VTuber 輝夜 月が語る、音楽活動への思いと新たな挑戦「歌詞を書く楽しさが分かってきた」

輝夜 月、音楽活動への思いを語る

 キズナアイやミライアカリ、電脳少女シロらとともに「バーチャルYouTuber四天王」のひとりと呼ばれ、自由奔放で明るい性格と個性的な声で人気を集めるバーチャルタレント、輝夜 月(かぐやるな)。彼女が最新配信シングル「NEW ERA」をリリースした。この楽曲は、昨年8月に世界初のVRライブとして開催された彼女のデビューライブ『輝夜 月 LIVE@Zepp VR』に続く2度目のVRライブに向けて制作された自身3曲目のオリジナルソング。これまでも先駆者のひとりとして様々な可能性を切り開いてきた彼女が、新元号を迎えて最初の一日=5月1日に開催される2度目のVRライブにあわせ、新たな時代を“みんなで切り開く”決意を歌ったものになっている。彼女の音楽活動のこれまでと、新曲に込めた思いを聞いた。(杉山仁)

最初は歌えなくて、めちゃくちゃ時間がかかった

ーー月さんは最初に投稿した動画の中でも、好きなものとして「歌」を挙げていましたよね。普段はどんな音楽を聴いているんでしょう?

輝夜 月:RADWIMPSさんと米津玄師さんが好きです! 最近は特に、歌の解釈をするのが楽しいです。最初は曲調から好きになって、そこから歌詞も見はじめるっていう。歌詞が好きな曲だと、RADWIMPSさんなら「有心論」とか、米津さんなら「灰色と青(+菅田将暉)」とかですね! 最近は自分でも歌詞を書くようになったので頑張ってます(笑)。

ーー活動をはじめた頃から、アーティストデビューしたいと思っていたんですか?

輝夜 月:いや、全然思ってなくて、普通に歌が好きなだけだったんですよ。でも、ソニーさんが曲を出してくれました。優しい(笑)。最初は恥ずかしすぎて、1曲目のオリジナル曲「Beyond the Moon」を録音するときも、本当に歌えなくて、めちゃくちゃ時間がかかったんです。あのときは何回か録ってみて、「これはやばいぞ」と思って。「こんなにモジモジしてたらいつまで経っても終わらないな……」と思って、頑張って歌いました。

ーー「Beyond the Moon」は、2018年8月の一度目のVRライブのために作った曲ですよね。世界初のVRライブでもあった、あのライブはどうでしたか? お客さんは月さんのライブオリジナルのエビフライアバターになってバーチャル空間の会場に向かいました。

輝夜 月:そうなんです! それに、エモーション(絵文字)でお客さんがエビを出せるようになっていて、月がお客さんに声をかけたら、みんながエビを出して応えてくれて。あれがめっちゃ面白かったです。

ーーお客さんがエビを出すと、それに合わせて会場のエビーバーがどんどん大きくなっていくんですよね。まさにエビフライに囲まれたライブでした(笑)。

輝夜 月:あはは!! 月にはチキンナゲットにしか見えなかったですけど……!!

ーー(笑)。途中、月さんがエビフライに乗って空を飛ぶ瞬間もありました。

輝夜 月:楽しかったです!! でも、実は高所恐怖症で、練習中はすごく怖かったんですよ。最初は目をつぶってました(笑)。

ーーあのライブ中、特に思い出に残っているのはどんなことですか?

輝夜 月:やっぱり、MCでみんなを前にして話したことですね。あのとき「初めてみんなが見れたなぁ」って思ったんですよ。それがめっちゃ楽しかったです!

ーーアーティストデビューするとは思っていなかった、と考えると、ライブまですることになって、きっと不思議な感じですね。

輝夜 月:いやぁ、本当ですよ。本当に……(緊張しすぎて)こわい!!! でも、みんなが優しいのでライブも楽しんでできました。

ーー月さんのアイデアが採用された部分も結構あったんですか?

輝夜 月:たとえば、カバー曲とか!

ーー椎名林檎さんの「幸福論」ですね。

輝夜 月:「『幸福論』を歌いたいです」と言ったら、カバー許諾を取ってくれました。「『幸福論』のカバー許諾……! すごい!!」って(笑)。「幸福論」は、もともと大好きな曲だったんです。「幸せは人それぞれだよなぁ」って思うので。

ーーこのライブで披露した「Beyond the Moon」を作ったときのことも教えてください。作曲はPABLOさん、作詞は月さんで、ヒップホップ風のパートもロック風のパートもあって……月さんの動画のように曲調もテンポも1曲を通してどんどん変わる曲ですね。

輝夜 月:曲はPABLOさんにお任せしたんですけど、そうしたら、何かすごいのがきて(笑)。そこに「詞を書いて」と言われたんで、最初は「どうやって書くの?!」という感じでした。その頃は本当に初心者で、「何を書けばいいか分からん……!」という感じで。とりあえず、月のキャラソンみたいにならないようにしよう、って思ったんです。「この曲で初めて知ってくれた人にも共感してもらえる曲にしよう」って。でも、それは結局難しくて(笑)。一回挑戦したんですけど、ちょっと無理でした(笑)。

ーーかなりライブに映える歌詞になっていますよね。〈あーあー/マイクチェックマイクチェック〉からはじまる序盤のパートも最高でした。

輝夜 月:ちょっとぶりっ子しちゃいました(笑)。「TikTokで使ってほしいな」と思っていたんです。みんなが真似してくれそうな歌詞にしたいと思っていました!

ーーこの曲を聴いてくれた人が、色んな風に遊んでくれたらいいな、と?

輝夜 月:そうです!! レコーディング中は難しすぎて、死ぬかと思いました(笑)。でも、今思えば、「もうちょっと頑張ればよかったなぁ」と思うんですよ。もうちょっと考えればよかったなぁ、って。このときはまだ、歌詞を書くのが恥ずかしかったんです。自分の気持ちを書くのはちょっと難しかった。

ーーでも、実は曲の最後に月さんのシリアスな一面が見えるものになっていますよね。〈人はいつでも平等で。/いつもあの子は幸せそうで/きっとあの子も泣いてる/辛いと思う事でもきっと、/幸せに変えてるのだろう〉というところが印象的でした。

輝夜 月:月は本当はネガティブなんで、そこが出ちゃった(笑)。前に取材でも言ったんですけど、この歌詞を考えたとき、友達に言われたんですよね。あれ、何だったかなぁ……?

ーー「成功してる人は弱さを見せないから、成功しているように見える」ですね。

輝夜 月:そう、それ!!!

ーーいや、自分で言ってくださいよ! 自分のこと……!!(笑)。

輝夜 月:(笑)。「月ちゃんはいつも嬉しいことしか言ってこない。『あのときよかったよ』ということしか言ってこないから、成功してるように見える」って。そう言われて、成功はしてないんだけどなぁとは思いながらも、そう見えてるなら嬉しいなって思ったんです。パチンコでも、「いつも勝ってるな」という人って、勝ってるときしか言わないと思うんですよ。「それと同じ!」って言われたことがあったんです。

ーーつまり、月さんも色んな気持ちを抱えている、ということですね。それに、この曲の最後の歌詞〈遠い世界の君と思い出作り/(中略)あなたを照らしたい!/この月を見ててね〉には、応援してくれる人たちへの気持ちも歌われていると思いました。

輝夜 月:はい! 月もその最後の歌詞が一番お気に入りです!

ーー途中〈インスタ映えたらなんでもいい!/何でもいー!どーでもいー!!〉と言っている曲でもありますが(笑)、一方でみんなここで感動してるんじゃないかなぁ、と。

輝夜 月:あははは! 嬉しい!!

ーーそもそも歌って、普段は言えないことが言えるような部分がありますよね。

輝夜 月:そうそう! あるんです! それに、歌ならめちゃくちゃぶりっ子に歌ってもいいじゃないですか。「それ、いいなぁ……」って思いました(笑)。

ーー今は作詞をする楽しさも感じていますか?

輝夜 月:最近はめちゃめちゃ感じていて、歌詞を書く楽しさがやっと分かってきました。実はまだ出てない曲では、初めて物語的な感じで歌詞を書いているんです。小説家になった気分でした。

ーーおお! もしもそれを聴いた人から「小説家デビューしませんか?」と話がきたら……。

輝夜 月:(決定したかのように)やっったぁぁあああああーーー!!!!!!!!!

