AKB48チーム8はガラパゴス的に進化を遂げた? 地元からも愛される活動形態を読む

AKBチーム8の“ガラパゴス的進化”を読み解く

 2016年7月8日より、ドキュメンタリー映画『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』が公開されている。すでに見たファンも多いかもしれないが、同作はAKB48を扱ったドキュメンタリー映画の5作目で、監督の石原真氏がカメラを持ち、10周年を迎えたグループ内部に迫った作品だ。

 映画は、2016年6月に開催された選抜総選挙のシーンに始まり、初代総監督高橋みなみの卒業コンサートの場面では、初期からAKB48を支えてきた前田敦子、大島優子らが高橋みなみを囲んで「私たちのAKBが終わった」と言っていた。そして現総監督の横山由依は「AKB48の第1章が終わった」と語っていたシーンがあり、それに対しほかのメンバーらが「何回、第2章あるんだ」「いま、何章?」と問いかけるシーンが流された。AKB48は現在、第何章でどこにあるのか。それはメンバーや後世の歴史家が判断すればいいことだ。ただ1つだけ確実なのは、AKB48というグループは止まることなく進化し、発展しているということだ。

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熱狂的なファン「エイター」に支えられているチーム8

 映画の中でも取り上げられていたが、AKB48グループの中で、現在一番アイドルファンからの注目を集めているのがチーム8だ。チーム8は2014年4月に発足したばかりで、今年まだ3年目のフレッシュなチーム。AKB48の中でも最も人数が多く、元気で熱狂的なファンに支えられている。

 また、チーム8は47の都道府県から各1名ずつ、代表のメンバーが集まって構成された47名のチームである。「会いに行けるアイドル」として活動してきたAKB48とは違い、「会いに行くアイドル」をコンセプトにしていることも特徴のひとつだ。

チーム8のファンは「エイター」と呼ばれており、とにかくその熱量がすごい。映画の中でも紹介されていたが、チーム8のファンは「新規の若いファン」と「筋金入りの古参のファン」に二極化されている。特に「筋金入りの古参ファン」はチーム8に初期のAKB48を重ねてみているようだ。たしかにチーム8は「まだ出来上がっていない、1から試行錯誤しながら作られているチーム」であり、それが魅力のひとつとなっていることは間違いない。「会いに行くアイドル」であるチーム8は週末にはライブや地方でのイベントなどに多く参加しており、そのチーム8が各地方で出演しているイベントに「会いに行く」ファンも多い。沖縄で開催されたチーム8の2周年コンサートには全国のエイターが沖縄に駆け付けた。

 また、チーム8はほかのAKB48グループと異なり、ライブやイベントでは特定の曲のスマホでの撮影が可能であり、ファンの多くが撮影した動画をYouTubeにアップロードしている(過去にはSKEやHKTで一部撮影コーナーを設けたライブがあった)。ファンにとっては「その時、その場所」で撮影することができた自分だけのオリジナル動画になるわけだ。また、特定の推しているメンバーにフォーカスをあてた「推しカメラ」も人気コンテンツのひとつで、イベントでは8のメンバーも「動画を撮影してSNSにアップしてください」とファンに呼びかけており、その動画を見るだけでも、ファンの熱狂ぶりが伝わってくる。

 エイターは特定のメンバーだけでなく、チーム8全体や地域(東北メンバーや関東メンバーなど)を応援していることが多い。そのため総選挙では票が分散してしまうが、リクエストアワーでは結束力を発揮しており、2016年1月に行われた『AKB48 リクエストアワー2016』ではチーム8の「47の素敵な街へ」が単独で2位、グループでは3位に選ばれるという快挙を成し遂げた。

 映画の中でも紹介されていたがAKB48グループの中でも唯一チーム8だけにうたれるミックス「ガチ恋口上」時のエイターの声援はすごい。これはチーム8の持ち歌「47の素敵な街へ」の曲イントロ時にエイターが大きな声で「言いたいことがあるんだよ(以下略)」と叫ぶもの。「ガチ恋口上」はメンバーの間でも人気で、選抜総選挙前『SHOWROOM』でライブ配信を行なった際には、チーム8の多くのメンバーがファンからの「ガチ恋口上をやって」という依頼をうけ、実際にミックスを打っていたのも印象的だった。

 最近ではライブやイベントでのトークや間の取り方もかなり上手になった。特に2016年6月末で終了してしまったが、NOTTVで生放送していた『AKB48のあんた誰?」にチーム8は多く出演し、そこで鍛えられた萌え台詞やボケと突っ込み、MCなどバラエティ力はライブや他のイベント、出演番組でも活かされている。

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日本全国に散らばる「エイター」

 チーム8は全国各地でイベントに多く出演しており、最近では『能登ふるさと博』に能登応援隊として地元出身のメンバーらが参加したり、群馬県代表の清水麻璃亜は「ぐんま観光大使」に、山梨県代表の左伴彩佳は山梨県富士吉田市の「富士吉田ふるさと大使」にそれぞれ任命されるなど、地方に根差した活動をしており、チーム8のメンバーはその地域で行われるイベントに駆け付け、ライブやトークで盛り上げている。そこには全国の「エイター」も応援に行くが、地元のイベントにやってきて初めてチーム8を見て好きになる人も多い。彼らはAKB48 は知らないが地元のメンバーやチーム8を応援していることが多く、ファンの裾野は広い。メンバーの自己紹介の時も出身の都道府県を名乗るのと同時に、地域の名産品や名物などが入っているメンバーもいる。例えば広島県代表の谷優里は「広島県から来ました。大好物は?カキともみじ饅頭」だ。

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