EXILE SHOKICHIが語る、“hideオマージュ”の真意 「hideさんとの出会いが自分の音楽を作った」

SHOKICHI、hideオマージュの真意

 EXILE SHOKICHIが、約2年ぶりとなるソロ作『Underdog』を5月23日にリリースする。これまでのヒップホップ/R&B路線から一転、2000年代前後のミクスチャーロックを彷彿とさせる作風で、カップリングにはhideが1998年に発表した「ROCKET DIVE」のカバーが収録されている。しかし、本作もまたEXILE SHOKICHIのヒップホップ解釈によって生まれた楽曲だという。一体どういうことなのか? その真意とともに、現在のソロ活動に対するスタンスを、EXILE SHOKICHI本人に聞いた。(編集部)【※インタビュー最後にプレゼント情報あり】

ソロ活動の再開と「Underdog」の誕生

――本格的にソロで活動するのは、2016年4月にアルバム『THE FUTURE』をリリースして以来、約2年ぶりです。

SHOKICHI:そうですね。この2年間は、ずっとEXILE THE SECONDの活動に注力してきました。アルバムを2枚出して、ツアーも2本やって、そのあいだに夏フェスとかにも出させていただいたり、ずっと走り続けてきた感じです。そのなかで、SECONDの楽曲制作に携わらせていただいたり、プロデュースをさせていただくことで、音楽家としてもすごくレベルアップすることができた実感がありました。本当に濃密で有意義な2年でした。

――2014年にソロを始めたときとは、だいぶ状況が変わったのでは。

SHOKICHI:はい。そもそも僕がソロを始めたきっかけは、自分がアーティストとしてレベルアップすることで、EXILEに貢献して、グループにおける存在意義を作りたかったからなんです。そして、ゆくゆくはEXILEを引っ張っていけるぐらいの力をつけたいと考えていたのですが、EXILE THE SECONDが本格始動したことで、ソロで培ったものをそこで発揮することができたんですね。アルバム制作においても様々な提案ができたし、ツアーでも新しい挑戦ができて、結果としてEXILE THE SECONDを勢いづけることができました。また、自分は音楽を追求していくことで周りに貢献することができるという自信にも繋がりました。EXILEに貢献したいという気持ちは変わりませんが、以前よりはリラックスした気持ちでソロ活動をリスタートできていると思います。

ーー新曲「Underdog」は、SHOKICHIさんがこれまで追求してきたヒップホップ/R&B路線とはまったく異なるアプローチだと感じました。ソロに臨むスタンスの変化が、楽曲にも表れているのでしょうか。

SHOKICHI:「こういう曲をやりたい!」と力んでいた昔の自分との約束は、『THE FUTURE』やEXILE THE SECONDの楽曲で、自分なりに果たすことができたと思っています。その意味で、今は音楽的にすごくフラットな状態で、「あれをやらなければいけない」という変な焦りはないんです。だからこそ、自分の内側から出てくるもの、今の自分がフィールするものを素直に表現してみようと思って、その結果として生まれたのが「Underdog」なんです。

――ロック色が強い曲だったので、ちょっと驚きました。

SHOKICHI:ですよね(笑)。ただ、この楽曲は一見すごくロックで青春パンク的ですが、実は自分なりのヒップホップ解釈でもあるんです。最近の若手ラッパー、たとえばリル・ウージー・ヴァートとかエクスエクスエクステンタシオンなどは、Bボーイだけどセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスのようなネックレスをしていたり、影響を受けたアーティストにマリリン・マンソンを挙げていたりと、いろいろなものをクロスオーバーさせているじゃないですか。それこそ、自分たちが昔見ていたような、ヘビーメタルのヘッズのノリに近いものがあったり。その感覚って、僕が昔メロコアのバンドをやっていたときのノリと近いものがあると感じていて。

――中学時代に、エレキギターのサウンドを聴いて音楽に目覚めたとか。

SHOKICHI:今回のカップリング曲の話にも繋がるんですけど、実はマイ・ファースト・ヒーローはhideさんでした。中学一年生ぐらいのとき、友だちが「兄貴のギターを借りてきた」って言って持ってきたのが、hideさんのモッキンバード・モデルのエレキギターだったんです。僕の家は音楽一家じゃなかったというか、めちゃめちゃ普通の家だったので、それまで自分の世界のなかに音楽というものがなかったんですけど、そこでhideさんの音楽と出会ったことによって、自分のなかに音楽が生まれたというか。ホント無の世界にビッグバンが起こって宇宙が生まれたように、hideさんとの出会いが自分の音楽を作ったみたいなところがあるんですよね。それから中学、高校と、みんなでバンドを組んで活動して……そういう青春時代だったんです。その時代はバンドが流行っていたから、普通と言えば普通ですが(笑)。

