)名古屋 新栄APPLO BASE
OPEN 17:30/START 18:00
チケット6月1日発売

『七情舞』東名阪レコ発ツアー “七情に舞う”
6月27日(木)名古屋 新栄APOLLO BASE
OPEN 18:30/START 19:00
w/けもの
チケット発売中(イープラス)

7月5日(金)東京 代官山SPACE ODD
OPEN 19:00/START 19:30 
w/集団行動、showmore
チケット発売中(イープラス)

7月12日(金)大阪 心斎橋CONPASS
OPEN 19:00/START 19:30 w/Lucky Kilimanjaro、RAMMELLS
チケット発売中(イープラス)

オフィシャルサイト

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