BTS(防弾少年団)が混沌の時代の勝者に Spotify年間ランキングが示す世界と日本のトレンドの違い

 さて、世界チャートを見ればドレイクやポスト・マローン、XXXテンタシオンと上位はやはりヒップホップアーティストが強い中、日本ではONE OK ROCKやMr.Childrenといったバンド音楽の支持の大きさも無視できない。それどころか、日本のチャートはK-POP勢も強ければ、エド・シーランやアリアナ・グランデのような洋楽勢も強いうえ、J-POP然としたアーティストやバンド勢も依然として根強い。さらにJ-POP然としたアーティストの中にも宇多田ヒカルのように海外を意識した楽曲にトライしている者もいれば、〈君はロックなんか聴かない〉と歌うあいみょんもブレイクしている。Mr.Childrenの次にランクインした清水翔太は海外チャートと同期したサウンドを鳴らしている。かと思えば、次にランクインしている乃木坂46は世界の音楽の潮流とは全く異なる文脈で支持されている。このように、日本のチャートミュージックは非常に多様な文脈で渦巻いている。世界的な音楽的なトレンドと日本の音楽との間には距離があるのは確かだが、もとより、日本で支持されるアーティストやサウンドの傾向をひと口に表すことさえ困難だ。

 しかしこうした状況において、やはり最も支持されたアーティストがBTS(防弾少年団)だったというのが何よりも象徴的である。SNSを駆使しながら、世界的なトレンドのヒップホップをベースとした楽曲を歌い、激しいダンスを踊り、MVの質も非常に高く、活動はグローバル。〈アーティストでもいい アイドルでもいい 何だっていい 気にしない それを誇りに思ってる 俺は自由なんだ〉と歌う彼らこそ、この混沌の時代の勝者であったのだ。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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