AFOC 佐々木亮介が問う、バンド音楽に対する問題意識「ラップにこそロックの歴史が息づいている」

佐々木亮介、バンド音楽に対する問題意識

「音楽は時代の空気に作用していたほうがいい」

ーー佐々木さん、インプットもアウトプットも尋常じゃない量ですよね。それなのに、新バンドのTHE KEBABSまで立ち上げるという。

佐々木:THE KEBABSのメンバーはみんなもともと友達で。田淵(智也)さん(UNISON SQUARE GARDEN)も、一つのことばかりやってると世界が狭くなっちゃうって同じことを考えていたらしくて。同じバンドを10年やってきたからこそ、それ以外のことにトライして、その経験をa flood of circleにも還元したくなったんです。そんなことを考えていたタイミングで、たまたま誘ってもらって。

ーーTHE KEBABSは、佐々木さん身のなかでどういう位置付けなんですか?

佐々木:100パーセント、ピュアな遊びです(笑)。

ーー音楽性にしても、ここまで話してきたようなことを全然考えてないというか。

佐々木:そうですね(笑)。3コードの単純なロックンロールで、レコーディングでもクリックを全然聞いてないですし。だから、THE KEBABSをやってる自分と、XXXTentacionンをカバーしている自分は別人格だとも言えるけど、THE KEBABSには音楽のプリミティブな悦びがあるというか。それって今だと、ラッパーのKOHHが放ってるようなエネルギーとも近い気がするんですよね。

ーーロック元来の荒々しさというか。トラップにしても、かなりプリミティブな音楽ですしね。

佐々木:リル・パンプのライブをYouTubeで見てると、俺はTOSHI-LOWさん(BRAHMAN)が思い浮かぶんですよ。倫理的な部分ではまったく違うけど(笑)、音楽が持つエネルギーには通じるものがあるというか。だから、THE KEBABSをやるのは自分の精神衛生的にもよくて。「本来、ロックバンドもこういうものだったよね」と思い出せてくれる場所ですね。

ーーそして、a flood of circleとしても新しいシングル『The Key』がリリースされますよね。表題曲は、アニメ『群青のマグメル』(TOKYO MXほか)のEDテーマということですが、原作は観ましたか?

佐々木:もちろん。作者の第年秒さんも認めていますけど、要するに『HUNTER×HUNTER』なんですよ。世界観もそうだし、細かい描写も通じるところがあって。他にも、「ここはジョジョだな」「ドラゴンボールだな」みたいな感じ。要するに、中国人の漫画家さんが、俺たちがアメリカやイギリスのバンドに憧れるのと同じような感覚で描いているんですよね。そうやって海外のカルチャーに影響を受けたうえで、独自の表現として読ませることに成功していて。

ーーなるほど。

佐々木:だから、ストーリーに入り込むのもいいけど、そこから一歩引いて、影響の取り入れ方やアレンジの工夫など、どうやって作ったのか考えながら楽しむこともできる。ある意味アート的だし、めっちゃ現代的な作品だなって。マーベルの映画とかと一緒で、予備知識があるとさらに楽しめるというか。『HUNTER×HUNTER』を読んでる人なら3倍楽しめると思います。

ーーそういう作品性を、「The Key」にどうやって落とし込んだんですか。

佐々木:いや、タイアップだけど指定は特になかったので、ストックしていたデモ曲から選んで。歌詞もアニメの内容に寄せたりはしなかったんですけど、第年秒さんがすごく喜んでくれて、修正なしで自然にハマりました。自分と第年秒さんは世代も一緒なので、感覚的にも近かったのかなと。

ーーサウンド面で意識したことは?

佐々木:構成的には、バースとサビがあって、あとはコーラスがドカンと行くだけの曲です。いわゆるアニメソングというよりも、自分たちが好きな洋楽の構成に近いんですけど、そのほうが逆に面白そうだなと(笑)。

ーーこの曲で意識した洋楽というと?

