>  > 佐藤ひろ美&Faylan語る事務所の歩み

『三陸コネクトフェスティバル』

アニソン歌手から経営者へ 佐藤ひろ美とFaylanが語る、事務所運営のこれまでとこれから

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

  TVアニメ『創聖のアクエリオン』のリーナ・ルーン役で声優を務め、アーティストとして数々のアニメ・ゲーム主題歌を担当した佐藤ひろ美は現在、Faylan、蒼井翔太、櫻川めぐ、天野七瑠などが所属する音楽プロデュース・マネージメント企業「株式会社S」を立ち上げ、経営者としての手腕を存分に発揮している。今回は佐藤とFaylanにインタビューを行い、会社設立の経緯や、設立から10年で感じたこと、2月に佐藤の地元・大槌で開催される『三陸コネクトフェスティバル』について、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「社長というより、どちらかというとお母さん」(Faylan)

ーーまずは佐藤さんが株式会社Sを立ち上げた経緯からお話いただけますか?

佐藤ひろ美(以下、佐藤):私はもともとアニメソングやゲームソングを歌う歌手だったんですが、だんだんアニメの劇伴のディレクター業や、ライブプロデュース業等、歌手以外の仕事が増えてきたんですね。それでそれらの活動をしていくにあたって、2007年に自分の個人会社として株式会社Sを立ち上げたんです。そこからいろいろなアーティストをプロデュースするような形になり、現在は声優やアーティストをマネージメントする会社になりました。そのいちばん最初に所属した歌手がFaylanだったんです。

ーーFaylanさんが所属することになったきっかけは?

佐藤:彼女は学生の頃から仮歌のバイトをしていて、Sのグループ会社であるアリア・エンターテインメントに所属するElements Gardenという音楽制作集団が楽曲を作る際の仮歌を歌ってたんですね。そのなかで私の歌の仮歌も歌ってくれたりしてて、その頃から「なんて歌の上手い子なんだろう」と思ってたんです。仮歌を歌ってる人間のほうが上手い!(笑)、と思って影ながら応援してたんですが……。

Faylan:私は私でその頃ずっと歌手になることをめざして、他の事務所に所属して活動してたんですけど、会社が無くなってしまって。そんなときに月1ぐらいのペースで仮歌の仕事をいただいて、頻繁に佐藤さんにお会いして交流を深めているなかで、相談に乗っていただいたんです。

佐藤:もともと株式会社Sは自分ひとりでやっていこうと思ってたんですけど、昔から作詞作曲やイベント制作など「制作作業」「作っていくこと」が大好きでしたし、他のアーティストのプロデュースをするという自分の中の夢もあったので、Faylanの話を聞いたときに「うちでがんばってみないか」とお声がけしたんですね。

ーーFaylanさんは佐藤さんからお声がけいただいたとき、どんなお気持ちでしたか?

Faylan:うれしかったですね。

佐藤:よかったー!

Faylan:まず最初にElements Gardenの上松(範康)さんから「佐藤ひろ美からお話があるみたいだから、ちょっと行ってみてくれないか?」ということでお伺いしたら、事務所に所属するお話をいただいて。私はその頃、どうしても歌が諦め切れなくて、いろんなところで100近いオーディションを受けてたんです。いくつか受かったところもあったんですけど、高額なお金がかかるところだったりして、「どうしようかな」と悩んでは仮歌を歌っての繰り返しで(笑)。

佐藤:私はそれをずっと見てたんです。上松とも「もしFaylanがアニソンアーティストとしてやってくれるのであれば、私たちもマネージメントやプロデュースで手助けできるのに」と言っていて。ただ、Faylanはその頃J-POP系の歌手をめざしてオーディションを受けてたから。

Faylan:その頃は自分の声質とか歌い回しはR&B系のほうが合ってると思ってたし、ロックを歌ったり聴くこともなかったので、まさか自分がゴリゴリのロックを歌うようになるとは思ってなくて(笑)。でも本当にうれしかったですね。ずっとお付き合いさせていただいてる佐藤さんのもとでデビューできるのであれば、こんなにうれしいことはないし、どうにかして事務所を大きくしたいとも思って……。最初の頃は右も左もわからない状態でがんばらなくちゃと思って、必死で歌ってました。

佐藤:わー、うれしい!! もう泣いちゃうから(泣)。その頃のSはマンションの一室のすごく狭いところでやってたんですよ。

Faylan:だからさっきマネージャーに、三陸のイベント用にSでホテルをひとつ貸し切ったと聞いて「大きくなったなあ」と思って(笑)。

佐藤:あの頃は交通費も宿泊代もケチってたからね。私ひとりだけの事務所だったからお金も全然なかったし。

Faylan:当時は佐藤さんがマネージャーとして付いてきてくれてたんですよ。

ーーえっ! そうなんですか?

佐藤:そうですよ、だって私ひとりしかいないんですもん。たぶんデビューから5年ぐらいは私がFaylanのマネージャーとしてついてましたね。水を持って「どうぞ」って。

ーー現場で「あの佐藤さんが……!」みたいな感じにならないんですか?

