MYTH & ROIDが“炎上覚悟”の新作をリリースした意図は?  Tom-H@ckとKIHOWに聞く

MYTH & ROID、“炎上覚悟”の新作

「いろんな方向の歌が求められる活動は得意なタイプ」

ーー個人的にMYTH & ROIDの楽曲は、毎回音楽的にすごく尖ったことをやってる部分があって、他のアーティストの曲ではあまり感じえない違和感が魅力だと思うんです。なおかつその違和感をすごくキャッチーな武器として使用されてる印象があって、そこが中毒性にもつながってると思ってて。

Tom-H@ck:そこは本当に売りですよね。それを失ったらどこにでもある曲になってしまうので、そういう部分はこれからも失いたくはないですね。大衆性も絶対に欠けてはいけない要素だと思っています。

ーーMVとジャケットに関しては、先ほど“炎上商法”を狙って作られたというお話もありましたが、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか。

Tom-H@ck:ジャケットのアートディレクションをしていただいたASOBISYSTEMの2BOYさんとMVの大河(臣)監督には、とにかく批判されてもいいからセンセーショナルなものを作ってほしいとお願いしたんです。それでジャケットではロープアーティストのHajime Kinokoさんという方に6人の裸の女性を亀甲縛りで吊るしていただきました。僕は企画が出てきた段階から「最高!」と思ったんですけど、KADOKAWAさん的には難しいかもと言われてしまい、最終的には「何か問題が起こった場合の責任は全部Tom-H@ckが取る」ということで何とかやらせてもらえました。でも、ジャケットを公開したら批判よりも「かっこいい!」という意見が多く、受け入れられてしまって。そこは思い通りではなかったなと思っています(笑)。

ーーたしかにジャケットは芸術作品のような美しさがありました。MVのほうは?

Tom-H@ck:こちらは血が流れてるシーンを表現したりしています。大河さんはセンセーショナルなものもスタイリッシュに見せられる方なんですよね。でもMVに登場するロボットが最後に聖典のようなものを燃やすシーンも盛り込んでもらって。あとは「(色は)白でやってほしい」という指定もしましたね。いままで白いものをやったことがなかったし、これからまた新しいものが始まるので、その表明みたいな意味を込めてるんです。

ーーカップリング曲の「Stormy Glory」についても聞かせてください。こちらはどんなイメージで作られたのですか?

Tom-H@ck:この曲は昔からあったもので、いままでのMYTH & ROIDとあまり変わらない路線なんですけど、表題曲がバラードなのでカップリングは激しい曲を入れようということで。いわゆるJ-POP方面のメロディなんですけど、それをMYTH & ROIDっぽく仕上げてます。次のシングルでは激しいものをやる予定なので、その伏線にもなってるんですよ。

ーーKIHOWさんは曲を聴いてどうでしたか?

KIHOW:この曲をいただいたときは、MYTH & ROIDらしいなと思いましたね。この曲は深く考えずに歌ったほうがいいなと思って、レコーディングも「HYDRA」と比べたら自分の体感時間では100分の1ぐらいの速さで終わったんです(笑)。私は普段あまり元気のないタイプの人間なんですけど、この曲の持ってるエネルギーに乗って明るい感じで歌ったらいいものになるという感覚があって。本当に自由に歌わせていただいて、一発ぐらいで終わりましたよね。

Tom-H@ck:今回から彼女に機材や簡単な防音設備を全部会社から買い与えて、自宅で録ってもらったんですよ。そのほうが自分の時間を作りやすいですし、経費削減にもなりますし。もちろんディレクションの必要なものに関しては今後もスタジオで録りますけど、この曲は初めて家で録ってもらった音源で、一発OKでしたね。

ーーサウンド面で工夫した部分はありますか?

Tom-H@ck:今回はアナログシンセのつまみをギュイーンと回して歪んだ音を作って、それを曲のなかでずっと鳴らしてるんですよ。以前に作った「JINGO JUNGLE」も音が歪んでるんですけど、それはデジタルで作った歪みだったんですね。でも今回はアナログの歪みをやっていて。次のシングルではまたインダストリアルロックをやろうと考えていて、そのときにただのノイズではなくて、アナログの歪みを使おうと考えているんです。その前段階として、この曲で試してみようと思いました。

ーーバラードで新生面を打ち出した「HYDRA」と、従来の激しいイメージをアップデートされた「Stormy Glory」、対照的な楽曲を収めたシングルになりましたが、MYTH & ROIDにとってどんな位置づけの作品になったと思いますか?

Tom-H@ck:この先も活動していく中で、結果として「HYDRA」は異端な曲になると思うんですよ。そんな曲をこのタイミングで出すのはすごいことだと思いますし、それをやってのけた曲ですね。ビジネスというよりも、アーティストとしていちばん挑戦した楽曲です。

ーー最後に、先ほどMYTH & ROIDのプランはすでに3年先まで組み立ててるとのことでしたが、今後はどのような活動を展望されてるのでしょうか?

Tom-H@ck:これはぶっちゃけ話になりますけど、MYTH & ROIDはいまCDとデジタルの売り上げを合わせると10万枚ぐらい売れてるんですよ。デジタルだけで7〜8万、CDもライフ実数で2万5千枚ぐらいのセールスがあって、若林プロデューサーからは「アニソン従来の展開だとピークポイントに近づきつつあるので、今後はどのようにユーザーに繋げていくかを考えよう」と言われているくらい。でも、僕はそんなこと全然思ってなくて、絶対にまだまだ広がるはず。それを証明するためにも、もっと一般層に向けて発信していこうと思っています。

 僕たちのようなアニソンの強みというのは、海外でも支持を得ているということなんですよね。これは海外で仕事をするようになってから実感したことですけど、僕がアニソンを作ってると言うだけでみなさんの顔色がいい意味ですごく変わるんですよ。だから今後アニソンがもっとメインストリームになるケースは出てくると思うし、それをちゃんとわかってるのは、メディアがアニソンに偏見を持った報道をすることの多い日本ではなくて、逆に海外の人にも多くいるのではないかと思っていて。いま日本でJ-POPよりもアニソンが上がってきたのと同じく、海外でも色々なバランス関係が変わってくると思うので、そのときに流れに乗って猛威を振るえるようなアーティストに育っていけたら、という展望はありますね。

ーーKIHOWさんは今後MYTH & ROIDでどんな曲を歌っていきたいですか?

KIHOW:今回の「HYDRA」やアルバムで私が歌った「雪を聴く夜」でも思ったんですけど、このユニットのボーカルというのは、ずっと同じことをするようなタイプではないと思うんです。私もかねてから、ひとつのジャンルに入り込むことはなくて、私自身の声を保ったままフィルターを通す感じでいろんなスタイルの歌を歌ってきたので、MYTH & ROIDみたいにいろんな方向の歌が求められる活動は得意なタイプだと思ってて。

 だから今後、いままでにないやり方の楽曲ができたり新しいことを行うときに、自分の力を発揮できるんじゃないかと思います。私は歌手なので作品とは言いづらいんですけど、「私がいままでやってきたことをやっと見てもらうことができた」というのを感じられるようになれたらいいですね。

(取材・文=北野 創/撮影=山田将史)

■リリース情報
『HYDRA』
発売:2月7日(水)
価格:初回限定盤¥1,944(税込)
通常盤¥1,296(税込)

<収録内容>
・DISC1
1. HYDRA
2. Stormy Glory
3. HYDRA (instrumental)
4. Stormy Glory (instrumental)

・DISC2
1. 特典Blu-ray

■関連リンク
公式HP

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