北欧最大級パンクフェスで世界各国のバンドが共演 DEATH SIDE ISHIYAによる現地レポート

北欧最大級パンクフェスで世界各国のバンドが共演 DEATH SIDE ISHIYAによる現地レポート

 2018年3月30日から4月1日までの3日間スウェーデンのストックホルムで、毎回世界各国からパンクバンドが集まり催されている『DEAD RHYTHM EASTER FEST』というパンクフェスに、日本からDEATH SIDEで出演してきた。このフェスは、ローニーというストックホルムに住む友人が4年間に渡り続けてきたスウェーデン最大規模のパンクフェスティバルだが、今回をもって最後になるという。そんな世界各国からパンクバンドが集結するフェスに、日本代表として最終日のトリを飾る形で出演するという大役だった。

 当初出演予定だったアメリカのIMPALERS、GREEN BERET、URCHINなどが直前になって出演キャンセルになるというアクシデントがあったが、アメリカからパワーバイオレンスの雄・INFESTのほかにCITIZENS ARREST、カナダからは筆者の盟友であり2度の来日経験があるCAREER SUICIDE、イギリスからはクラストコアというジャンルを世界で確立したDOOMのほかにEXTINCTION OF MANKIND、THE RESTARTSが出演し、スペインからはBARCELONA、オーストリアからANSTALT、デンマークからはPLANET Y、隣国フィンランドからはFORESEENなど3バンド、地元スウェーデンからも現在のスウェーデン・ハードコアの代表格であるWOLFBRIGADEのほかにも多数のバンドが出演し、日本の我々DEATH SIDEを含め、総勢9カ国23バンドが出演する大きなフェスティバルとなった。

 3日間ともに1000人以上が集まった北欧でも最大級のパンクフェスだが、観客はスウェーデン以外からも主にヨーロッパ圏から、イギリス、ドイツ、ポルトガル、スペイン、フィンランド、ラトビアなどのほかにも様々な国からパンクスが集まっていた。ヨーロッパの人間が集まるフェスはEUという集合体を肌で感じる素晴らしい機会であり、アメリカや日本、オーストラリアなどとは一味違った雰囲気を堪能することができた。出演バンドに至っては、アメリカやカナダのバンドもいるために、各国によって違った感性も感じられるフェスであった。

(写真=Henry Lugo)

 今回のフェスでアメリカの代表格というと、パワーバイオレンスというカテゴリーでは筆頭格のバンドともいえるINFESTになるが、ファストな曲調だがパワフルなボーカルによって曲の違いが明確にわかるバンドで、ステージに上がる客も多数いるなど観客席も非常に盛り上がり、ボーカルのジョーは途中から観客席を徘徊しながら歌うが、それでも途切れることなくパワフルなボーカルで観客に訴える素晴らしいライブだった。

(写真=Henry Lugo)

 CITIZENS ARRESTも観客席がサークルモッシュになるなど、これぞUSハードコアといった演奏と観客の反応が見られた。こういったUSハードコア特有のノリがヨーロッパでも見られるということは、日本でもそういったバンドで同じようなノリが見られることを鑑みると、世界的にUSハードコアというものが認知され、受け入れられている証といえるだろう。

 しかし、アメリカの隣国であるカナダから最終日に出演したCAREER SUICIDEとなると、観客の反応が違っていた。観客各自が独自のノリで拳を振り上げたり、ステージダイビングをするなどのほかにも、アメリカのバンドを観ているときの観客とは違った反応が見られた。CAREER SUICIDEがスウェーデンでの人気があることも要因ではあるだろうが、ここまで観客を盛り上げるステージパフォーマンスは非常に素晴らしいものがあった。カナディアンハードコアを長年にわたり牽引しているサウンドにも、独自なものがあり、久々に感じた盟友に魅了されたライブだった。

 特徴的だったのは2日目に出演したスペインのBARCELONAで、ボーカルが女性であることのほかにも独特な変則的なフレーズを使うバンドで、ほかの国のバンドではあまり感じることのないサウンドである。速い曲でもなくノイジーでもなく、かといってロック的なアプローチかといえばそうではない。好みが別れるところではあるとは思うが、観客席も満員で、それほど激しいノリを見せたわけではないが、興味深く注視している観客の姿が目立ったステージであった。非常に珍しいタイプの新しいスタイルを創造しているバンドである。

 パンク発祥の地とも言えるイギリスからの出演では、クラストコアというカテゴリーを確立したDOOMの存在を忘れてはならない。ハードコア・パンクの創始者と言っても過言ではないDISCHARGEを模倣するようなサウンドをD-BEATと呼ぶが、クラストとは、英語でかさぶたや外皮といった意味で、ボロボロの服をまとっていたパンクスに対して使われ始めた。そういったファッションはCHAOS U.KやDISORDERというノイズコアが発祥であり、代表的存在としてはAMEBIXが挙げられる。クラストコアというカテゴライズは、AMEBIXやCHAOS U.Kが活躍し始めた時代にはないものであったが、DOOMの登場により確立されたと言っても良いだろう。

 1990年代半ばに登場したDOOMは、それまでなかったD-BEATというカテゴライズを世界に定着させ、発売されたアルバムは世界のハードコア・パンク界に衝撃を与え、瞬く間にファンを増やしていった。そのファンたちがボロボロのファッションであったり、DOOMに影響されたバンドも増えてきたために、クラストコアというカテゴリーができたように感じる。初来日時にはDEATH SIDEで共演したが、その時点ではまだクラストコアやD-BEATという言葉すら存在していなかった。そういった存在のDOOMであるが、流石にファンが多く非常に盛り上がる。BLACK SABBATHのカヴァーもやるなどメタリックな面も持っており、DOOMここにありという素晴らしいステージをみせてくれた。

(写真=Henry Lugo)

 ほかにもイギリスからはEXTINCTION OF MANKINDがきており、ギタリストがDOOMと掛け持ちということもありクラスト系として認識していた筆者だったが、実際はmotörheadを彷彿させるサウンドに、ハードコア・パンクの要素が大きい骨太なサウンドを聴かせてくれた。

(写真=ISHIYA)

 ほかにもイギリスからはTHE RESTARTSが出演しており、ポゴ・パンク系として人気があるようで、モヒカンを立たせたパンクスなどの派手な観客が目立った客席だった。サウンドはスカやレゲエも取り入れた、非常に音楽性の高い素晴らしいもので、同性愛者に対する偏見に怒りを表した歌詞やMCのほかにも、フリーパレスチナのTシャツを着るなどメッセージ色も強く、かなり印象に残るバンドだった。

 こうして見ると、イギリスという国は、さすがパンク発祥だけありバラエティに富んでいるだけではなく、演奏やメッセージもしっかりとしたパンクスがたくさんいる国であることが非常によくわかり、イングランド・パンクの奥深さを再認識することができた。

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