ABBA、35年ぶりレコーディングの衝撃 “奇跡的”再結成後の新曲にまつわる悲喜こもごも

 ABBAの4人が、約35年ぶりに2つの新曲を録音した。このニュースには驚いた。ABBAといえば、1970年代後半に「ダンシング・クイーン」などヒット曲を連発した世界的なポップグループである。当時はジョニー・ロットン(Sex Pistols、Public Image Ltd)やジョー・ストラマー(The Clash)といった音楽的には正反対とみられたパンク系アーティストまでがABBA好きと伝えられ、実に広い層に受け入れられていたのだ。

 男女2人ずつのこの4人組は、一時期は夫婦2組の形にもなったが両方とも離婚し、1983年以降は活動を停止して解散状態に陥った。だが、ABBAの曲を多数盛り込み、グループのうち男性2人が音楽を担当したミュージカル『マンマ・ミーア!』(1999年)が各国で成功し映画化もされた。また、マドンナがABBAの「Gimme! Gimme! Gimme!」をサンプリングした「Hung Up」(2005年)をヒットさせるなど、グループの曲が再注目される機会はたびたびあった。

 今年の夏には『マンマ・ミーア!』の続編映画が上映され、12月にはテレビ番組で新曲を公開するという。ただ、ツアーも計画されているものの、それは4人のライブパフォーマンスではなく、ホログラムを駆使した内容になるらしい。1970年代にABBAのアグネッタ・フォルツコグは世界で最もセクシーなヒップなどといわれたりしたが、メンバーも今ではみな70歳前後。バーチャルな手段で再結成するのは賢い選択かもしれない。

ジューシィ・フルーツ『BITTERSWEET』

 かつてはともによい時期を過ごしたメンバーたちが久しぶりに集まり、新曲をレコーディングする。そういう例は国内外でよくある。日本ではジューシィ・フルーツが、今年2月に約34年ぶりのニューアルバム『BITTERSWEET』を発表した。このバンドのデビューシングル「ジェニーはご機嫌ななめ」(1980年)はテクノポップ流行を象徴した曲で、Perfume、やくしまるえつこなど多くのアーティストにカバーされ歌い継がれてきた。同曲を作った近田春夫がニューアルバムでも曲を書き下ろしたのに加え、かつてのシングル「恋はベンチシート」の続編「ハイブリッドその後」も収録するなど、過去との連続性を持たせた内容になっている。

 ジュ―シィ・フルーツの場合、2013年にライブ活動を再開してから新作発表まで数年がかかった。だが、再結成しても昔の曲を演奏するだけで新曲を作らないバンドは珍しくないし、Pink Floydのように黄金期のメンバーが24年ぶりのリユニオン(2005年のイベント、ライブ8)を果たしても1回限りで終わる例もある。人間関係は、なかなか難しい。2009年に16年ぶりに再結成して以来、アルバム制作もライブもコンスタントに行っているユニコーンのような幸福なバンドは、必ずしも多くない。

 だからなのか、再始動への意気込みを新曲として形にするバンドもある。THE YELLOW MONKEYは2016年に再集結し16年ぶりのツアーを行ったが、真っ先に作られた新曲が「ALRIGHT」だった。それは、もう一度集まって羽ばたく準備は「ALRIGHT」という内容だった。

 イギリスのマンチェスター・ムーブメントの顔役で2011年に15年ぶりに再結成したThe Stone Rosesが、その後に初めて発表した20年ぶりの新曲は「All For One」(2016年)だった。団結を誓ったかのような曲名である。かつて、The Rolling Stonesのミックとキースが険悪になって解散かと騒がれた後に出した次のシングルが「Mixed Emotions」(1989年)だった。意訳すれば「気持ちは一緒」てな感じか。だが、この時期のストーンズのアルバムリリースは3年しか空いていなかったのだから、ふり返れば大した喧嘩ではなかった。それに対し、2006年に7年ぶりに活動を解凍した筋肉少女帯が翌年に再始動後第1弾としてリリースした新曲は「仲直りのテーマ」だった。私は「Mixed Emotions」も「All For One」も訳せば「仲直りのテーマ」だと思っている。ただ、The Stone Rosesに関しては、昨年半ばから再び解散かと報道されてもいる。

 ヘヴィメタルやプログレだと長年活動はしていてもメンバー交代が激しいバンドがよくある。だから、黄金期のラインナップが、たとえ全員でなくても主要人物さえ再集合すればありがたいという空気がある。Black Sabbath名義では18年ぶり、初代ボーカルのオジー・オズボーンが歌うアルバムとしては35年ぶりの新作だった『13』(2013年)など、ありがたさの好例だった。

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