現代のダンスサウンドとJ-POPの接点は? 『ULTRA JAPAN 2018』最終日から探る

現代のダンスサウンドとJ-POPの接点は?

 中田ヤスタカのセットが終わったころになると少しずつ日が落ち始め、気温も和らぎ始めた。とともに、空模様が少しずつ崩れ始め、夕方には雨模様に。辺りが暗くなる頃、Afrojackを控えたメインステージはすっかり土砂降りとなったが、オーディエンスのテンションは逆にうなぎのぼりだった。大降りの雨をものともせず、会場はクライマックスに突入していった。

 実際に現地を取材して驚いたのは、会場の熱気はもちろん、予想以上に多様なオーディエンスだった。仮装やドラァグ風のファッションに身を包んだ人もいれば、フェスを楽しむ若い男女、ロックバンドのTシャツを着た人もいる。年齢層も、20代から30代のボリュームゾーンだけにとどまらない印象だった。メインステージだけではなく、RESISTANCEステージなども含めて、ダンスミュージックファンからフェス好きまでが集まっていたように見えた。

 サウンドの観点からいえば、いわゆるビッグルーム系と呼ばれる四つ打ちのサウンドから、トラップやダブステップ、あるいはハードスタイルまで、多様なビートが次から次へとあらわれる密度の高さがやはり印象的だった。2010年代以降のEDMを中心としたサウンドは、曲構成の点では様式化が進んだ一方で、基軸となるビートやドロップに仕込まれるギミックは極めて多様化し、複雑にもなっている。トリッキーなビートにも関わらず、DJの煽りに応えて熱狂するオーディエンスの姿は圧巻だ。

 体に響く大音量、特に重低音を浴びながら、サウンドのダイナミックな変化を楽しむという現在のダンスミュージックの潮流が、フェスという形でこれだけの人に親しまれていることは興味深い。この場に居合わせて多様なビートを体に浴びるだけでも、徐々に音楽の嗜好というものは組み替えられ、形作られていくだろう。ダンスミュージックのフィールドにいながらポップスにも通じた若手プロデューサーは、日本にも数多い。音楽シーンのトレンドセッターとしてフェスが注目される昨今、『ULTRA JAPAN』のような場を通じて幅広いオーディエンスの感覚が拡張されていけば、若いプロデューサーたちの活躍とともに、J-POPの風景はもっと変わっていくはずだ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる