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メジャーデビュー・アルバム『百六十度』インタビュー

ヒグチアイが明かす、挫折から再生までの道のり「自分の過去は「敵」ではないと気づいた」

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「『誰にも理解されなくたっていい』っていうのは卑怯」

ーー「備忘録」という曲の中で、ヒグチさんの半生が赤裸々に書かれていますよね。<中学二年生の頃、変わったね、と言われていじめられてからもう10年以上経ちます>という歌詞も強烈です。

ヒグチ:さっきも言ったように、人って本当に裏切るんですよ。「いじめ」とかじゃなくても、中学二年生じゃなくても、誰にでも起こりうることというか。ただ、自分が「いじめられた」とか、そういうことを歌詞にして歌うのは卑怯なんじゃないか? という気持ちも一方ではあるんですよね。

「ぼくとおばあさん」ミュージックビデオ

ーー「備忘録」は他にも、<人に嫌われない術を身につけたかわりに自分のことを嫌いになって 押し殺した感情腐らせても捨てる場所はないのです>とか、あるいは「ハダノアレ」という曲の中に出てくる<NOと言えなかった浮気性と 自己否定の盾に嫌悪 許す優しさより弱さが勝る>というフレーズに、胸えぐられる人は多いと思うんです。

ヒグチ:そう言って貰えると嬉しいです。本当に自分のことしか書いてないし、自分のことを聞いてほしいという気持ちで書いたものなので。そうやって共感してもらえたら、「曲にした甲斐があったな」って思えますね。気持ちを持ち続けるのって難しいじゃないですか。忘れたくないことでも忘れちゃったりするし、そういうのをいつでも思い出すために(「備忘録」に)書き記したところもありますね。

ーー<ちやほやされてできたものは19で消えた 身体切り刻んでできたものは今も宝石>とも歌っているじゃないですか(「備忘録」)。自分のことはあまり好きじゃないっておっしゃっていましたが、身を削るような気持ちで、ありのままの自分を表現してきたことで、少しは自分を肯定できたところはないですか?

ヒグチ:そうですね。これまでずっと、「この気持ちは自分だけのものかも知れない」って思っていたことも、「まずは表明してみよう」と思って歌詞にしてみたことで、自分自身の立ち位置が少しずつわかってきて。しかも、そうやって書いた曲が、いろんな人たちに共感され、CDを買ったりライブを観に来たりしてもらえて。そのおかげで自分自身も救われていると思いますし、ヒグチアイの音楽が意味を持つようになったと思っています。

ーー曲を作り、誰かと共有することが一種のセラピーというか。

ヒグチ:そういう部分はあると思います。「自分のために書いたんだから」というのを言い訳にして、「誰にも理解されなくたっていい」っていうのは卑怯だと思うんですよね。やっぱり誰かに分かってもらいたいし、誰かに寄り添いたいです。

ヒグチアイ / 備忘録

ーー「ぼくとおばあさん」は、おばあさんへの愛をうたいつつラブソングにも聞こえますよね。しかも、一人称が「僕」だったりして。個人的な体験、心情を普遍的な作品に昇華させようとしているのかとも思いました。

ヒグチ:実はあの曲、「犬とおばあさん」という設定なんです。おばあさんが先に亡くなってしまった時の、犬の気持ちを歌ったんですよね。<一番 最初の幸せくれたあなたに 一番 最後の幸せあげたい>っていうのは、うちの母親が病気になって手術をした時に思ったことなんです。ただ、母親にそのことを知られるのはものすごく恥ずかしいし、それで泣かれたりしたらもう二度と歌えなくなくなると思うんですよ(笑)。だから、犬目線の設定にしてごまかしているのかも知れません。

ーーこれまでずっとヒグチさんは、ラブソングを中心に書いていたわけじゃないですか。届かぬ思いだったり、喪失感だったり、三角関係、あるいは「道ならぬ恋」を匂わせるものだったり。

ヒグチ:はい。

ーーそれは何故なのかなと考えてみたのですが、「恋愛」って他者と対峙すると同時に、自分とも向き合わざるを得なくなりますよね。そういう意味で、誰にとっても重要なテーマだと思うからこそ「恋愛」について歌っているのかなと思ったのですが。

ヒグチ:うーん、でもどうなんだろう。どのくらいの人が今、恋愛しているのかわからないけど…(笑)。自分は恋している時の方が、心がたくさん動くし、リハビリじゃないけど、色んなことに楽しくなれたり、悲しくなれたりするから、恋愛している方が人生楽しいんじゃないかなって思ってます。なんか、これを聴いて「恋したいな」って思ってもらえたらいいな(笑)。それで、気持ちがたくさん動いてくれたら嬉しいですね。

(取材・文=黒田隆憲)

■リリース情報
『百六十度』
発売:11月23日(水)
価格:2,315円+税
<収録曲>
1、誰かの幸せは僕の不幸せ
2、猛暑です
3、ぼくとおばあさん
4、さっちゃん
5、衝動
6、恋人よ
7、霙 (みぞれ)
8、ハダノアレ
9、アイカギ
10、シンプル
11、備忘録

■ライブ情報
『ヒグチアイ「百六十度」ツアー2017〜東名阪ワンマンライブ』
1月7日(土)渋谷 WWW
1月9日(月・祝)名古屋 ell. SIZE
1月10日(火)大阪 Music club JANUS

ヒグチアイオフィシャルHP

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