ももいろクローバーZの真髄は発想の面白さと懐の深さにあり 若手ディレクターMV企画から考える

 また、参加しているミュージシャンの顔ぶれも興味深い。職業作曲家だけではなくGARLICBOYSやGLIM SPANKY、CHAI、志磨遼平といったバンドシーンのアーティストが目立つ。ロックフェスにも出演経験のあるももクロらしい人選だ。

 3年前に3rdアルバム『AMARANTHUS』と4thアルバム『白金の夜明け』を同時発売した時も、その制作陣の豪華さには驚かされたが、今の時代、誰が書いたか・誰が録ったか・誰が撮ったか、といった裏方の情報はコンテンツを楽しむ上できわめて重要なファクトとなっている。2010年代のアイドルブームとそれに伴うカルチャー全体に巣食うある種のデータベース消費的有りようを象徴するリリースであった。

 そして今回の5thアルバム。見方によっては非常に現代的な企画とも言えよう。シングル曲をひとつも収録せず、すべて先行配信曲か新曲で構成されている。その代わり主役はあくまでMVだ。ネット時代に相応しい企画ではないか。収録曲にはすべてMVをあてがいYouTubeでフル公開していたデビュー以前の水曜日のカンパネラの面影を連想したが(その中の「桃太郎」がヒットして一躍メジャーシーンへと駆け上がった)、まさにその水カンの楽曲を手掛けているケンモチヒデフミも「天国のでたらめ」の編曲で関わっている。

【ももクロMV】ももいろクローバーZ『天国のでたらめ』Music Video

 若手を積極的に起用し、現代的、かつ、”自由”な構えを見せるももクロ。今の彼女たちは何にでもトライできそうだ。こうした”受け皿”から火種となって、今後新たなムーブメントを起こすかもしれない。そんな期待感に溢れたアルバムリリースである。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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