>  > MYTH & ROID、“炎上覚悟”の新作

2ndシングル『HYDRA』インタビュー

MYTH & ROIDが“炎上覚悟”の新作をリリースした意図は?  Tom-H@ckとKIHOWに聞く

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 Tom-H@ck率いるクリエイター集団・MYTH & ROIDが、2月7日にシングル『HYDRA』をリリースした。同作の表題曲はアニメ『オーバーロードII』のエンディングテーマとなっており、彼らのクリエイティブにおけるテーマ「感情の最果て」を今回も表現した1曲に仕上がっている。

 シングル全体では1stアルバム『eYe’s』に続き、2代目ボーカリストのKIHOWが歌声で楽曲を彩り、ASOBISYSTEMの2BOY、MV監督の大河 臣、ロープアーティストのHajime Kinokoといった気鋭の作家陣とともに、「炎上覚悟」で作り上げたという同作。Tom-H@ckとKIHOWに、その真意を聞いた。(編集部)

「アーティストは上手に転換することが大切」

ーー今回のニューシングル『HYDRA』は、昨年4月に発表された1stアルバム『eYe’s』以来の新作となります。その間には初代ボーカリストのMayuさんの卒業もありましたが、ユニットとしても一区切りして新たなモードに突入する意識があったのでは?

Tom-H@ck:二代目ボーカリストのKIHOWがメインで歌うタイアップ楽曲のリリースということで、表向きではいろんな反応が起こることは予想してたんですけど、自分たちのやりたいことや目指すところははっきりと決まっていましたし、これからも向かう先にブレはないというのが今の正直な気持ちですね。

ーーKIHOWさんは『eYe’s』からボーカリストとして参加されてますが、改めてMYTH & ROIDの歌を一人で担うことになって、心持ちの変化はありましたか?

KIHOW:MYTH & ROIDはまず楽曲の世界観や歌詞ありきで歌があるので、たぶん『eYe’s』の段階では、私の存在に気づいていない人もいたと思うんですよ。でも今回のシングルはいままでと曲調が違いますし、声の出し方も変えてるので、ボーカリストが変わったことに気づく人も多いでしょうし、そのことをプラスとして受け止めてくれたらというのが私の希望ではあります。もちろん多少の不安はあるんですけど、私はファンのみなさんありきの音楽だと思ってるので、受け入れていてくれれば嬉しいですね。

KIHOW(左)とTom-H@ck(右)。

ーーTomさんとしては「自分たちのやりたいことははっきりしてる」とのことですが、KIHOWさん体制のMYTH & ROIDを新たに展開していくにあたって、今回の作品では具体的にどんなプランがあったのでしょうか?

Tom-H@ck:プランみたいなものは、いつも向こう3年ぐらいのことを全部考えるようにしているんですけど、今回はタイアップ作品でもあるので、まず最初にアニメ側から「激しい楽曲ではなくバラードを作ってほしい」というオーダーをいただいたんです。これまでのMYTH & ROIDのシングル曲で言えば「STYX HELIX」ぐらいしか静かな感じの曲はなかったので、僕としてもどこかのタイミングでバラードをやろうとずっと思っていました。というのも、いままでMYTH & ROIDでやってきたような刺激の強い音楽は、食べ物でいうとものすごく辛い担々麺みたいなもので、そういうのは食べれば食べるほど飽きも早いんです。だからどれだけ世を席捲したとしても寿命は短いと思うし、その命を長く回していくためにはいろんなやり方や音楽的な技術があると考えていて。

ーーそのやり方のひとつが、これまでの自分たちのイメージとは異なる“バラード”を発表することであると。

Tom-H@ck:これが次のMYTH & ROIDの勝負曲になるだろうし、僕らがバラードを歌った瞬間にいろいろと言われたり、何かが起こるであろうことは予測できてたんですよ。KIHOWはまだアーティスト活動を始めて1年ぐらいなので、「何でこんなにいろんなことを言われるんだろう?」という気持ちになってると思うんだけど。

KIHOW:そんなことないですよ(笑)。

Tom-H@ck:でも、僕としては全部想定の範囲内だったりします。このシングルをリリースすることが決まったときも、KADOKAWAさんには「MVやジャケットも含めて炎上商法で売りましょう」という風に提案したんです。それが上手くいったのか、イニシャル(初回売上枚数)やYouTubeでのMV再生数のスピードもいままでの作品でいちばん好調という話なので、いまのところは良い意味で全部狙い通りだなと。あと意外だったのが周りのアーティスト、音楽家、業界関係者からもすこぶる評判が良くて、アニメ第一話放送終了と同時に「HYDRAを聴いて感動しました」的な感想のLINEが来たり(笑)。周りの反応は自分でもちょっとびっくりするくらいでした。