佐々木:ナベちゃんが好きなFoo Fightersとか。あとはコーラスの部分で、僕がシカゴに行ったのもあり、カニエやチャンス・ザ・ラッパーとか(シカゴのラッパーが)やってるゴスペルっぽい重ね方を研究しました。『CENTER OF THE EARTH』の曲も、コーラスはよく聴くと複雑なんですよ。

ーー今回のシングルもまた、ほかの収録曲も興味深いですね。「Backstreet Runners Ⅱ」は『CENTER OF THE EARTH』収録曲の続編で、オリジナルは疾走感のあるハードコアっぽい曲調だったのに対し、「Ⅱ」は少しテンポを落としてグルービーになった印象です。

佐々木:この曲のデモも、俺はもともとトラップのビートを入れていて、テンポがもっと遅かったんですよ。でも、バンドでやってみたら中途半端になりそうだったから、アルバムのほうはクリックも聴かずに勢いで演奏したんです。この「Ⅱ」に関しては、トラップの要素がまた入ってきて、ちょうど俺とバンドの中間にある曲かもしれないですね。

ーーもう一つ、『群青のマグメル』になぞらえて、東京事変「群青日和」のカバーも収録されています。

佐々木:カバーしてみて何が感動したって、クリックを全然聞いてないから、テンポのアップダウンが激しくて。アウトロとかどんどん速くなるんだけど、それが恐ろしくかっこいいという。10年以上前の曲ですが、グリッドに囚われないビートをこの頃にやってたんだなって。めっちゃグルービーだし、聴いてて燃えましたね。東京事変って、亀田誠治さんはじめプロミュージシャンの集まりじゃないですか。そういう人たちがこんな演奏してるのかと思ったら、俺たちも日和ってられないなって(笑)。

ーー「群青日和」は2000年代を象徴するクラシックですよね。佐々木さんもそういう曲を作りたいという気持ちはありますか?

佐々木:それはずっとありますね。正直、俺はバンドであろうとソロであろうと、とにかくクラシックなものが作りたくて曲を書いているので。たぶん、アイデアはみんなあると思うんですよ。今だったら、トラップとロックを混ぜようとか絶対考えるだろうし。そこで難しいのは、そのアイデアを具現化させることで。そういう点で、1990年代や2000年代の人たちは、バンドサウンドと同時代のポップスを混ぜるのが上手かったですよね。

ーー学生時代は1970年代までの音楽しか聴かなかったという佐々木さんが、現在はそういうマインドになっているというのは面白いですね。

佐々木:大学時代は、日本のチャートで売れてるものよりも、世の中の空気を反映してたであろう昔の音楽がリアルに感じられたんですよ。音楽というものは、時代の空気に作用していたほうがいいというのは当時から思っていて。そういう意味で、1970年代の音楽を掘っていたときと、今現在トラップを聴いているときの気分って、実は一緒なんですよね。

(取材・文=小熊俊哉/写真=中村ナリコ)

■リリース情報
『The Key』
発売日:4月24日(水)
価格:1,300円(+税)

<収録曲>
01. The Key
02. Backstreet Runners Ⅱ
03. 群青日和(東京事変のカバー楽曲)
04. The Key -群青のマグメルver.-
※「The Key」は4月期放送のTVアニメ『群青のマグメル』のエンディングテーマ

a flood of circle ニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』
発売日:3月6日(水)
価格:【初回限定盤】3,800円(+税)CD+特典CD
【通常盤】3,000円(+税)/CD

<DISC1収録曲>
01. Flood
02. Vampire Kila
03. 光の歌
04. Backstreet Runners
05. Youth
06. ベイビーそれじゃまた
07. 美しい悪夢
08. ハイテンションソング(3月5日より先行配信開始)
09. Drive All Night
10. スノードームの夜
11. 夏の砂漠
12. Center Of The Earth(先行配信中)

<【初回限定盤】DISC2収録曲>
佐々木亮介(Vo)&アオキテツ(Gt)による新ユニット・サテツデビューシングル
01. Champagne Free Flow
02. LALILA(あるいは気を失うまで)
03. Golden Dead Cigar

佐々木亮介 配信シングル「Fireworks (feat.KAINA)」
各サービスにて配信中

■ライブ情報
『a flood of circle TourCENTER OF THE EARTH~アーユーハイテンション?~』
6月9日(日)千葉LOOK
6月13日(木)高松DIME
6月14日(金)大阪梅田TRAD
6月16日(日)福岡CB
6月21日(金)名古屋CLUB QUATTRO
6月23日(日)大分club SPOT
6月25日(火)岡山PEPPERLAND
6月28日(金)札幌cube garden
6月30日(日)仙台CLUB JUNK BOX
7月6日(土)長野J
7月7日(日)水戸LIGHT HOUSE
7月13日(土)東京マイナビBLITZ赤坂
チケット:全公演前売り3,900円(ドリンク代別)

■関連リンク
a flood of circle オフィシャルサイト

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