ABBA、35年ぶりレコーディングの衝撃 “奇跡的”再結成後の新曲にまつわる悲喜こもごも

 逆にありがたみが薄かったのが、Ritchie Blackmore’s Rainbowの21年ぶりの新曲「Land Of Hope And Glory」(2016年)。ハードロックギタリストだったリッチー・ブラックモアは自分のバンドRainbowを97年に解散し、アコースティック主体で妻キャンディ・ナイトが歌うBlackmore’s Nightの活動へと移行した。2016年のRainbow再始動は19年ぶりのハードロック復帰と歓迎されたわけだが、バンドの実態は彼のソロプロジェクトで過去のメンバーは1人も参加しなかった。なのにBlackmore’s Nightのドラマーが加わり、シャウトする男性ボーカルにキャンディスがコーラスをつける編成でライブを行った。しかも新曲はクラシックをカバーしたおとなしいインストゥルメンタルだし、Blackmore’s Nightでもできる曲調だった。リッチー、お願いだから奥さんのことは忘れてハードロックに専念してくれと思った。

 一方、Gus N’ Rosesも一時期はアクセル・ローズのソロプロジェクトと化し、制作が長引いた『Chinese Democracy』(2008年)が17年ぶりのスタジオアルバムとしてリリースされた時には、オリジナルメンバーは彼1人になっていた。だが、2016年に他のオリジナルメンバー2人が戻り、さらにもう1名も散発的に客演してクラシック・ラインナップの復活が話題になった。同年以降、アクセルが新曲に取り組んでいると発言するなど、現在の編成による次作制作があれこれ噂されている。

 今月にはガンズとして「Shadow Of Your Love」のデジタル配信をスタートしたが、新たに作ったのではなく1980年代にEPで発表された曲だった。デビュー作『Appetite For Destruction』のボックスセットが6月末に発売されるため、そのプロモーションとしてのリリースという狙いが大きい。ガンズの次のニューアルバムが、いつ出るのか、出ないのか。えらく紆余曲折のあった『Chinese Democracy』の前例もあるし、X JAPANと同じく予測不可能がキャラとなっているバンドなだけに凡人にはわからない。

 どんな解散バンドに対しても、長年のファンであれば再結成から新作発表へという流れを望む一方、今から過去に匹敵する曲を作れるだろうかと心配にもなる。バンド側もせっかく作った新曲をライブ演奏せず、往年の曲を並べたりする。久しぶりの新曲というものは、いろいろ悩ましいのだ。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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