 あと、ビジネス的な考えを取り除いても、MYTH & ROIDはいま転換期にあると思っていて。アーティストというのは上手に転換することが大切で、よく2ndや3rdアルバムで雰囲気が悪くなってダメになるという話がありますけど、それをちゃんとできた人たちはその後も生き永らえるんですよね。そういう意味でも今回の『HYDRA』は数字から見ても成功した楽曲なのではないかなと思ってます。

ーー新しいMYTH & ROID像をアピールする作品になったわけですね。

Tom-H@ck:はい。この次のシングルはタイアップがあろうとなかろうと、以前のMYTH & ROIDみたいに激しいインダストリアルロックで英語の歌詞もたくさん入っているものにしようと思ってて。それが発表されると今度は「戻ってきた!」という反応があってみんなが安心する。さらに応援してくれる人も増えるだろうし、そこでアーティストとしての足場はある程度作れると思うんです。もうそこまでの道筋は自分の中で出来上がっている。これはあらかじめ言っておきますけど、絶対にそうなる確信があったりします(笑)。

ーーそういったビジネス的な視点とは別に、アーティストとして今作で表現しようと思ったことは?

Tom-H@ck:MYTH & ROIDとしては“感情の最果て”というものをずっと表現してきてるんです。それは例えば“悲しみ”や“ノスタルジー”といったものなんですけど、「HYDRA」は「L.L.L.」(『オーバーロード』第1期エンディングテーマ)と同じで“狂気的な愛”を表現してほしいとアニメ側に頼まれたんです。なので今回は“自己犠牲の愛”というテーマで、自分が犠牲になって相手に縋りつくような愛を表現しました。『eYe’s』の時点でもいろんなことに挑戦しましたが、音楽的にはもっと幅広くなると思います。実は2ndアルバムの話ももう持ち上がっていて、そこではもっと「こんな顔があるんだね」という部分を出そうかなと。

ーー今回のバラードへの挑戦は、2ndアルバムで表現する幅広さの第一歩でもあるんですね。

Tom-H@ck:そうなんですよ。今回は本当に初めてのことがいっぱいあって、まずボーカルが変わったこと、そしてシングルでは初めてのバラード。それに加えて面白いのは、今回って歌にほぼ修正を加えてないんですよ。普段はピッチ修正とかロボットボイスっぽく加工することが多くて。ピッチを整えると気持ちよくはなるんですけど、実は音程が少しフラットしてるけど個性や歪(ゆが)みがすごく強いもののほうが、街角とかラジオで耳にしたときに絶対的に心に残るんですよね。だからボーカルを録るとき、KIHOWには泣くぐらい感情的に歌ってほしいとお願いしたんです。

ーーバラードは細かな感情の機微の表現が大切ですし、そういう意味でもマッチする作り方なのかもしれません。

Tom-H@ck:これは結果論なんですけど、「HYDRA」って最初のデモの段階では全編英語の歌詞だったんですよ。

ーーあれ? 「HYDRA」は全部日本語詞なので完全に逆だったんですね。

Tom-H@ck:そう、これは僕の尊敬しているKADOKAWAのプロデューサー・若林(豪)さんが「バラードはどのアーティストでも絶対的に売り上げが落ちるので、リスナーに歌詞をダイレクトに突き刺すことが先決」とおっしゃられて。それで作詞家のhotaruと相談して、全編日本語詞でやることにしたんです。当初予定してた英語のバラードの場合は、歌声をバキバキに加工しても成り立つんですけど、日本語のバラードで声をバキバキにするとダサくなるんですよね。だからその手法は使えなくなって、それをどのように表現するかと考えた結果、歌声を極力修正しないことにしたんです。

ーーなるほど。

Tom-H@ck:でも僕の経験上だと、批判のあるもののほうが売れるんですよね。僕が作家として初期の頃にヒットさせた曲というのは『けいおん!!』の「GO! GO! MANIAC」という曲で、これがオリコンの週間ランキングで声優さん歌唱のアニメ主題歌で初の歴代1位になって評価してもらえたんですよ。でも、その曲もリリース前に「早送りしてるんじゃないの?」とか「こんなのは音楽じゃない」とかボロクソに言われたんです。本当に今だから言いますけど、リリース前は批判の嵐でした。

ーー批判があっても売れるということは、それだけ新しいところに届いてる証拠ですよね。

Tom-H@ck:”好きの反対は嫌いではなく無関心”という理論に通ずるものがあるのかもしれませんね。今回のシングルはまず新規開拓ができてるし、あとは「MYTH & ROIDといえばこれだよね」というブランドが定着してきたので、その2つが前評判に繋がってると思いますね。

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