“hideが遺したもの”とは何だったのか 愛とリスペクト溢れる『SONGS』放送内容から考察
番組では、hideが『ポップジャム』に出演した当時の映像も放送された。「ROCKET DIVE」「Beauty & Stupid」「Hi-Ho」……不思議なほどにどの楽曲も、今聴いても色褪せていない。きっと、hideのことを知らない人に「これは先日収録されたばかりの映像だよ」と紹介しても信じてもらえるのではないかというほどに。ハイビジョン画質に改良されていたこともあるが、それよりもやはり、hideの発する音楽やビジュアル、パフォーマンスが、その時代の流行に左右されず、かつ誰にも真似できない、唯一無二のものであることが最大の理由だろう。
終盤には、MIYAVIとhideが「ピンクスパイダー」でコラボレーションを果たした。演奏は、2018年6月にリリースされた『hide TRIBUTE IMPULSE』に収録されたバージョンがベースとなっており、MIYAVIとhideが交互に歌う形で披露された。煉瓦の壁に囲まれた狭い路地のようなセットは「ピンクスパイダー」のMVを彷彿とさせ、MIYAVIの手前には、「ピンクスパイダー」発売当時の1998年を思わせる形のコンピューターのモニターがいくつも無造作に積まれていた。hideの姿はモニターのほか、MIYAVIの頭上、背後の壁にプロジェクションマッピングで映し出された。20年の時を超えた、まさに奇跡のコラボレーションと言えるだろう。
演奏が終了すると、煙草を吸うhideの写真と「12/13 hide 54th Birthday」の文字が表示され、番組は終了した。hideへの愛やリスペクトが溢れる30分間だった。
この番組を通し、“hideが遺したもの”とは何だったのかと考えると、日本の、いや、世界の音楽業界のみならず、社会全体にとっても代え難い“希望”だったのだと思う。仮に今彼が生きていたら、何を思い、どんな作品を世に送り出していたのだろうか。そう考えると、改めて、急逝が悔やまれてならない。しかしそれゆえ、これからも彼は愛され続けるのだろう。
■白乃神奈
フリーライター。ヴィジュアル系など、音楽ジャンルに囚われない音楽が好き。趣味はライブ、ダンス、キャラクターグッズ集め。座右の銘は「鶏口となるも牛後となるなかれ」。
Twitterアカウントは@flugzeug255