Nissy(西島隆弘)を“ポップスター”たらしめる6つの理由 5周年記念ドーム公演から考える

Nissyを“ポップスター”たらしめる理由

 3時間ぎっしりのエンターテインメントも特筆すべきことのひとつだろう。風船と噴水の演出の「愛tears」、チアリーダーと共に魅せる「DANCE DANCE DANCE」、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの仲間たちが駆け付ける「The Days」。もちろん、ファンにとって大切なギフトである銀テープだって欠かさない。このように華やかなステージ創りが得意なNissyであるが、細かなところへも仕込みも忘れないのだ。

 それは至るところに散りばめられたNissyエッセンスである。最初のVTR中に飲み干す缶のデザインが「N 5」になっていたり、行動の基点になるエレベーターが「N5」始まりの「24」終わりになっていたりするのだが、これはまだまだ序の口。もっと細かなところでいくと、バス停が「ウエストアイランド24丁目 大桟橋N5前」という名前だったり、Nissyに関わる装飾が施されていたりするのだ。映し出される時間は、ほんの一瞬にも関わらずである。彼のライブに参加した人は「Nissyのライブは情報量が多くて、1回じゃ足りない」とよく口にするが、ディテールまでこだわりぬいて詰め込んだエンターテインメント要素こそそういわれる所以なのである。

 Nissyというエンターテイナーを語るうえで、1曲1曲の表現力も欠かすことができない。「Double Trouble」で色気たっぷりのセクシーオーラを放ったかと思えば、「恋す肌」では王子様感満載のキラキラスマイルで魅了する。即座に楽曲の世界に染まってしまうのは彼の強さのひとつだ。キネマ旬報ベスト・テンで「新人男優賞」を受賞した演技力は一役買っていることは間違いないが、“Nissy Entertainment”で語らずにいられないのは楽曲ごとに行われる衣装チェンジである。

 今回のライブでは大きくわけると、ファーコートやスウェットのセットアップなど7タイプのコーディネートを披露。そして、そのタイプのなかでもMVの衣装になったりジャケットを脱いだりサングラスをかけたりして、細かなニュアンスの違いでキャラクターを見せていった。細かくいうと、13タイプにもなる。“その曲の世界観が伝わるにはどうしたらいいか”ということを、ファッションでも魅せていくのも彼のこだわりのひとつなのである。

 また、魅せるだけでなく寄り添うのもNissyのコンサートの魅力といえよう。ファンの質問に答えるQ&N(Question for Nissy)や気球に乗って現れるアンコールなど、彼は心身共にオーディエンスに近づこうとする。「トリコ」では作中の”私がトリコになった5つの理由“になぞらえて、”Nissyからの5つのメッセージ“が伝えられたがそこでも彼は「みんなのおかげでここまで来れました」と語っていた。そして極めつけは、エンドロールの締めくくりに現れる“All Nissy’s fans I love you”。ファンがあってこそのNissyだということを、彼は誰よりも知っていて、そこに感謝しているのである。

 『Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR』は、いうならば今までのNissyの総集編。彼の5年間の軌跡をたどるような時間だった。初の4大ドームツアーであるにも関わらず全公演即ソールドアウトし、しかも昨年の『Nissy Entertainment 2nd LIVE』より男性ファンの比率が圧倒的にあがっている。異性だけでなく同性までも虜にしてしまう、あのクオリティーのエンターテインメントを生み出すのは一朝一夕にできることではなく、彼ががむしゃらに挑戦を続けた結果なのだ。

 ソロプロジェクト1曲目の「どうしようか」をNissyと共につくり、今回のドームツアーに足を運んだSHIROSE(WHITE JAM)は、「彼の日々を輝かせる“挑戦”を人々は魔法と呼ぶのだ」と言っていた(WHITE JAM公式サイト)。挑戦をたくさん繰り返して紡がれたNissy Entertainmentだからこそ、人々に魔法をかけることができるのである。令和の時代に必要とされるのは、たくさんの魔法を見せてくれるNissyのようなエンターテイナーなのではないだろうか。

 努力の天才でありながら、それを包み隠して魔法使いになって見せるエンターテイナーNissy。「次の時代を彼に託してみたい」と思わさせられるには、十分な一夜だった。

■坂井 彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。
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写真=田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓

Nissy(西島隆弘) オフィシャルサイト

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