Yaeji、Peggy Gouらアジア系女性プロデューサーになぜ脚光? “異文化間のギャップ”越える存在に
近年、アジア系の女性ミュージシャンの活躍を目にする機会が多い。たとえばアメリカでは、Mitski、Japanese Breakfast、Jay Somなどアジア系の女性シンガーソングライターが存在感を増している。
ダンスミュージック界隈に目を向けてみても同様だ。韓国をルーツに持つYaejiやPeggy Gouは、いまや世界で最も注目を集めるDJとしてメディアやフェスにひっぱりだこ。また、彼女たちと同世代――いわゆるミレニアル世代――のアジア出身女性プロデューサーも、活動の場を世界に広げている。
Yaeji
Yaejiは、韓国人の両親のもとニューヨークに生まれ、アトランタやソウルで暮らしたのち、現在はニューヨークで活動を続けている。ハウスからトラップ、インディR&Bまで、ビートは多彩かつダンサブルだが、ローファイで弾力のあるサウンドには親しみやすさがある。特に、韓国語と英語を駆使した囁くようなボーカルは注目の的で、まさに彼女の代名詞だ。ジャンルを横断し、どこか親密でリリカルな彼女のスタイルに、韓国社会にもアメリカ社会にも違和感を覚えてきた、“アジア系アメリカ人”という彼女のアイデンティティを重ね合わせ、異文化間のギャップを乗り越えるアイコンとして称えるメディアも多い。
Peggy Gou
Peggy Gouは、韓国に生まれ、ロンドンを経由して現在はベルリンで活動している。「It Makes You Forget (Itgehane)」など、自身による韓国語のボーカルをフィーチャーした曲も多いが、Yaejiとは対照的に、そのサウンドはエネルギッシュで骨太。インタビューから垣間見えるパーソナリティも野心家だ。2016年にウェブマガジンのDUMMYで「ベルグハイン(ベルリンの名門クラブ)でプレイする最初の韓国人女性DJになりたい」と語って話題を呼んだが、数カ月でその目標は実現、有言実行ぶりがメディアの語り草になった。ダンスミュージックの世界における女性やアジア系のアーティストの立ち位置について再考をうながす発言も多く、楽曲、DJ、そして本人が発するバイタリティは、女性DJの新たなロールモデルを提示している。
CIFIKA
韓国出身ながら、10年以上をアメリカで過ごしてきたCIFIKAのキャリアは一風変わっている。ロサンゼルスに住み、自分の楽曲をSoundCloudに公開していた彼女は、韓国からのリスナーが数多くいることに気づき、母国での活動を思い立つ。2016年に単身帰国、ソウルにて活動を開始すると瞬く間に注目を集め、ViceやDazedといった著名ウェブメディアにピックアップ、同年の韓国大衆音楽賞にもノミネートされた。また、2018年には韓国人としては最長のアメリカツアーを敢行した。バウンシーな四つ打ちやトラップビートに、シンプルで力強いメロディのボーカルが組み合わさった彼女の楽曲は、ロックのリスナーにもアピールするはず。実際、韓国の今を代表するバンド、HYUKOHのOh Hyukとのコラボレーションも実現している。