ーーいやいや、まだ何も決まってないです(笑)。

輝夜 月:もともとネガティブなので、その曲の歌詞は最初出したときはめっちゃ暗かったんですよ。そうしたら、大人の人たちに「えっ、暗いね……」って言われて(笑)。そこからちょっと変えました。めちゃめちゃかわいい曲になったと思いますよ。全力でぶりっ子しました!

ーーそれは楽しみです。そしてオリジナル曲の2曲目は、月さんの動画にも出てくるエビーバーをフィーチャーした「Dirty Party feat. エビーバー」でした。この曲は曲調も歌詞も「Beyond the Moon」以上にぶっ飛んでいて、まさに月さんならではの曲だと思いました。

輝夜 月:もともと、「飲み会やパーティーで、みんながコールするような曲にしたいです」って言ったら、PABLOさんが曲を作ってくれたので、歌詞もその雰囲気を意識しました。

ーー飲み会やパーティーのコール曲のイメージだったんですね。それで歌詞も、コーラやポテトチップスが出てくるものになっている、と。

輝夜 月:ちょっとダサかっこいいパーティーですね。「ダサいなぁ。まぁいっか!!!!(笑)」って。

ーー(笑)。この曲は、歌うのは相当難しかったでしょうね。仮に自分が「カラオケで歌って」って言われても、難しそうですもん。

輝夜 月:……いや、歌ってくださいよ!!!! この曲は〈や~なことわすれ~て〉のところがすごく難しかったです。このときは恥ずかしさを取っ払って頑張りました! 大人たちも色んな時間がある中で集まってくれてるので……「モジモジしていてはいけない」って(笑)。

ーーこの曲も、途中でちょっとシリアスな月さんの歌詞が出てきますよね。いい意味ですごくふざけている曲だけに、やっぱりこういう部分ですごくグッときてしまいます。

輝夜 月:わー! よかった! じゃあ、これからもそういうのを取り入れていきます!!

ーーさっきも言いましたが、ライブを観ても、みなさんきっと感極まってると思いますよ。

輝夜 月:嬉しいです。この曲を書いたときは、「夢を叶えても、もっと先があるなぁ」と思っていたんです。それで、「終わらないなぁ。辛いなぁ」って思ってて。

ーー続けることの難しさを実感していたんですね。何でも、動画投稿に飽きてしまっていた時期もあったそうですね。

輝夜 月:そうなんです。本当に「やりたくない」って思っちゃって、その頃は動画も観直さなくなっていたし、そもそもYouTube自体も開かないような感じでした(笑)。

ーー活動を続ける中で、考えすぎて楽しむことが難しくなってしまっていた……?

輝夜 月:そうです(笑)。それで、「飽きた」って言ったらどうにかなるかな、と思った時期があったんです。それで実際に言ってみたら、どうにかなって(笑)。「またやる気が出たらやればいいよ」って言ってもらいました。でも、そこから去年の12月頃にまた気持ちが変わったというか。その頃、何気なくだったんですけど、動画やTwitterにあるみんなのコメントを読みにいったら、色んなリスナーさんが「何でもいいから上げてほしい!」「待ってる!」って書いてくれていたんです。それで……「あ、何でもいいんだ?!」って(笑)。そこで初心に戻った気がしました。「もともと動画投稿をはじめた頃って、何も考えてなかったなぁ」って。その時のことを思い出して、今はもう、何も考えずに動画を上げてます(笑)。

ーー思えば月さんの場合は、最初の挨拶動画も、挨拶になっているのかなっていないのかよく分からない雰囲気でしたよね。でも、それに多くの人が魅力を感じたと言いますか。

輝夜 月:自分でも「もともとはやりたいことだけやってたなぁ」って思ったんです。そこから続けていくうちに、ハロウィンやバレンタインにあわせて「こういうことがあるから、こういう動画を出さなきゃ」と考えすぎてしまって。それで「何で合わせなきゃいけないんだよ!!」って思ってしまったのが、つまらなくなってた理由だったのかも。

ーーだからこそ、「また何も気にせず、自分のやりたいように楽しくやろう」と。

輝夜 月:そうなんです。無理に流行りに乗っからない(笑)。それは逆にストレスになっちゃう。

ーーもう一度大切なことを見つめなおしたんですね。今年に入ってからは、「日清焼そばU.F.O.」とのコラボCMも放送されています。これも業界初!バーチャル生記者会見含めて楽しそうでした。

輝夜 月:もう、めっちゃ楽しかったです!!!!!

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