北欧最大級パンクフェスで世界各国のバンドが共演 DEATH SIDE ISHIYAによる現地レポート

ISHIYAスウェーデンフェスレポ

(写真=ISHIYA)

 開催国であるスウェーデンからは、地元だけあり多数のバンドが出演したが、その中でも筆頭に挙げられるのがWOLF BRIGADEである。世界に影響を与えたハードコア・パンクバンドを輩出した国として、イギリス、アメリカ、ブラジル、日本、そしてスウェーデンが挙げられる、スウェーデン・ハードコアの中で、最も世界に影響を与えたバンドがANTI CIMEXであると言っても過言ではない。

 そのANTI CIMEX解散後に、メンバーが結成したWOLF PACKからANTI CIMEXのメンバーが脱退したのを機に改名したバンドがWOLF BRIGADEであり、スウェーデン・ハードコアの系譜ど真ん中にいるバンドで「これぞスウェディッシュ・ハードコア」という凄まじいステージだった。ツインギターからなる重厚なサウンドに、情緒的なフレーズなども垣間見られ、パワフルなリズム隊がそのサウンドをしっかりと支えた上に、ハードコア好きには堪らないシャウトのボーカルが加わる。メタリックでありながら臨場感抜群の曲構成やフレーズ、メロディがミックスされたサウンドは、現在のスウェーデン・ハードコアを代表するバンドとして世界でも非常に評価の高いバンドである。

 1980年代にその名を世界に知らしめたANTI CIMEXの進化系といったサウンドで、観客の盛り上がりも凄まじく、期待を超える素晴らしいステージだった。さらにボーカルがここまでのシャウトを見せながら、実は喉の手術直後だったという事実もわかり、スウェーデン・ハードコアの魂を見せつけられ、心の底から驚愕させられたバンドであった。

 現在でも進化し続けているスウェーデン・ハードコアシーンの中心的存在であるバンドのライブを体験できたことだけでも、スウェーデンに行った意味が見いだせる、そんなライブであり、ぜひ来日して日本のオーディエンスにスウェーデン・ハードコアの真髄を体験させてほしいと願うばかりである。

 そんな素晴らしいバンドを輩出しているスウェーデンだからか、筆者も知らないバンドにも非常に素晴らしいバンドがあった。

 キャンセルしたバンドがあったために急遽出演が決まったFREDAG DEN 13:eという、スウェーデン語で13日の金曜日を意味するそのバンドは、メタリックな面を見せながら重厚で疾走感のあるハードコアサウンドを聴かせ、筆者はライブを観て一気に虜になってしまった。様々なアプローチを持った完成度の高い曲構成に高い演奏力、ドラムの刻むビートも凄まじく「スウェーデンにはこんなバンドがいるのか!」と驚愕した素晴らしいバンドである。

 ほかにも3日間を通じて多数のバンドが出演していたが、スウェーデンのバンドは総じてレベルが高いバンドばかりであった。様々な国のシーンを経験しているが、ここまでレベルの高い国はあまりお目にかかったことがない。

 滞在期間を含め5日間じっくりとスェーデンを経験できたことにより、個人的にスウェーデンという国柄とサウンドが結びつく点が多く、スウェーデン・ハードコアの素晴らしさをさらに認識できる素晴らしい体験となった。

 スウェーデンの隣国であるフィンランドからも3バンドが出演したが、隣国であるにもかかわらず、フィンランドとスウェーデンのパンクにはあまり接点が無いように感じることが多い。隣国でありながら言語も全く違い、スウェーデン人とフィンランド人は英語で会話をする。

 ハードコアのサウンドにも大きな違いがあり、今回フィンランドから出演した中では、FORESEENはUSハードコアかとも思えるようなサウンドで、観客もサークルモッシュになるなど、筆者もアメリカのバンドかと思うほどアメリカの影響が大きいと思われるバンドであった。

 最終日に出演したKOHTI TUHOAとKOVAA RASVAAは女性シンガーで、ヨーロッパ独自のアナーコ的なサウンドともいうような独自のサウンドに、激しい女性ボーカルが特徴的なバンドだった。KOHTI TUHOAはメタリック・クラストともカテゴライズされるが、サウンド的にはハードコアそのものである。

 隣国同士でもかなりの違いがあるということを不思議に思った筆者は、両国の人間に「なぜ隣国でここまで違いがあるのか? 日本や韓国、ポルトガルとスペインにも通じる部分があるように思うので聞かせてほしい」と質問したところ「あなたはなぜだと思う?」と、明確な答えをもらうことができなかった。歴史的な背景があるのかどうかわからないが、そういった国家的な背景を壊せるものをパンクは持っていると思うので、今後もこうした部分には注目していきたいと感じたフェスでもあった。

 ほかにもオーストリアのANSTALTはロカビリー的なルックスのギターボーカルで、ロックンロール的なアプローチを見せ、デンマークのPLANET Yは女性ボーカルながら客席に入り歌うというアティテュードをみせながらもミドルテンポのロック的アプローチの楽曲であったりと、様々なタイプのパンクバンドが出演したフェスだった。

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