石井恵梨子の「ライブを見る、読む、考える」 第4回:Age Factory

奈良発オルタナティヴ新鋭、Age Factoryは“今”だけを見ている――石井恵梨子のライブ批評 

 連載の第二回で、オルタナが地方に戻っていく流れを書いた。例として挙げたのはLOSTAGE。15年ずっと奈良で活動し、地元発信にこだわってきた彼らの遺伝子は、地元の若手にゆっくり確実に浸透していっただろう。今、そこから新しい動きが生まれている。

 俎上に載せたいのはAge Factory(エイジ・ファクトリー)。奈良在住のスリーピース。ギターボーカルの清水エイスケが22歳、ベースの西口直人が23歳、ドラムの増子央人が24歳という若きバンドである。結成は清水が高校1年生だった6年前。最初からオリジナル曲に挑んでいたという。強く影響を受けたのは、bloodthirsty butchetsを筆頭とする札幌のオルタナ・シーン。ただし「最初に聴いた時はまったく良さがわからなかった」というから、それはそれで15歳の平均的感覚だと思う。2010年に中高生が飛びつくロックバンドといえば、9ミリ(9mm Parabellum Ballet)や時雨(凛として時雨)であり、THE BAWDIESやthe telephonesだったはずだから。

 だがAge Factoryの地元は奈良だった。拠点となるライブハウス、NEVER LANDに行けばLOSTAGEが全国からバンドを招聘して自主企画を行っていたし、2011年から五味岳久は自主レーベルを立ち上げ、翌年にはレコードショップ『THROAT RECORDS』もオープンさせている。店に行けば五味本人がいて、彼がセレクトした数多の音源に触れることができるのだ。これは地元の10代にとってどれほど大きいことかわからない。清水エイスケが語る。

「LOSTAGEの活動を目の前で見て、どういうシーンでやって、どういう思想で地元に還元しているのかを感じた時、“いい音楽である”とかの概念じゃなくて……“男の本気を見た”っていう気がしたんです。だったら僕たちもちゃんと考えて、ほんと自分たちの思い描くオルタナティヴを体現化したいと思うようになりましたね。それが、高校2年生の時です」

 2014年に現メンバーが揃い、そこからミニアルバムを2枚発表。いよいよ完成した1stフルアルバム『LOVE』では五味岳久にプロデュースを依頼した。繋がっていくバトン。決して王道とは言えないオルタナティヴ・ロックだが、若い彼らは強気で攻めるのみだ。五味は「地元の先輩である俺たちをまず超えていく、みたいな気概は感じる」と話しているし、清水エイスケは「ずっと対バンには困っていたけど……」と前置きしつつも、こう言い放つ。

「べつに同じようなバンドを探してたわけでもないんです。こういう音を懐かしいと感じる人もいるだろうけど、今は新しいって感じてくれる人もいるだろうし。うん、僕たちが新しいバンドになろう、自分たちが時代になりたい、っていう考えでしたね」

 頼もしい。どこまでやってくれるのか。9月27日、新代田FEVERでAge Factoryのライブを見た。

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