AKB48、『センチメンタルトレイン』で“アイドルの不在”をどう昇華した? MVと楽曲から考える

 アコースティックギターなどの音色で幕を開ける「センチメンタルトレイン」は、イントロからダイナミックに展開していきますが、サウンドはアコースティック感覚を失わないみずみずしいもの。陰影を深めるかのようなBメロから、サビの開放感へのコントラストも「センチメンタルトレイン」の大きなポイントです。終盤では男声コーラスを前面に出し、山場を作っている点にも姫野博行の「技」を感じます。

 姫野博行は、2017年の欅坂46のシングル『風に吹かれても』のカップリング曲「結局、じゃあねしか言えない」(五人囃子名義)でも作編曲を担当しており、ここでも“Aメロ/Bメロ/サビ”というJ-POPの構造の中で美しいコントラストを浮きあがらせていました。「結局、じゃあねしか言えない」でも終盤ではコーラスやサウンドとともに山場が来るのですが、フィロソフィーのダンスの「夏のクオリア」はあくまでボーカル主体で昂揚していきます。同じ姫野博行の作品(「夏のクオリア」は宮野弦士編曲)でも、アーティストによって楽曲の展開が異なる点は注目に値します。

 松井珠理奈がジャケットを飾るはずだった『センチメンタルトレイン』のType A初回限定盤は、青空の写真でリリースされました。松井珠理奈というアイドルの不在をいかにして作品として昇華するか。その難題に挑んでいたのがAKB48の『センチメンタルトレイン』です。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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