 これまでも、そのルーツを活かした曲を作ったことはありましたが、今のフラットな状態で自由に作ろうと考えたときに、もう思いっきり振り切ってやってみても良いのかなと。さっき言ったように、今のアメリカのヒップホップシーンを見ても、ロックと境界がどんどんなくなっている感じもしますし。

――ヒップホップという土壌に、ロックの要素が混じってきている感覚は、確かにあるかもしれないですね。具体的には、どんなふうに曲を作っていったのでしょう。

SHOKICHI:自分の頭のなかで曲の原形がすでに鳴っていたので、これを誰と一緒に作ろうかなと考えたときに、UTAくんに依頼することにしました。彼とは、これまでにいろいろな曲を一緒に作ってきましたし、すごく柔軟なので、きっと面白いハイブリッドな曲に仕上げてくれるかなと。さらに、UTAくんの紹介でBACK-ONのKENJI03くんにも参加していただけることになりました。彼とは聴いてきた音楽も似ていて、フィールするところがあったんです。3人での制作は、すごいスムースでした。とはいえ、こういう曲は自分にとっても初の試みだったので、ロックとヒップホップのバランスには苦慮しました。ロックが強いと、「ロック始めました」みたいな感じになっちゃうし、ヒップホップが強くても、今までと変わらない感じになってしまうので。ロックなんだけどヒップホップ、ヒップホップなんだけどロック、それでいてポップで聴きやすいJ-POPを目指しました。

――パッと聴いた感じではストレートなロックですけど、ビートのタイム感はちょっと違いますよね。

SHOKICHI:ビートがトラップになっているんです。だから、ヒップホップの踊りでも聴けるはず。現行のヒップホップを聴いている人たちにも、そのままのノリで、このロック調の曲を聴いて欲しいという狙いもありました。そういう意味で、クロスオーバー感を演出できたとは思っています。ただ、少しテンポが早いだけで完全にロックになってしまうので、そのさじ加減は本当に難しかったです。一方で、グリーン・デイのような、日本人にも刺さるロックのコード感も意識しました。その上で、単なる模倣ではなく、あくまでも自分のフィルターを通したもの、EXILE SHOKICHIがロックまたはヒップホップを表現するとこうなる、という曲にしたつもりです。

――「Underdog」とのタイトルや、歌詞のテーマについても教えてください。

SHOKICHI:“アンダードッグ”は“負け犬”という意味で、歌詞のなかでも、そういうふうに使っているんですけど、もうひとつ、“叩き上げ”とか“成り上がり”……要するに、“ストリート出身”みたいな意味合いもあるんです。そこから這い上がって、夢を見ながら頑張っているみたいな。実際、英語圏でもそういう使われ方をされていたりします。加えて、5月のリリースなのでポジティブなバイブスの曲にしたいとも考えていました。5月はフレッシュマンが新しい環境のなかで、ちょっと食らう時期でもあるじゃないですか。そこに向けて、前向きなメッセージを発信したかったんです。最近、SECONDでは、セクシーな曲だったり、大人っぽい曲だったりと、恋愛の曲が多かったので、今回のソロではまた違った表現をしてみたかったという気持ちもあります。

――歌い始めの、〈ほとんど爽快なほどBad day/人生イチのハートブレイク/思考回路はショート同然/真っ逆さま空にダイブ〉とのリリックが印象的でした。

SHOKICHI:ソロをリスタートする楽曲として、歌詞の一行目~二行目はとても重要だと思っていたので、そこは一番悩みました。どんなふうにスタートさせるか、迷った末に、最底辺というか、いちばん落ちた状態から始めようと。また、聴いた人によっていろいろな解釈ができるようにも工夫しています。たとえばハートブレイクなら、恋愛のハートブレイクもあるし、新しい環境に打ちのめされたという意味でのハートブレイクもあります。そういうふうに、自分と重ね合わせながら聴くことができるリリックにしたかったんです。そこから始めて、でも最後には“負け犬万歳”、“Viva la Underdog”とシャウトして、明日に立ち向かっていけるような。

――言葉の選び方も、ちょっとロックっぽいというか、かなりシンプルな言葉を選んでいますね。

SHOKICHI:ここ最近、ソングライティングでひとつレベルアップできたと思うのは、簡単な言葉を使えるようになってきたことですね。少し前までは、難しい言葉を使わないと深みを表現できないと思っていたというか、「こういうこともできるんだ」というのを見せたかった部分もあったんです。でも、SECONDの『Highway Star』の制作の後半ぐらいから、簡単な言葉を使っても深みのある表現ができるようになってきたという、自分なりの手応えがあって。子どもがふと発する言葉って、めっちゃ深かったりするじゃないですか。そういう感じで、簡単な言葉だけど考えさせられる言葉を自分でも見つけていきたいなと。それがいちばん難しいと思うのですが。

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