『レキシツアー 遺跡忘れてませんか?〜大きな仏像の下で〜』レポート
「お館様」の華麗なるレキシワールド! ツアーファイナル武道館公演を観た
「アンコールはむしろ見ないほうがいいかも」と意味深な発言を残していったんステージを去ったレキシが、再び姿を現したとき、バンドメンバーは全員一休さんの衣装。アニメ「一休さん」のオープニングテーマをバックに、おもむろにコミカルなダンスを披露する。「さあ、茶番のはじまりだ!」という宣言のもと、まずは「一休さんに相談だ」を歌唱。ここで再び劇団シキブが登場し、「屏風から虎を出す」有名なエピソードをネタにしたコントを展開。ノリノリの八嶋とともにひとしきり笑いをさらったあとはレキシ的大名曲「狩から稲作へ」がおごそかに始まる。武道館に稲穂が揺れ、文明の進歩を歌った大スケールの楽曲は、途中DREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」に脱線し、「ラ〜ブ、ラ〜ブ、稲を叫ぼう」と謎の合唱へと発展。このまま大団円に持ち込まれるかと思いきや、最後のゲスト、やついいちろうが登場。レキシが出演したドラマ『99.9 –刑事専門弁護士-』にちなみ、松本潤の出で立ち(自前)で現れるも、会場の冷たい反応に逆ギレし、笑いを誘った。ラストは出演者全員で再度「KMTR645」を熱唱。全15曲、3時間に及んだライブは幕を閉じた。
改めて思うのは、なにをおいてもレキシの愛されぶりだ。もはやいっぱしのフェスが開催できるくらいのゲストミュージシャンはもちろんのこと、クールな佇まいながらどんなフリにも全力で応えるバックバンドのメンバー、そして数あるライブの“お約束”を一分も違わず遂行するファンたち。すべての人が彼を愛し、彼のパフォーマンスに笑顔を見せる。むしろ演奏よりもトークのほうがメインなのではと思わせるほど、どこまでも脱線していくレキシワールドをも許容してしまう何か。それは戦国時代の武将よろしく、類まれなるカリスマ性なのかもしれない。J-POP界の「お館様」を唯一無二の存在たらしめるのは、このレキシ取り巻く人々の愛そのものだと、実感するライブだった。
(文=板橋不死子/写真=田中聖太郎)