映像作品『MORE FREEDOM』インタビュー
HEY-SMITH 猪狩秀平が語る、ライブとの向き合い方 「使命感はしんどいけど、夢がある」
「理由がはっきりしてないと気持ちが入らない」
ーーこの『STOP THE WAR TOUR』でもさまざまなバンドと対バンをしてきましたが、一緒にやってみたいバンドはどういう基準で選んでいますか。
猪狩:全部、俺が選ぶんですけど。打ち上げとかでお酒飲んで楽しかったやつか、かっこいい人間やったやつ。だいたい、飲んだらわかるので。それか、ライブを見てライブがかっこよかった人。音楽はあまり審査基準に入ってなくて、ライブがかっこいいかどうかですね。
ーーということで、かなりたくさんライブも見ている。
猪狩:行きますね。暇やったら週5回くらいライブハウス行ってます。「これ、かっこいいらしいで」っていう、言ってる本人が見たこともないけど、「かっこいいらしい」というバンドでも見に行ってみる。ほんまに、普通にチケット代払って、ドリンクもらって飲みながら見て、2、3曲見てかっこよくないやん、帰ろうとか(笑)。普通のライブキッズと一緒です。かっこよくなかったら、ライブハウス出てその足で、渋谷とかやったら近くでどんなライブやってるか調べて、行ってみるとか。
ーーそこで、かっこよければ声をかけたりするんですね。
猪狩:そう、かっこよかったですって言いに行くだけ。
ーー「え、猪狩さんだ」ってなりません?
猪狩:なるときもあるし、ならないときもあるしで。それで対バンで呼ぶこともありますね。結構前の話ですけど、OLEDICKFOGGYとかENTHはそうやったと思います。今回のツアーでは予定が合わずにダメでしたけど、ハードコアのバンドでVIVISICKも、めっちゃかっこよかったですね。
ーーいろんなイベントやツアーのお誘いを受けるときはどうですか。
猪狩:理由がいちばん大事になります。こういうところで、こういうのを見て、こう思ったからやりたいんだとか。それがいちばん大事ですね。関係性が大事。日にちと日程と対バンだけ送ってくるイベンターとかいるんですよ。で、これ何のイベントなん? っていう。お客さん入りそうやけど、誰のために、誰がやるの? っていう。そこが、はっきりしてないとイヤなんですよ。気持ちが入らない。
ーーそういう話を聞くと、いかにライブを大事にしてきたがわかりますね。
猪狩:高校とか、中学校くらいからライブハウスに行っていたので、普通になっているんです。有名なアーティストとかに、ライブを見に行ってCDを渡したり、何度も来日していて出待ちも入り待ちもしてるのに会えないとかやったらもう、ステージにCD投げてましたもん。外タレとかはとくに。ライブ後にCDを振って「もらってー」とかやるけど、もらってくれないから投げつけてた(笑)。
ーーそれで繋がったこともありましたか。
猪狩:あるあるある。それこそNOFXにも投げたことあるな。3月に初めて一緒にやるんですけど……まあ、それきっかけじゃないと思いますけどね(笑)。Kottonmouth Kingsも、そんなんやった気がするな。確か、それでライブ見に行かせてもらった気がする。NOFXは、〈FAT WRECK CHORDS〉にCDを送ったこともあるし、返事が返ってきたこともある。そういうのは全然やってる感じです。みんなと一緒です。
ーーそれくらいの熱意は必要なんですね。
猪狩:全員やってると思いますよ、これは。やってない奴は、大人が動かしてる感じがあるかもしれないですけど、長持ちしないですからね。大人のやる気がなくなったら終わりなので。大人はね、採算取れなくなったらやる気がなくなるから。
ーー2012年にスタートした、SiMとcoldrainとHEY-SMITHとの『TRIPLE AXE TOUR』が今年も開催されましたが、この3バンドは今ともにいい状況になっていますね。ツアーをはじめた頃も、大きくなっていこうという気持ちが強かった3バンドだったんですか。
猪狩:そうですね。いちばん最初は、6バンドくらいで回るかみたいな感じだったんです。2010年くらいに『京都大作戦』の牛若の舞台に出てたやつらが、メインで出ているバンドや他の出演バンドよりも、絶対俺らの方がかっこいいってなって。coldrainとSiMと俺らと、EGG BRAINとNUBOとSHANKかな。それで、俺らでなんかしようってなったのがはじまりで。最初から1カ月くらいのツアーをやろうとしていたから、なかなか予定が合わなかったり。ただの対バンじゃなく、ちゃんと名前をつけたツアーじゃないとダメだっていうので、最後まで、スケジュールがガチッとあったのが、SiMとcoldrainとHEY-SMITHだったんです。1年目はそうやったと思う。全員やる気はありましたよ。
ーーそれで1年目をやって、手応えもあったんですね。
猪狩:めっちゃありましたね。こんなところ売り切れる? っていう場所も売り切れたり。ファイナルが赤坂BLITZやったんですけど、当時はみんなO-WESTとかも埋められてなかったと思うから、BLITZいける? っていう感じやったんですよ。でも3バンドが集まったことで、ぐいっと注目が上がって。チケットの先行予約で、キャパを大幅に超える応募が来て。とくにSiMは状況も変わってどうすんの、ほんまっていうところだったんですよね。それでツアー直前に、「KiLLiNG ME」が入ったアルバム『SEEDS OF HOPE』が出て。それでいい感じになって。
ーー今では人気のツアーになってますし、みんなチケットが取りづらいバンドにもなってます。HEY-SMITHにしても、こうして、アリーナという会場でライブをやるまでになったのは、何が大きかったと思いますか。
猪狩:あまりそこまでぐっと広がってないんですよね、HEYは。SiMはぐっと広がったかもしれないですけど、俺らはすっごいゆるい階段を上がっている感じで。口コミで、あれいいらしいでってみんなが言ってくれたとかあるんじゃないですか。
ーーライブを見てくれた人の、気持ちだったり評価があってのことだと。
猪狩:決定的な曲とか決定的なステージがあったとかではないと思う。なんか気づいたら、ずっとおるなみたいな感じやと思うんですけどね(笑)。
ーーフェスでも大きなステージを任されたりと、英語詞のバンドでパンクバンドで、インディーズのバンドでここまでできるって、すごく夢がある話ですよね。
猪狩:それはほんまそうやと思います。夢があるなと思う。同じメンツのフェスいっぱいあるじゃないですか。またこの会社の人出てるなっていう。なんでこいつが出れるんだ? とかあるじゃないですか。そういうなかで、ポンと出れることも多いので。ありがたいですよね。
ーー夢があるところもっと見せていかなといけないんじゃないですか。
猪狩:いやあ、そんな使命感はしんどいので(笑)。気楽にやりますけど。
(取材・文=吉羽さおり)
■リリース情報
『MORE FREEDOM』
発売:2017年3月29日(水)
DVD:¥4,200(税抜)
Blu-ray:¥5,200(税抜)
特設サイト
■ライブ情報
『HEY-SMITH 2017全国TOUR』
7月12日(水) なんばHatch
7月17日(月・祝) 高松オリーブホール
7月27日(木) 仙台RENSA
8月5日(土) 大分Bitts HALL
8月13日(日) Zepp名古屋
8月26日(土) Zepp札幌
9月3日(日) 新木場Studio Coast
『HEY-SMITH Presents“OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2017”』
9月10日(日) 泉大津フェニックス
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