佐藤:なりますけど二人三脚だからしょうがないですよね。他に誰もいないもん。

Faylan:そうなんですよ。だからPV撮影のときも常に佐藤さんに水を持って待ってもらってて。

佐藤:またFaylanのPV撮影のときは何故か天候が悪くてすごく寒いんですよ(笑)。外で寒空の中ガタガタ震えながら傘を持ったりしてたのに、いまは人も増えて、まさか社員が入るような会社になるとはねえ。2017年で10年になりましたけど、10年ひと昔でいろいろありましたっていう感じで、いま考えると笑っちゃいますね。

Faylan:だからそのころのことはこの2人しか知らないんです。

 

佐藤ひろ美

ーーSという事務所のファミリー感の強さは外から見てても感じられますけど、そういうところから始まってるのが理由のひとつなのでしょうね。

佐藤:そうだと思います。自分ひとりで1から積み木を重ねていくように作っていった会社なので、どうしても家族感みたいなものが出てしまって。

Faylan:そう、佐藤さんは社長というより、どちらかというとお母さんみたいな感じなんですよね。私がトイレ行くの怖いからついてきて、みたいなこともありましたし。

佐藤:そうなんです。外のロケのときに虫が怖いからトイレについて来いっていうんですよ(笑)。「ヤダーッ!」とか言うので、ずっとトイレの外で待ってて「もう大丈夫だから」とか言って。あと虫がいて歩けなくなっちゃって、ランティスの社員さんにおんぶしてもらったこともあって。

Faylan:あそこ、バッタ王国みたいなところでしたもんね。私は岩の上でピンヒールを履いて立たなきゃいけないロケだったんですけど、バッタが怖くてそこまで全然辿り着けなくて(笑)。

佐藤:そういう風に作ってきた会社だったんですよ。そこから一人増え、二人増え、妹や弟が増えていくような感覚でしたね。Faylanは長女で、上松さんはなかなか家に帰ってこないお父さんみたいなイメージで(笑)。

Faylan:上松さんはここぞと言うときにビシッと言ってくれるんですよね。

ーー佐藤さんはシンガーとしての大先輩でもあるわけで、Faylanさん的にはデビュー時から頼れる部分も多かったのでは?

Faylan:本当にそうでしたね。シンガーとしても大成功されてるので困ったときには相談して。ノドのケアや体調面はもちろんなんですけど、精神面がいちばん大きくて、最初の頃はメンタルな部分をどう持っていけばいいのか全然わからなかったので、それをコントロールしていただいたりとか。周りに頼れる人がいなかったので、佐藤さんがシンガーでもあるがゆえに孤独ではなかったことは、いちばんの救いだったかもしれないです。

佐藤:そう言ってくれて良かったです。メンタルの部分や体調の管理は同じシンガーじゃないとなかなかわからない部分だと思うんですよ。不安と孤独のなか、ひとりで戦わなきゃいけないので、その戦い方を教えるというか。

Faylan:私としては今の事務所の後輩たちを見てると、先輩とか後輩が何人かいて、周りを見て判断できるという環境や機会がたくさんあっていいなあと思うんですよ。私は当初まったくわからなくて、デビューして最初のステージが『アニサマ(Animelo Summer Live)』だったので。

佐藤:そうそう、それは酷なことをさせちゃったと思って。ありがたいことにランティスさんがFaylanをプッシュしたいということで、当時のプロデューサーだった斉藤滋さんがいろいろがんばってくださって、最初のステージがアニサマになったんです。ただ本人は生まれて初めてさいたまスーパーアリーナの大きな舞台に立つので、もう緊張で精神がグチャグチャになったんですよね。

Faylan:ギリギリまで泣いてましたもんね。

佐藤:そう、あのときはポップアップでボーンと出たんですけど、まずポップアップ自体が怖いって泣いてるし(笑)。あと緊張感でも泣いてて、なんか死にそうな感じだったよね。

Faylan:ポップアップの下で待ってるギリギリまでティッシュを渡されて、「大丈夫だから!」ってポンポンされてて(笑)。その時の映像を佐藤さんが撮ってくれてたんですけど、私は衣装を着て真っ赤な口紅をつけてるのにとにかく表情が暗いんです(笑)。

佐藤:いまだから笑って話せますけど、その時は「この子、アニサマの舞台をちゃんと全うできるの?」って思いましたからね。

Faylan:それは本人を含めてです(笑)。

 

Faylan

ーーでもいざステージに立ってみたら……。

Faylan:がんばりました!

佐藤:がんばったよねえ! 歌ったのは「mind as Judgment」というシリアスな曲だったんですけど、鬼気迫る感じですごく良いステージだったんですよ、彼女は恐怖感からそうなったのかもしれないですけど(笑)。

Faylan:またその時が奥井雅美さんとのコラボだったので、もう心臓が持たないと思いましたね(笑)。でも最初にその恐怖を勢いでバッと乗り越えたので免疫ができて、その後のお仕事は大丈夫になりました。

佐藤:一回心臓をつぶすみたいな荒療治ですよ(笑)。それからはどのステージでも堂々とパフォーマンスができるようになったので。

「アニソン歌手から経営者へ 佐藤ひろ美とFaylanが語る、事務所運営のこれまでとこれから」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版