“ネガティブ”な歌詞が共感を呼ぶ? 寂しい冬の夜に聴きたくなるバンド4選

 近年日本のバンドシーンを見ていると、ある意味「ネガティブ」とも取れる歌詞の魅力で支持されるバンドが増加傾向にあることに気づいたりはしないだろうか。もちろん、失恋をはじめとする切ない経験を歌った楽曲はいつの時代も音楽のスタンダードな表現方法のひとつであり、急にはじまったことではない。けれども、そうした楽曲の魅力がバンドのアイデンティティの大切な部分を占めるアーティストが、増えつつあるように感じられるのだ。

back number「瞬き」MV

 中でも今最も支持されているバンドは、やはりback numberだろう。清水依与吏(Vo/Gt)が描く歌詞の世界は基本的に恋愛、それも失恋や叶わぬ恋を題材にしたものが多く、それを魅力的にしているのは、感情の機微を巧みに表現する精緻な言葉遣い。12月20日にリリースされた映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の主題歌「瞬き」も、そうしたバンドの魅力を生かして、奇跡をただ美談にするのではなく、そこまでの日常に目を向けて<幸せとは/星が降る夜と眩しい朝が/繰り返すようなものじゃなく/大切な人に降りかかった雨に傘を差せる事だ>と歌っている。現在の人気はその描写の巧さが共感を呼んだ結果と言えるはずだ。

My Hair is Bad「元彼氏として」MV

 一方、My Hair Is Badの歌詞にも、失恋や失ったものへの未練を歌った楽曲が多くある。たとえば、極端な楽曲のひとつ「元彼氏として」では、好きな子の今の彼氏と、元彼氏である自分とを比べ、<今は君の彼氏じゃない/でもそいつはマジで寒いんじゃない>と歌っている(今年発表した最新アルバム『mothers』にセルフアンサーソングと言えそうな「元彼女として」が収録されたことも記憶に新しい)。彼らの楽曲には失った恋への未練がいい思い出/温かい記憶と結びつくような感覚があり、その雰囲気が何よりの個性になっている。

感覚ピエロ「疑問疑答」MV

 もう少し振り切ったエッジーな表現を持った歌詞を挙げるなら、感覚ピエロのようなバンドの楽曲もその系譜と言えるのかもしれない。もともとメタな視点を盛り込んだ歌詞が書ける彼らの場合、たとえば映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』の主題歌となった2017年の「疑問疑答」では、1995年に起きた5件の連続殺人事件の犯人を名乗る男を描いた作品のテーマに合わせて、苦悩や葛藤といった感情を激しい演奏に乗せて表現。同時に、その奥にもうひとつメッセージが浮かんでくるような技巧的な雰囲気の歌詞に仕上げている。

 こうして見てみると、多くの人々に支持されるネガティブな歌詞とは、感情を単純化して割り切るのではなく、本来曖昧なはずのそのディテールを細部まで描写することで実現できるものなのだろう。それでなくとも、ロックバンドという形態は苦悩や激情のように「負の感情」と言わるものをアートに昇華することに長けている。こうしたバンドの活躍は、人々の「よりリアルな感情表現に触れたい」という気持ちの表われなのかもしれない。

 だとするなら、今10代~20代前半を中心に注目されつつあるのが、大阪を拠点に活動する3ピース・バンド、reGretGirlだ。彼らは今年公開した「ホワイトアウト」のMVなどを起点に一気に人気を集め、12月13日に6曲入りミニアルバム『my』で全国流通盤デビュー。Apple Musicの「今週のNEW ARTIST」にも選出されるなど話題を呼んでいる。

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