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宇多田ヒカル楽曲の変遷 3つの音楽的ポイントから探る

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宇多田ヒカル『初恋』

 やっと、生で宇多田ヒカルのパフォーマンスに触れることができる機会がやってきた。11月6日より開催中の全国ツアー『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』だ。前回のライブー『WILD LIFE』からは約8年、国内ツアーとしては『UTADA UNITED 2006』以来約12年ぶり。『Fantôme』(2016年)を皮切りに、新作をコンスタントに発表しているものの、ライブの機会はなかったため、今回のツアーを心待ちにしていた人も多いのではないだろうか。

 ツアー初日には、アジア各国から3名のラッパーを招いたリミックス楽曲「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」を発表するなど盛り上がりを見せる今、改めて宇多田ヒカル楽曲の「リズム、速さ」「音色」「コード」の3つのポイントに注目し、初期〜中期〜現在に至るまでの音楽的傾向を探っていきたい。

初期…『First Love』『Distance』

 R&B色が最も色濃く、「グルーヴ感」と「抜き」がキーワードになっている。

リズム、速さ

 デビュー時から一貫した特徴として、楽曲の中で歌とリズムがもっとも引き立つようにしてあることが挙げられる。その二つがガッチリかみ合い、バスドラのキック音を強めにすることでグルーヴを出し、伴奏は極力控えめな印象だ。また、伸ばす音を歌っている時だけ、ドラムのキックやキーボードが刻む伴奏の音を、隙間(休符)を残しつつ少しだけ入れることにより、グルーヴが出る。例えば、「Movin’ on without you」の裏で鳴っているエレピのような音がこれに当てはまる。

宇多田ヒカル – Movin’on without you

 一方、速さには差がある。『First Love』のBPMは、平均して95くらいなのに対し、『Distance』のBPMは少し早く、110~120ほど。『Distance』のほうが全体的にどこかせわしなく聞こえるのは、速さとグルーヴの取り方の違いがあるからだろう。『First Love』は4拍で、『Distance』は16拍で刻みながら聞くと心地良い曲が多い。

音色

 上記のように「歌とリズム重視」な上、メロディの歌いだしは、コードのメインの音と離れた音を使っているため、全体的にベースの音が聞き取りづらい。これは特にサビでは顕著である。ゆえに、コードのメインの音をベースにしてメロディの音を探しづらく、カラオケなどでは歌いづらい。曲をコピーしようとした方ならお分かりいただけると思うが、途中で必ず一般的なコードの流れでは考えられないような音が出てくるのは、あるある話のひとつだと思っている。

 『First Love』ではR&B感が強く、テイストの似ている楽曲「Automatic」、「In my room」、「time well tell」などは、コーラスではなく、丸みを帯びたシンセの音が曲を切なくさせている。これが『Distance』になると少し変わり、「Can You Keep A Secret?」のように隙間を埋める細かな音をつめたり、低音を中心に3〜4層に重ねたコーラスを入れる曲が出てくる。1作目で肩の荷がおり、音で遊ぶ余裕が出たのかもしれない。

宇多田ヒカル – Automatic
宇多田ヒカル – Can You Keep A Secret?

コード

 2作とも、マイナーキーが暗くなりすぎない絶妙なラインのコード(和音)を選定している。ただ、『Distance』では、マイナーなモードから少し抜け、メジャーコードをベースに、複雑な構成の和音をつなぎに据える曲が増える。

 主旋律のキーを上げる前に、ちょっとした工夫を凝らして次の展開へ向かうのも特徴のひとつ。楽曲の「First Love」では、2回目のサビ終わりの〈新しい歌 歌えるまで〉のあとのハミングの部分で、C→Am7/D→B♭m7/E♭と、たったの4拍で3つのコードを駆使し、歌の邪魔をせずスルっと転調。エモーショナルな展開を生んでいる。「Wait & see~リスク~」では、徐々にメロディのキーをあげつつ、ラストは突然転調し、〈キーが高すぎるなら下げてもいいよ〉と歌い、笑って終わるという茶目っ気ある展開がある。

宇多田ヒカル – First Love
宇多田ヒカル – Wait & See ~リスク~

 J-POPではありがちな転調後の主旋律の繰り返しもなく、スパッと終わる潔さがかっこいいのは、こういった細かいディテールに徹底的にこだわっているからであろう。

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