輝夜 月、月面を舞台にした前人未到のアドベンチャー 『ZeppVR2』レポート

輝夜 月、『ZeppVR2』レポート

 VTuber四天王のひとりとして人気を集め、昨年7月SACRA MUSICからメジャーデビューを果たすと、8月には世界初のVRライブ『輝夜 月 LIVE@ZeppVR』を開催。今年に入っても「日清焼そばU.F.O.」のマキシマム ザ ホルモンとのコラボ、CM「マキシマム ザ 輝夜月」に起用されるなど相変わらず目覚ましい活躍を続けるバーチャルタレント、輝夜 月。

 5月1日、彼女の2度目のVRライブ『輝夜 月 LIVE@ZeppVR2』が開催された。このライブは新元号令和の初日に開催された記念すべきライブ。VR空間プラットフォーム・clusterでの体験に加えて、東京のZepp DiverCityと全国21都市35劇場の映画館でもライブビューイングが行なわれ、各地から彼女のファン=月fam が声援を送る一夜となった。今回はZepp DiverCityのレポートをお届けしたい。

 VRライブとは異なるリアル会場でのライブビューイングの特徴は、各地からファンが一堂に会して生まれる熱気溢れる雰囲気。会場のZepp DiverCityには10代~20代と思しき男女を中心に様々な年齢層の観客が詰めかけ、中には輝夜 月のファッションを真似した女の子の姿もある。同性が憧れるファッションアイコンとしても支持されていることを伝えるような雰囲気だ。また、過去の楽曲はすべて元Pay money To my PainのPABLOが作曲・プロデュースを担当し、歌詞は自身で担当。陽気でハイテンション、チャーミングで自由奔放な彼女らしい予測不可能な楽曲群は、音楽的にも非常にユニークな要素のミクスチャーになっている。

 まずは前回の『輝夜 月 LIVE@ZeppVR』の会場でもあった月面と中継が繋がり、前説を担当するエビーバーとパブロッコリーが登場。会場のZepp VRが崩れ去っていることが明かされ、悲壮感が会場を包む。しかし心配は無用。実はこの日のために新たな会場が用意されており、エビーバーとパブロッコリーに促されて視線を移すと、ネオンカラーに輝く巨大なタワーが出現する。このタワーこそが、今回の新たなライブ会場だ。観客から安堵の声と歓声が上がる中、紫色のエビフライ集団=LOWGUYSが出現してエビフライアバターの観客たちに襲い掛かり、一行は彼らから逃げるように会場となるタワー内部へ。そう、今回のライブは、「令和/新世界に行きたくない者たち=LOWGUYS」を音楽の力で振り切って、世界最長のタワーより1センチ高く設計された会場の頂上=新時代を目指して各階層でライブを繰り広げる、月面を舞台にした前人未到のアドベンチャーになっているのだ。

 とはいえ、一行がタワーに逃げ込むと、会場内はすでにLOWGUYSの巣窟と化していて、観客は早々大ピンチを迎えてしまう――。そこにロケットが音を立ててやってきて、輝夜 月が登場! デビュー曲「Beyond the Moon」でライブをはじめると、Zepp DiverCity会場が早速輝夜 月カラーの3色のペンライトで埋め尽くされる。Beastie Boys辺りを彷彿とさせるヒップホップ・ビートに乗せて〈あーあー/マイクチェックマイクチェック〉という歌い出しではじまるこの曲は、ライブ開始の雰囲気をそのまま綴った歌詞を経て途中でいきなり疾走感溢れるギターロックに変わり、サビでまた雰囲気を変えてキュートなメロディが飛び出す、プログレッシブな構成のポップチューン。数曲分の要素をぎゅっと圧縮した彼女らしい雰囲気の楽曲だ。また、輝夜月自身のパフォーマンスもキレッキレで、登場した瞬間に会場の空気がガラッと変わる華やかなスター性も彼女ならでは。〈まだまだいきまーす!/疲れてないよね?!/全然歌詞が伝わらない〉〈下手でも良し!(よし!)/変でも良し!(よし!)/最終的に良しなら良し!〉など、自身が手掛けた独特の言語感覚を持つ歌詞などが生むユニークな雰囲気で観客を一気に熱狂の渦に巻き込んでいった。

 ここで一度MC。「おはよー! こんちわー! こんばんわー! おやすみー! おきてええええええええ!!!」というお馴染みの挨拶を観客と一体となって決めると、その後も観客とのコミュニケーションを楽しんだり、ちょっかいをかけたりと、早速自由すぎる振る舞いで会場が爆笑に包まれていく。普段の動画でもそうだが、彼女の最大の魅力は、「楽しい!」を本能的に察知して、そこに向かって最短距離で突き進むエンターテイナーとしての圧倒的な嗅覚。気づけば観客との距離が一気に縮まって、会場に不思議な一体感が生まれていった。

 以降はタワー内を上昇しながら、サイバースペース感満載のステージで「パリピッピしてる~?」という歌い出しを持つ「Dirty Party feat. エビーバー」を披露。RUN DMCとAeroSmithの「Walk This Way」にも通じるハードロック/ブルース由来のギターリフをループさせた問答無用のパーティーチューンで観客を熱狂に誘うと、終盤にはパリピメガネを装着して会場のボルテージをさらに上げていく。とはいえ、この曲を筆頭に、実は彼女が書く歌詞にはシリアスで等身大の思いが綴られた部分も用意されていて、そのギャップも大きな魅力になっている。つまり、ひとつの楽曲の中に何層にも深みが詰まっているのだ。

 その後、さらにタワーを上昇すると、辿り着いたのはパステルカラーを基調にしたキュートな雰囲気のステージ。ここで披露された「Dance with Cinderella!」は、以前インタビューで「初めて物語的な感じで歌詞を書いているんです」と語ってくれていた未発表の新曲だ。当日聴いた限りでは、ハイハットが効いた四つ打ちのダンスロックを基調にしたキュートな楽曲で、〈見つめ合う視線で/highになって踊ろう〉という歌詞などにはラブソングのような雰囲気を感じる瞬間も。〈こっち向いてこっち〉という激キャッチーなフレーズのリフレインや、途中手でハートを作る振りつけにも曲の魅力が凝縮されていた。続いて水中を模したステージに到着すると、エビフライ風の衣装に身を包み、水泡がぶくぶく上がる中でいきものがかりの「じょいふる」をカバー! サビのダンスも完ぺきにこなしてキュートな魅力が充満し、パフォーマンス後には力を使い果たしたのか、それとも溺れかけてしまったのか、バタリと倒れて観客から声援が飛び、ライブはいよいよクライマックスへと突入していく。

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