“ネガティブ”な歌詞が共感を呼ぶ? 寂しい冬の夜に聴きたくなるバンド4選
彼らの楽曲の特徴は、すべての歌詞が「後悔」を歌ったものであること。というのも、reGretGirlは平部雅洋(Vo/Gt)が女の子に振られたのを機に「有名になって振ったことを後悔させてやる(=後悔女子/reGretGirl)」とはじめたバンドで、『my』の楽曲には彼の実体験が色濃く反映されている。だからこそ、歌詞にはかなり赤裸々な恋愛のエピソードが登場する。たとえば1曲目の「ホワイトアウト」は、電話口で震える声で別れを告げられた瞬間の頭が真っ白になるような感覚を綴った曲。続く「デイドリーム」では家に残された黄色い歯ブラシを見て「夢じゃなかったんだ」と後悔する冒頭から徐々に感情が高ぶり、<僕の知らない誰かと同じ右手を繋ぐとか><僕の知らない誰かと同じキスをするとか><……迎える初めての夜とか><……下の名前で呼び合うとか>と延々妄想を繰り広げる。そして3曲目の「二色浜」では、かつて彼女と訪れた浜辺にひとりで向かい<目の前の海に飛び込んで溺れて死んでしまえば><もういっそ死んでしまいたい気持ちだけで生きてるよ>とむせび泣く――。
以降の楽曲も含めて、どの曲にもかなり細かいディテールを想像させる多種多様な言葉が並び、それがサビのキャッチーなメロディや、エモーショナルなストロークで感情の高ぶりを表現するギターサウンドとがっちり噛み合っている。そしてその具体的な歌詞の数々が、どの曲のどの瞬間を切り取っても、ただ「君が好きだ」というたったひとつの意味にしか聞こえないことが、彼らの楽曲の最大の魅力になっている。パーソナルな方向に振り切っているからこそ、感情のリアリティやエネルギーに多くの人々が共感できるのだ。
そもそも、SNSで様々な人の日常を垣間見られる現代は周囲を見て容易に空気を合わせることが可能であり、自分の感情を素直に爆発させる姿はそう簡単に見せられはしない。そんな中にあって、人目を気にすることなくストレートに感情を吐き出す歌詞&サウンドのクオリティの高さと、ノーガードで全部をさらけ出すような姿勢&ポップなメロディが生むある種の爽快感が、reGretGirlが支持されはじめている理由のひとつではないかと思うのだが、どうだろうか。
少なくともこの『my』には、女の子に振られてはじまったこのバンドならではの初期衝動が、溢れんばかりの熱量で詰まっている。一緒に過ごす相手のいない冬の夜に聴いてしまったら、あなたも色々な感情のスイッチを押されてしまうかもしれない。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。